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fk14さんの紙の上の魔法使いの長文感想

ユーザー
fk14
ゲーム
紙の上の魔法使い
ブランド
ウグイスカグラ
得点
87
参照数
477

一言コメント

誤字脱字、ヒロインの1ワードごとの高速着替え等酷い点も多いが、妃とシナリオですべてそんなことは吹き飛ぶ。緩急のつけ方もなかなか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

下記は2~3周した上での感想


【シナリオ】
序盤はただのキャラゲーかとみせかけて、そこから一気に引き込まれた。
シナリオ全体で見ても緊迫した場面と楽しい場面の使い分けがうまいと感じた。
初見は明かされていく事実にただただ驚愕していたが、もう一度プレイしてみるとしっかりと伏線が張られている。
個人的におお、と思わされたのは、妃を大嫌いと言う選択肢の後の


「今日、四條瑠璃は失恋をしました」
「完膚なきまでに、俺の恋は終わってしまった」


1周目は自分に言い聞かせるようにかと思っていたが、
事実を知った後にこの文章を見ると、紙の上の存在としての台詞ではないかと考えさせられた。
あくまで私の解釈で実際は前者の意味だけなのかもしれないが、このように考察も楽しめるので、
良ゲーと感じた方は2周目もプレイしてみると、より楽しめるかもしれない。


個別√は理央の不遇っぷりが可哀想ではあるが、彼女の立場上こうなるのは仕方がないことかもしれない。
個人的には妃のENDが好み。蛍と再開したときのシーンは、何度見ても心を締め付けられる。
また瑠璃と妃にとって、限りなくGood Endに近いBAD ENDだったと感じた。
ただ、既に紙の上の存在であった瑠璃の本を焼かれている描写がない為、この後生き返ったとすると……
瑠璃にとっては本当の地獄の始まりだろう。


ただ、パッケージ、あらすじ詐欺と言われたらそれはもう私は黙るしかない。実際終わった後そんな感想持ったし。
また、言い回しが少しおかしかったり、マゾにもエスにもなれるエキスパートなど、
文章を書く際に気づいてほしかった、と思うレベルの酷さのミスもたまに見受けられた。


【キャラ】
私がこのゲームを評価している理由のひとつとして、妃の圧倒的存在感を挙げたい。
基本妹キャラ、特に実妹キャラは欠片も興味が持てないのだが、妃の好意の経緯、愛情表現は
気づいたら私の心をガッツリつかんでいた。
そのせいで他のヒロイン勢にいまいち感情移入できなかったが、かなたは正妻らしい魅せ方を
されていたと思う。


【ボイス】
御苑生メイさんの圧倒的な実力を改めて見せ付けられた。この人は本当に凄い。
某ネットラジオで「AカップBカップCカップ、目指せWカップ!」と言っていた人と同一人物だとは到底思えない。
他の声優陣の演技も悪くなかったが、 御苑生メイさんの演技が圧倒的で、月社妃というキャラを
より魅力的に仕立て上げている。


【絵全般】
立ち絵は気になる点はあるものの、そこまで過剰に反応するレベルではないと思う。
問題はCG。立ち絵と絵が変わりすぎているのが気になった。
構図は全体的に悪くはないが、立ち絵とCGのキャラは同一人物が書いたのか?と思ってしまう程。
せっかく可愛い立ち絵を描けるので、新作でも担当するのならそのあたりの改善をぜひともお願いしたい。


【BGM】
たまに状況にあってないのでは?と感じる選曲もあった気がするが、全体的に無難。
OPEDが用意されていない本作だが、もし存在したのであったらどのような曲が仕上がることになったのだろうか。
少し気になるところではある。


【システム】
ボイスカット、スキップは正常に行われている。必要最低限の機能はしっかりと機能している。
ただ、一言にも書いたように1ワードごとの高速着替えシーンが存在したり、
特典ディスクで言い直しをそのまま収録していたりなど詰めが甘い部分が多い。
さらに、誤字脱字も。新作ではちゃんとそこお願いしますよ、ほんと。


【総評】
妹ゲー。かなたが正ヒロインだったりするが、結局は妹ゲー。
ここまで読んでくださった物好きな方は既にプレイを終えている方だと思うが、
2周目をプレイしていない方は是非ともプレイしてほしい。