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fenrisさんのForestの長文感想

ユーザー
fenris
ゲーム
Forest
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
97
参照数
578

一言コメント

幼少の砌にハッピーエンドな物語を作ったことのある人間なら,またご都合主義を嫌う我々のような人間なら,メインの二人の行動に何かを感じるはずだ。とっかかりを探しているのなら,二人の作る御伽噺に耳を傾けよう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

シナリオ:40/40 +1
CG:18/20 +2
BGM:20/20 +2
システム:8/10
その他:10/10 +2

計:97/100 (+6)

シナリオ:
最初はマザー・グースのように韻を踏んでるだけのナンセンス物語に見える。また,そうしようとしたのかもしれない。

そんな物語に,「物語の創造」という原点に立ち返るというオチをつけてしまった。それはおそらく誰しもが経験する行為。物語という仰々しいものでなくとも,ままごとや「ごっこ遊び」で小さな物語を創造したことが無いだろうか。それもご都合主義の。そんなある意味普遍性のあるオチ。

いくつかのおとぎ話の登場人物が現れるが,必ずしも原典を知っている必要はない。(Forest独自の登場人物でさえもすべての原典を知っているわけではないんだから!)登場人物たちは不思議な出来事に翻弄されていく。我々もまた,翻弄されながら「物語の筋」という道を探せばよいのだ。

構成は読みにくいものの,減点対象にはならない。テキストは上質で読みやすいのだから。テキストの質の良さについて加点+1。

CG:
原画からしてはっちゃけている。ファンタジー特有の突拍子の無さを見事にあらわしている。塗りの雰囲気も良いし,背景を(物語を絵で示す際に頻繁に使われる)タペストリーのように加工しているのも良い。各要素でもう少し練る事はできたとは思うが。
雰囲気を出すのに一役買っているので加点+2。

BGM:
BGMを担当したNo Brand Soundsは定評があるが,全体の雰囲気を守るために敢えてAMG社の音楽素材(ケルト音楽だろう)を用いたのは英断。雰囲気に気を遣ったという点で+2の加点。

システム:
雰囲気作りが良く出来ているものの,ギフト使用時のエフェクトが終盤で左上にずれるバグは気になるし,オートモードがないのはかなり困る。

その他:
テキストと声を乖離させる事による演出要素で加点し,主観要素でも+2加点。声無しに甘んじている大作メーカーには,是非声による表現の広がりを検討して欲しい。(声無しでそれなりの効果をあげたゲームは,寡聞にしてKanon以外知らないのだが。)