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feeさんのふぁいなりすとの長文感想

ユーザー
fee
ゲーム
ふぁいなりすと
ブランド
Princess Soft
得点
70
参照数
511

一言コメント

ノリの良い典型的な萌えゲーですが、シナリオもそれなりにきちんとしています。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ゲームの世界に没入し、一つ一つのイベントを追って読み進めていくか、俯瞰する感じでプロット全体を見渡すような読み方をするかで、シナリオの評価が変わってきそうです。前者なら良作、後者なら凡作でしょうか。


クリアした順にいきます。まずは、珠萌エンドと和奏エンド。
この二人のエンディングは、プロット的に相当無理があります。というのも、4月、5月とイベントが進んでいて、突然8月に飛ばされること。炎夏、真沙穂ルートでは6月、7月と続くので、かなり違和感が残ります。文化祭が書きたかっただけなんでしょうけど……。
珠萌シナリオは「あきらめない、くじけない熱血青春学園生活スタート!」といった感じの内容です(キャッチコピーそのまま:笑)。軽快な珠萌とのやりとりを中心に、ノリの良い学園モノが展開されます。


和奏シナリオは……和奏が全然萌えません。ストーリーも、何が書きたかったのか微妙……。


最萌えヒロイン、炎夏シナリオは「恋の乗り換え」というメモオフセカンドを髣髴とさせる内容。
ギャルゲーではあまり見られないテーマで面白かったです。ただ、もう少し真沙穂の側の心情を描写してくれるとより深みが増したのではないでしょうか。もっとも、深みを増す必要も無い気もしますが。
健気な炎夏の姿にじんときました。


最後に残った真沙穂シナリオは、恋愛のどろどろ感を描いた今作一のシナリオだったと思います。しかもそれを描きながら、双方の心情や行動に苛立ちを覚えさせなったのは見事。周囲の人々の温かさも描けていて、満足しました。
でもこのカップル、多分うまくいかない。恋愛初期だったから今回は乗り切れたけど、一時の熱が冷めたときにもう一度同じことが起こったら別れちゃうような……。
そんな思いが残り、エンディングで仲直りした時も「良かった良かった」と思いつつ、感動するまでには到りませんでした。
仲直りシーンではもっと、今までのもやもやを吹き飛ばしてしまうような、強烈なインパクトが欲しかったです。単に誤解が解けただけでは、また新たに誤解が生まれたら……ねぇ?
恋愛の難しいところはやっぱり距離のとり方だと思うんですよね。近すぎても、遠すぎてもダメ。このカップルは、近すぎてダメになってしまうパターンだと思います。



全体のプロットとしては、やはり一学期編と二学期編に分けたのはマイナス。また、「女子校通い」という設定がイマイチ活かしきれていないのも不満ポイント。
とは言え、物語の設定というのは物語を面白くする為にあるわけで。
設定を活かしきれていなくても「ふぁいなりすと」という物語は充分面白かったのだから、殊更に言う必要は無いと思っています。