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feeさんのエヴァーメイデン ~堕落の園の乙女たち~の長文感想

ユーザー
fee
ゲーム
エヴァーメイデン ~堕落の園の乙女たち~
ブランド
Liar-soft(ビジネスパートナー)
得点
85
参照数
193

一言コメント

3章までなら89点。最終章でやや失速も、切ない百合物語が楽しみたい人に特にお薦め。テキストが素晴らしく、とにかく先が気になる展開になっているため、百合が苦手じゃなければ普通にお薦めします。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

☆前置き

短文でも書きましたが、とにかくテキストが巧いです
(それだけに、バックログが1クリックずつしか遡れないのはマイナスですが)。

謎の専門女学校プエラリウム。
極端なまでに厳しい「規」が定められているこの学園は、まるで牢獄のように少女たちを縛りますが、
大多数の生徒たちはあまり不思議に思っていないようです。
あらゆる『欲望』が禁忌とされ、中でも『恋愛・性愛』に関するものは徹底して排除されています。


転校生主人公のアルエットは、特進クラスへと入り、特進クラスの人々と学園生活を送りつつ、
夜には学園に蔓延る怪しげな『ネヴァーメイデン』や、『〇〇(植物名)の乙女』といった怪物に生命を狙われる、という不思議感満載の、ホラー要素ありSF要素ありファンタジー要素あり、ミステリ要素は……あるのか?(ジャンルは百合ミスティックホラーになっているけど)といった物語になっています。
直接的な怖さは薄いですが、薄ら寒い気持ちになるという意味では確かに、ホラーです。
グロはないので、そこは苦手な人もご心配なく。

全体的な印象としては、同社・同ライターの「フェアリーテイル・レクイエム」を思わせる設定。
なので、「フェアリーテイル~」、が楽しめた方はこちらも楽しめるでしょうし、こちらを楽しんだ方は「フェアリーテイル~」もお薦めです。

とにかく魅力的なのが特進クラスの生徒たちで、彼らの恋愛には本当にキュンキュンさせられました。

1章は世界観説明が多いので、カップリングを中心に2章から行きます。



☆2章 パヴォーネ×マコー  評価 S(S~E)

メガネ委員長は基本苦手なのですが、本作のマコーはメガネ委員長史上最高に好きかもしれません。
とにかく、報われない恋。これに尽きます。
大好きなパヴォーネの世話を焼きながら、スキンシップを禁じる『規』に強く縛られるマコー。
頭でっかちで、肉体的接触すら本当は良くない行為だと感じながら、パヴォーネのスキンシップを内心嬉しく思うマコー。
第一のテスト『薔薇の造形』は彼女にとって苦手分野で、どんなに努力しても成績が振るわないことから、どんどん落ち込んでいく彼女は、パヴォーネから贈られたブルー・ドレスを機に自らの恋心を完全に自覚し、パヴォーネとの間に深い溝を作ってしまいます。

パヴォーネはパヴォーネで、考え方が一番僕に近いキャラクターなので(要は、割とルーズとも言える)
とても親近感を持って読むことができました。

どんどん堕落し、遂にパヴォーネを想って自慰をしてしまったマコーは『悪しき種』に食い破られ、『向日葵の乙女』として異形化してしまいます。

おめかしをしたブルードレスのCG、向日葵を背景にパヴォーネとキスを交わすCGなど美しいシーンも多く、
非常に心を揺さぶられました。


☆3章 ロビン×キャナリー  評価 S

この百合ップルも素晴らしい。
一方的にキャナリーを嫌うロビンでしたが、二人で脱出計画を練ることで急接近。
こちらは、上記のパヴォーネ×マコーと違い、すれ違いながらもそれぞれの誤解を解いていき、最後は結ばれる幸福ながらも少し儚いハッピーエンド。
キャラクター単体で考えると、大人しくて弱気だけれど芯の強いキャナリーはドストライクな女の子。
ボーイッシュで頭も切れ、グイグイ引っ張っていってくれるロビンとの相性も抜群で、時に切なく、時に微笑ましく楽しみました。
脱出計画も非常にスリリングで楽しかったです。
『月桂樹の乙女たち』のCGや、ロビンがキャナリーの手を引いて走るCGも美しいですねぇ。

ただ、この辺りからアルエットやルクがやっていることは、『正義』(というのは単純な表現ですが)なのか?という疑問が強く湧きました。
学園の『規』を守る、治安側という意味では正義ですけど、そもそもこの学園自体がおかしいので……。

それこそ、国家の安泰を守る『特高警察・秘密警察』的な感じで、なんか『規』に従わない生徒(例えるなら、『革命分子』とか『反政府デモの人』ですかね)の方が正しいんじゃないかと思ってしまい、
それは結局最後まで変わりませんでした。

まぁ、主人公側が悪役というゲームもあっていいとは思いますけどねw


☆4章 アヴェルラ×アルエット 評価 B

問題は4章なんですよねぇ。いや、出来が酷いとかそういう事はないです。普通に面白いとは思います。
ただ、問題点がいくつかありまして。
最大の欠点は、僕が好きな上記2カップルは仮死状態になっているため、出番が全然ないんですよ!
(抜け殻のようになったパヴォーネは残ってるか)。

で、残ったアルエットは良いんですけど、アヴェルラもルクも正直あまり好みではないので、メインカップルが一番興味ない、という寂しい結果になってしまいました。

また、ちょっとよくわからない点もあるんですよね。これは僕の読解力不足もあるとは思いますが。


まずはアヴェルラ編ですが、これは完全にバッドエンドですね……。
物語としてはあまり語ることはないです。
ツン度高めなアヴェルラ様が、実はアルエットを好きだった、というのはなかなかポイント高いんですが、
物語の進行的に、『自分に振り向いてくれないアルエット』を『アヴェルラ大好きアルエット』に、
文字通り造り変えるというエンディングで、まぁこの終わり方だとこのカップルを高評価するのは難しいです。

それ以上に、アヴェルラがなぜ生徒を襲っていたのかが、実はよくわかりませんでした。
ルクの力を削ぐため、で合っていますでしょうか?
でも1章で、アルエットの(機械人間の)命も奪っているし、よくわかりません。


☆4章 ルク×アルエット 評価 B

結果良ければ全て良し! かもしれないけど……。
自分を4回以上殺している相手を変わらず好きでいるアルエットの気持ちに同調するのは難しかったです。
また、この『現在のプエラリウム』ってルクが作ったものですよね?
過剰な『規』で生徒たちを縛っているのも結局はルクですよね?

結局『エヴァ―メイデン』はルクに決まっていて、その他の生徒を『メイデンの頭脳(生贄ともいう)』にしようとしているのもルクですよね?

確かにルクが受けた偏った教育(洗脳)を考えれば、そうなるのはわかりますが、
一番の悪役はルクじゃん!!と思ってしまいました。

正直、それに振り回された他の生徒たちがかわいそうです。

最後、生き返った生徒たちがほんの少し出てきますけど、そこはもっと出番増やしてほしかったですし
(活き活きと日々を暮らすシーンが見たかったです)、
これは不要かもしれませんが、外の世界がどうなっているのかも知りたかったです。

そういう意味で、随分あっさり終わっちゃったな、という印象を受けました。

3章までで、散々先の気になる展開と、切なさ200%の百合模様で悶えまくっていただけに、
最終章で拍子抜けしてしまった感じです。