生活に疲れた社会人主人公と、社会的弱者のロリータを描く定番のシリーズは今回も素晴らしい出来栄え。エロゲー批評空間ユーザーの submoon01さん(仔月さん)と対談を行いましたので、その模様も合わせて投稿します。
☆feeの感想
生活に疲れた社会人主人公と、社会的弱者のロリータ。
「夜のひつじ」作品のロリータシリーズでは定番の組み合わせだが、本作の主人公(「僕」)は殊更自罰感が強いように思われる。
何かのバックボーンがあるのかと思ったら、特に何もなかった(読み逃しでなければ)のは拍子抜けだけど。
夜のひつじ作品が「キリスト教」的世界の影響下にあることは指摘するまでもない。
生活に疲れ、「純粋さを失いかけた」主人公を救うのは、無垢なる天使こと「ロリータ」たちだが、その「ロリータ」たちにすら罪の萌芽は見受けられる。
人は子供から大人への成長過程で、社会制約と自らを客観的に観る眼を学ぶ。
「ありのままの感情を、ありのままにぶつける」事への躊躇いは増えていく。
周囲の目を気にして、仮面を被るようになる。
ありのままにふるまうと、奇異の眼で見られるから。
奇異の眼で見られることに耐えられるほど、強くないから。
『何人かの人を思い出す。知り合い、友達と呼べるような人、あるいは恋人と言ってもよかった人。
できれば誰かが一番の興味を向けてくれればと願っていたし、そういうタイミング自体はあったのかもしれない。
だが僕は掴みそこねてここにひとりでいる。
生き方が悪かったのか性格が悪かったのか――両方か。
誰かがきっと誰かにとっての一番で、目の前にいる人もきっと他に一番を持っている。
僕じゃない。
そんなふうに思うようになったのはいつからだろう』
よくわかる。だから僕はもう、諦めた。
誰かにとっての一番じゃなくても構わないから、今目の前にいる間だけ、自分のことを一番に思ってほしい。
僕にあげられるのは「楽しい時間」ぐらいだから、それすら相手にあげられないならいる意味がない。
僕がもらえるのも「楽しい時間」ぐらいだから、それすらもらえないなら時間を割く意味がない。
金銭や情報といった『価値』ではなく、ただ『楽しい時間』を分け合える関係。
それが、『友達』であり『愛』だと思う。
とまり『大変なことがあるのと、大変って思うのは別だよ』
今までの「夜のひつじ」作品がそうであったように、本作も『あらすじ』として語れるような突飛かつ新奇な筋はない。
ただ、そこに流れているポエミスティックな空気感は、何物にも代えがたいものがある。
『抱きしめられることなんてみんな足りない。
だからそうする機会があるなら、遠慮せず受け取るべきだ。
抱きしめたいし、抱きしめられたい』
肉体的な「抱擁」も、言語での「抱擁」……平たく言えば、深いレベルで相手に慈しみの言葉をかけ合う事も、日本社会には欠けている、と感じる。
抱きしめ、抱きしめられる。ある種ウェットかもしれないが、そういった関係が皆無だからこそ社会生活のストレスは一向に軽減しないのではないかとも思う。
リラックスして、肌と肌が触れ合う感覚は癒しだ。そういった機会が絶対的に欠けている、と思う。
「ロリータ」シリーズを語るとき、どうしても『自分語り』の側面が強く出てしまう。
自分の内面を強く覗き込むような、そんな詩情に満ちている、そういった作品なのだろう。
☆feeとsubmoon01(仔月)さんとの対談 1 導入
fee「今日は、サークル『夜のひつじ』さんの作品から、ロリータシリーズの4作目にあたる『ハーレム双子ロリータ』についてお話していこうと思います。よろしくお願いします」
仔月「よろしくお願いします!」
fee「まず初めに、『夜のひつじ』さんの作品の特徴を簡単に話そうかなと思うのですが、
仔月さんはロリータシリーズは何作やっていらっしゃるんですか?」
仔月「『相思相愛』と『ゆびきり婚約』の2つがプレイ済みで、今回が3つ目です。『お泊り恋人ロリータ』と『愛欲姉妹ロリータ』が未読です。ロリータシリーズ以外は一つも読んでいません」
fee「了解です。まぁ、このサークルさんは他にも良い作品がたくさんあるとはいえ、ロリータシリーズが一番素晴らしいかなと思います。これからプレイする予定の『愛欲姉妹ロリータ』についてはわかりませんが、ロリータシリーズは傾向が似ているので、一作プレイして気に入れば、どんどんお薦めしたいシリーズです。
いきなり本題から脱線しますが、今週別シリーズの『聖天使☆レベルドレイン』と『堕落ロイヤル聖処女』をクリアしたので、その辺も少し語らせてください」
仔月「いいですよw」
fee「『聖処女』は……どうなんだろ、意外と仔月さんは好きかもしれないけど、一般的にはお薦めしづらいかな」
仔月「あぁ~」
fee「一般的に、というのも難しいけど、大抵のエロゲーマーがタイトルから想像しそうな『高貴な聖処女をエロ行為で堕落させてやるぞ~』的な、そういうゲームではなかったので」
仔月「タイトルから予想される内容と異なる、と」
fee「個々のプレイヤーが何を期待しているかは人それぞれでしょうが、個人的には『コレジャナイ感』というか。逆に言えば、『キツいレイプシーンは嫌だ』とかそういう人でも楽しめ……どうかなぁ? レイプシーン的なものは結構あるんですが、聖処女様本人がノリノリなので、単にSMプレイしているだけなんですよ。いろんな意味で、
僕は困りました」
仔月「はい」
fee「まずエロシーン自体はそこそこハードで、それについても僕はちょっとついていけないところはあったし、ノリノリでHしているので凌辱もの的な楽しさもあまりなくて」
仔月「どういう文脈で楽しめば良いのかよくわからない?」
fee「タイトルからは解らないと思いますが、これはシナリオゲーで、それも結構難しいテーマを扱っている作品なんです」
仔月「そうなんですか!」
fee「キリスト教神学の話をダイレクトにぶち込んできているので、僕向きではありませんでした。小難しくて、キリスト教神学っぽい作品をやりたいなという人にはお勧め、です」
仔月「タイトルからはあまり予想できないですよねw」
fee「ですねw」
仔月「このサークルさんの作品自体、宗教色が強いところはありますけど」
fee「そうですね。もともと『堕落』だの『悪落ち』だのそういったもの自体が、宗教色を感じますが、このサークルさんは特に顕著ですね。
『聖処女をエロ行為で堕落させるのがエロい!』みたいな作品なら、同サークルの『義妹ホールと妹ホールド』という作品がお薦めです。天使のような娘を篭絡して穢して、だんだんエロく染めていく感じで良かった。
『堕落ロイヤル聖処女』は最初っからエロエロな聖処女さんなので、僕的にはどうでも良かったです……」
☆導入2 「聖天使☆レベルドレイン」
fee「『レベルドレイン』は、『好き好き大好き超管理してあげる』とか『妹「お姉ちゃんクソビッチなので私にしませんか」』的な路線の作品です。簡単に言うと、主人公が美少女につきまとわれて楽しくエッチしちゃう話で、雰囲気はライトです。中身はあまりないとも言えますが、このサークルさんの作品で中身が全くないということもないので」
仔月「はいw」
fee「ガチMじゃないけど、痴女に誘惑されてエッチしちゃうみたいな。射精管理とか。そういった男性下位の誘惑プレイ的なものが好きな人にはお勧めです。仔月さんはどうですか?」
仔月「そうですねぇ。多分ぼくの好みではなさそうですね」
fee「仔月さんは、つらいレイプものは苦手そうだな~という印象は持っているんですけども」
仔月「苦手です。こないだプレイした『僕が天使になった理由』で結構キツいシーンがあって、見ていてうわーってなって」
fee「レイプモノが苦手なら男受けの甘々が良いのかな~?という、安易な連想でしたw」
仔月「男性優位というか、悪意が透けて見えるシーンが嫌なんですよね。蹂躙してやる、みたいな」
fee「獣欲的なモノと、こいつを陥れてやる的な悪意は、別種のような気もするんですが……」
仔月「陥れてやる、の方が嫌ですね」
fee「そっちは僕もキツいかもしれない。獣欲の限りを尽くしているのは僕は好きですが(苦笑)。陥れてやる、も度合いによりますけど……」
仔月「双方合意の上でなら……」
fee「それは全然陥れてないじゃん! 陥れるにもやっぱり程度というか、レベルがあるのでわかりませんが、傾向としては僕もあまり得意ではないです」
仔月「はい」
fee「そう考えると、『義妹ホールと妹ホールド』は仔月さん的にはちょっとキツいかもしれない」
仔月「多少だったら流せるんですけどね」
fee「こういう感覚って数値化できないので、難しいです。僕は度が過ぎなければ大丈夫です。
『夜のひつじ』作品にはキツいものもありますが、最近はあまりないかも。『さよなら援交娘さん』はキツそうだったので避けたんですけど、その後は全作品をやっていますが、特にキツいものはなかったです。『さよなら援交娘さん』と『恋妻くずし』と『女装お嬢様への異常な愛情』と『孤独に効く百合』と『世界の始まりゴッコ』の5作、それとこの対談が終わった後にやる『愛欲姉妹ロリータ』の計6作が未プレイです。『愛欲姉妹ロリータ』はすぐやるので、この対談が記事になる頃にはクリア済みになっています」
仔月「聞いたことがないタイトルもぽつぽつありますね」
fee「プレイした中では『純情セックスフレンド』はキツいです。『義妹ホールと妹ホールド』は僕は平気だったけど、ギリギリだったので、キツいと感じる方もいそうです。
僕が未プレイの5作品と今挙げた2作品以外は、ダークな意味では多分キツくはないので、安心してプレイなさって大丈夫だと思います(後日注:「愛欲姉妹ロリータ」も大丈夫です)」
仔月「わかりました!」
fee「改めて思うと、僕、このサークルさんの作品結構プレイしてますね……7割ぐらいやっているので、仔月さんに対してナビゲーターもできるかな?という意味で、色々話しました」
仔月「とりあえずロリータシリーズは全部やるつもりです。他はちょっと未定で……」
fee「ロリータシリーズは仔月さんが好みそうという意味で、鉄板チョイスですよね。ちょっと寂しさ成分が弱めだけど、雰囲気的には似ているのが『彼女、甘い彼女』だと思います。
ロリータシリーズは割と寂しい作品なので、僕個人としては夜のひつじ入門としては『彼女、甘い彼女』を推します」
仔月「結構意外でしたね。タイトルからは甘い雰囲気の作品なのかな、と思っていたので」
fee「甘い雰囲気ではあるんだけど、卒業したらきっと別れちゃうよね、今だけだよね、みたいな雰囲気が漂ってるんですよ。だからちょっと寂しいかなって」
仔月「あぁ~」
fee「『幼馴染の心が読めたらどうするか』は、ツンデレ幼馴染かわいーってだけの作品です。内心がダダ漏れのツンデレに萌えるゲーム。『幼馴染と10年、夏』は中盤ぐらいまでは寂しさ成分があるけど、終盤はただ甘いだけになっちゃうんで、僕はちょっとがっかりした、かな。あとは女性上位のHしちゃおーみたいなのが『レベルドレイン』とか『超管理』とか『お姉ちゃんクソビッチ』とかその辺でございます。かなり雑なまとめですが、そんな感じです」
☆対談 中編
得点
シナリオ 仔月さん 80 fee 75
テキスト 仔月さん 85 fee 88
とまり 仔月さん 70 fee 83
すなお 仔月さん 85 fee 88
エロ 仔月さん 70 fee 81
羨ましさ 仔月さん 60 fee 79
総合 仔月さん 84 fee 81
fee「では今回の『ハーレム双子ロリータ』の話に移ります。とりあえず未プレイの方のためにあらすじをOHPからコピペします。
今からだめになってもいい時間。
三人寄れば文化が形作られます。
あなたと少女と少女で世界を閉じてしまいましょう。
何よりも大切なのは、見守ってくれるかぞく。
少女の愛とやさしさに包まれて、一番あたたかくて熱い場所に精液を吐露しましょう
いつものことながら、このあらすじ紹介は一体……」
仔月「うーんwww」
fee「気を取り直しましょう。(点数を見て)全体的に僕より点数が低い、かな? とりあえず、お互いがすなお派だということはわかりました」
仔月「はいw」
fee「すなおが良かったと」
仔月「そうですねぇ……」
fee「僕も実はとまりちゃんが83点をつけるほど好きかと聞かれると微妙なんですが、とまりちゃんの性格はこの作品に欠かせないなと思いました」
仔月「それはあるんですけど、とまりは掴みどころがないというか、消化しきれないところがあって。それで点数低めにつけました」
fee「わかりづらいのは間違いないですね。この人はエキセントリックというか、天才型の人なので、僕ら凡人にはなかなかわからないところもあるんじゃないでしょうか……」
仔月「はいw」
fee「『自分はとまりにソックリです!』って人がいたら話を聞いてみたいけど……。こういう人って実際にはどこかにいるんでしょうけど……いるんでしょうか?」
仔月「少なくとも会った事はないですね」
fee「頭の回転はすごく早いのに、言語能力が著しく低いために、自分の伝えたいことが全く伝えられないのがとまりちゃん。実際は、すなおちゃんより頭が良い人だと思いました。そんな浅い掘り下げじゃダメかな
はぐれた一匹の羊は――すなおだ。
彼女は99匹の群れにはもう戻りたくないと言う。
戻ったところで、“はぐれた愚かな羊”として見られるから。
あるいは、はぐれたことで他の羊に迷惑をかけた。
あるいは、羊飼いが特別に目をかけているから探してもらえた。
そんなふうに自分で自分を捉えてしまい、傷ついていく。
もうすでにはぐれてしまっている彼女は、その事実を忘れることもできない。
忘れようとしたところで、今度は自分が一体誰なのか、どんな人間なのか――
それがわからなくなってしまう。
とまりもまたはぐれた1匹だ。
すなおと捉え方が違うのは、とまりは100匹のうちの1匹ではなく、101匹のうちの1匹だということだろう。
羊飼いはもともと100匹しかいないと思っていた。でも本当は101匹いた。いたのかもしれない。
余分な1匹はいつの間にかはぐれていなくなる。
だけど羊飼いは気づかない。他の羊も気づかない。
何が起こったのか、本当は誰にもわかっていない。
はぐれた1匹だけが知っている。でもはぐれた1匹のことは誰も知らない。
↑引用
こういう感じで。すなおの方は僕はわかるんですけど、とまりは……誰にも気づかれたくないと」
仔月「だと思います」
fee「誰にも気づかれたくないなら、主人公といる意味があるのかなぁ?」
仔月「うーん」
fee「というよりすなおといる意味もあるのかなぁ? どうでしょう?」
仔月「そうですよね。その辺がぼくもよくわからなかったんですよね」
fee「とまりは……仔月さんが未プレイのゲームで言うのもなんですけど、『真剣で私に恋しなさい!』に出てきたキャップ。いつも一人で変なところに冒険に出ちゃうキャラですが、とまりちゃんもそういう人に見えます。あるいは研究室に籠って怪しい研究にひたすら励んでいる、マッドサイエンティストキャラ。
でも、そうだとするとこういうウェットな人間関係にはあまりなじまない気もするんですけど……。すなおちゃんを際立たせるため、作品の雰囲気を明るくするため、そういう意味で必須ではあるんですが、とまりちゃんが何を考えているかはちょっと謎ですね」
仔月「ですね」
fee「すなおちゃんの立ち絵で、歯を出して笑うニシシ笑いがありますよね。意地が悪そうな笑い方で面白いなと」
仔月「ぼく、あれ好きですね」
fee「僕も好きなんですけどw いいですよね、あれ。
……エロについて何かありますか? 僕は折角なのでレズシーンも欲しかったです。まぁ、そういうゲームじゃねーよと言われればそれまでなんですけど。姉妹レズも見たかったなぁ」
仔月「要は主人公抜きってことですよね?」
fee「基本はそれで、3Pシーンでももう少し責め合うシーンがあっても良かったと思います」
仔月「1個ありましたよね?」
fee「まったくなかったとは言わないけど、ないに等しいというか、これは僕が求めるモノとは程遠いです。……主人公ととまりちゃんの2人がかりで、すなおちゃんを気持ちよくするとか……」
仔月「あぁ~そういうのはなかったですね」
fee「そういうのほしかったなぁ~」
☆2 本題 すなおちゃんの話
fee「仔月さんの方のエロはどうですか? 70点つけていらっしゃいますけど」
仔月「評価は低いです。ぼくの点数のつけ方だと70点は低い部類に入ります。あまりピンとこなかったなぁと」
fee「ロリは好きそうにお見受けしたんですが……」
仔月「はい好きですw」
fee「でもこのHシーンは微妙?」
仔月「『ゆびきり婚約』のHシーンがめちゃくちゃ好きだったというのもあって」
fee「今回とそんなに違った?」
仔月「ぼく的にはかなり違ったんですよね。『ゆびきり婚約』の方は、『相手に悪いと思うのは、相手のことが好きだから』という話が出てくるんです」
fee「ありましたね」
仔月「実際に『ゆびきり婚約』では、主人公がヒロインに手を出すのは、お互いにとって悪いことだという自覚があります。そのうえで、『相手に悪い』と思うのは、相手のことを思っているからこそで。行為を重ねるにつれ、思いが深まっていくような、そういうHシーンの描き方が好きだったんですよ」
fee「今回は、そういうのがない?」
仔月「個人的には違うと思いました。『悪いことしてほしい』みたいな話は出てきましたけど」
fee「あぁ、そこは明らかに違いますね。ただ、僕は『ゆびきり婚約』と本作は結構似ているなと感じていて。……『ゆびきり婚約』の時も思いましたけど、『ロリ(すなお)の邪悪さ』がですね」
仔月「ふふふw」
fee「はっきりと伝わってきたんですけど、どうなんでしょう? これって、ロリが主人公を食い物にしているのでは?」
仔月「ぷふっw ぼくはwin-winの関係かなと思ったんですけど」
fee「まぁwin-winにみえ……なくは……ない……けど……」
仔月「はい」
fee「そうは言っても、主人公は生活に疲れているから手近のロリにしか手が伸びないだけで、よくよく考えてみれば、ちゃんとした(?)相手を作れるスペックの人でしょ? 別に元からロリコンだったわけでもないし。希望を失ってロリに走るのは、20年後でいいのでは? 本作のストーリーは、前途のある若者がロリの罠にかかって、ロリを扶養しなければならなくなった話だと思うんですけど?」
仔月「そう考えちゃうと、最後子供ができちゃうのは、罠にまんまとかかっちゃったという」
fee「そうですよ。子供ができたから、僕は羨ましさを下げたんですけど」
仔月「もう逃げられない、ってやつですね」
fee「そもそも、このロリータシリーズでロリの邪悪さに触れるのは今回で2回目のような。第1作の『相思相愛ロリータ』のまこちゃんは邪悪ではなかったんですけど」
仔月「ぼく、むしろまこちゃんは怖かったんですよね」
fee「邪悪さが?」
仔月「というより、あの子の底知れない包容力みたいなものが逆に恐ろしいというか。よくわからなくて」
fee「非人間的で?」
仔月「はい。得体が知れなくて怖い」
fee「いやいや、人の善意を信じましょうよw まこちゃんは天使なんですよ! 天使な女性がこの世にはいるんですよ、きっと」
仔月「打算込みの怖さと、得体のしれない怖さは方向性が別で。打算込みの怖さの方が、まだ理解できるので怖くないんです」
fee「うーん。僕は、理解できない方がいいな。僕が理解できる人間なんて、大抵しょうもない奴ですもん。僕が理解できないぐらい素晴らしい人がこの世にたくさんいてほしい。僕は『相思相愛』では赤ちゃんができても、『これからもずっとお幸せにね!』とハッピーな気持ちになったんですけど、『ゆびきり』の方では『ロリの罠にハメられた』と思って。今回の読後感も、罠にハメられた印象なんです。『ゆびきり』の時以上に邪悪なのが、すなおが『このままじゃ釣り合わないから、悪いことして』みたいなことを……」
仔月「言っていますね」
fee「主人公が社会的に悪いことをして、罪悪感を抱いてくれないと、ロリに釣り合わないという話ですか?」
仔月「自分が孤児で、社会の幸福な人々からはじき出されていることに負い目があって。そういう自分と釣り合いの取れた人間というのは、やはり社会の幸福な人々からはじき出されていないといけないので、ここまで下りてきてくれという話かなと思いました」
fee「かなり邪悪だなと思います。不幸な私と釣り合うように、お前も不幸になってくれ、的な」
仔月「疑問なんですが、すなおは、幸福な人を自分のところまで叩き落すことはできないと言っていました。だけど、主人公みたいに既に不幸の瀬戸際にいる人を、完全に叩き落すことには抵抗がないのかな?」
fee「まぁ……強パンチで相手を殺すのは嫌だけど、フラフラしている人に弱パンチをかまして、頭打って死んでも私のせいじゃない、みたいな? 『こっちこいよ』みたいな感じですかねw
ところで僕はこの問題に疎いんですが、そんなに孤児って社会的に不利なんですか? いや、子供のうちはかなり不都合でしょうが、大人になってから。僕は読んでいて結構謎だったんです」
仔月「どうなんでしょうか。デリケートな問題なので何とも言えないですね」
fee「デリケートな問題ではあるけど。めちゃくちゃ家柄の良い茶道の家元的な、超上流階級の人は気にしそうですが。僕は気にする必要なんてないのでは?と思っちゃうんですけど。仔月さんは抵抗あります? 恋人にした女性が孤児だったことがわかったとして」
仔月「いやー、まったく気にしないと思います」
fee「僕もまったく気にしないんですよ。めちゃくちゃ育ちが悪そうなら気になりますけども。親御さんが暴力団幹部と極道だったとかだと、ちょっとビビっちゃいますけど、それだって本人がそういう人間じゃなくて、関りがなければいいやと思いますし。だからちょっとよくわからなかった。子供のうちはいじめられたり、色眼鏡で見られることはあっても、大人になってからそんなに不利益があるのかなぁって」
仔月「あぁ~」
fee「将来的に社会的弱者であり続けるかなぁ?」
仔月「難しいですね」
fee「虐待とかもされてなさそうだし。虐待されて育った人の方がきつそうな気がしましたけど。それを言ってしまえば、ロリに手を出したと言っても10年後にはあまり問題ないし。話を戻しますが、自分がヤバイ位置にいるから、相手にも落ちてきてもらって、それで釣り合いが取れるというのは、ずいぶんと無茶な言い分だと僕は思ったんですけど」
仔月「ですよねぇw」
fee「気持ちはわかるけど、天使とか癒されるとかとは程遠いなぁ。あまり羨ましくもない。僕も社会には疲れていますので、主人公に何割かは共感できたんですけど」
仔月「『何かを楽しめてさぞ幸せなんだろう』的な態度を主人公は取っていました。世界を斜に構えてみている。世界を斜に構えてみている自分を、もう一歩下がって斜に構えてみている。そういうところに一種の快楽を覚えているところがあると思うんですよ。
自分には結構身に覚えがあって、身につまされるところがありました」
fee「なるほどねぇ(あまりわかってない)。……自分をそうやって突き放してみる事はあるんですけど、『他人が〇〇できてさぞ幸せなんだろう』みたいな考えは持ったことがないので、そういう部分はわからなかったですね。
僕のような人間は、どんな環境にいたってつまらない悩みを抱えて不幸な顔をして生きていそうなので、あまり他人を妬む事もないですね。
主人公が仕事人間なのも、僕と違いますけど。まぁ言っちゃうと仕事で自尊心が満たされたためしがないもので。『仕事は自分を裏切らない』みたいな文章がありましたが、そういう思想にも全くならない。そういうところはわからなかったです」
仔月「この主人公、相当有能なんでしょうね。やればやっただけ結果が返ってくる」
fee「そういう意味では羨ましい主人公ですね。なんで疲れちゃったんだろ。まぁ、休日にも仕事の事を建設的に考えているみたいだし、有能ではあるんでしょう。
しかもこの主人公、モテないわけじゃないんですよ。『他の女性とHした時に』みたいな文章もあって、こいつ普通にエンジョイしてるじゃないかと。なんでそんなに疲れちゃったんだ?って。そういう意味でもわからなかったです。
僕が思ったのは、主人公がえらく自罰的だなぁって。『幸せになっちゃいけない』みたいな発言もありました。3回くらい言っていたんですよ。幸せにふさわしくないとか、そんなことばかり言っていて。
誰かを不幸にしたとか、何かトラウマでも抱えているのか?と思ったんですけど、そんな話は全く出てこなかった。なんで主人公は自罰的になっちゃったんでしょうか」
仔月「消化不良ですよね」
☆
fee「夜のひつじ作品全般に言えることとして、導入部とエロ乱打部が分かれていて、導入部はいい感じなんだけど、エロ乱打部になると今までの暗さがちょっと薄れる。楽しくイチャイチャして終わり、あれ?みたいな」
仔月「ありますねww」
fee「僕はこういう物語は好きですけど、厳密な意味での物語性は薄いと思うんです。ストーリーテラーではない。どちらかというと、詩というか」
仔月「はい」
fee「それが悪いと言いたいんじゃなくて、むしろ僕は結構好きなんですけど、ライターのpororiさんは本質的には短編作家なのかなと」
仔月「そうですね。ぼくも序盤の雰囲気の方が好きです」
fee「簡単に言っちゃうと、いわゆるエンタメ作品なら、あの境遇から抜け出すとか、事件が起こる。すなおちゃんが家出して、とまりちゃんと主人公で一緒に探すとか、施設が合併して全員は受け入れられなくなるとか、主人公はすなおととまりの一人しか引き取れないとか、そういう何かしらが起こる。けど、このサークルさんはそういう事はあまり起こらない」
仔月「確かにアクシデントは起こらないですね」
fee「山あり谷ありとはいいがたい。序盤の出会いはある。出会ってHするまでの物語はあるけど、そこから先はただ日常を積み重ねるだけ。どうでしょう?」
仔月「だからこその安心感みたいなものもあるんでしょうか? たぶん?」
fee「たぶんというのは仔月さんにはわからないけど、ということですか?」
仔月「はいw」
fee「安心感を求めている人は、そもそもこのゲームをやるのかなぁ? 最初からシリアスじゃないですか。暗いですよ、序盤から。安心感というよりも、ライターさんの力量とか、ライターさんが書きたいものの問題じゃないかなぁ?
僕、pororiさんの長編を読んだことがないから的外れかもしれません。長編では山あり谷ありのモノを書いていて、短編ではこういうものを書いているのかもしれないので、安易な事は言えませんが。
シナリオの点数をつけるときに困りました。シナリオ構成は75点ぐらいだけど、描いている世界観や表現力はすごく良いので」
仔月「テキストだけならぼくも点数上がりますね。85点以上になります」
fee「ドラマ性とかではなくて、このテキストを味わうために読んでいる。そういうところはあります」
仔月「ありますね!」
fee「魅せる文章が描けるライターさんですよね」
☆
fee「そんなわけで、羨ましさの点数が低いわけですが……」
仔月「全然羨ましくないですw そもそも性的な関係にあまり羨ましさを感じないので……」
fee「……そんな、エロゲを全否定するようなw 思うんですけど、この作品の人物たちは、エッチしたいんじゃなくて、抱きつきたいんじゃないのかなって」
仔月「はいはい」
fee「結局こういうことなのかなって。ロリとセックスできて羨ましいって話ではなくて、弱みを見せて抱き着ける相手が2人もいるというのは羨ましいんじゃないかなって」
どれだけ抱きしめられても、もうこれで十分、一生分を得たからもう必要ない、ということは無いのだ。
常に必要で、あるいは本当は常に抱きしめられていたいのかもしれない。
小さい頃は両親に抱かれて――そのときの記憶や経験があるからもう要らないという人なんていない。
抱きしめられることなんてみんな足りない。
だからそうする機会があるなら、遠慮なく受け取るべきだ。
↑引用
仔月「あぁ~~~」
fee「男女のセックスって、性欲の解消だけが目的ではないと思うので。肌の触れ合い、相手との気持ちの交歓。そういうものを求めて、セックスってするんじゃないのかな?と思っています。もちろん快楽もありますけど、癒し効果というか。肌と肌が触れ合う事での安らぎや、心の交流。これが一番大きいんじゃないのかなぁ」
仔月「まったくわからなかったです(汗)」
fee「他にもHシーンでロリは体温が高いという描写もあって。体温が高い方が湯たんぽみたいで、より癒し効果が高いはずなんです。冷えている身体を抱きしめるよりも、微熱があるくらいの肌の方が癒し効果はあると思います。この主人公にとっても、ロリにとっても、Hというのは、抱きあう延長上にある、癒し行為なんだろうなと思いました。『ハメる』とか『挿れる』じゃなくて、『抱く』」
仔月「……触れ合えば理解できる、みたいなのがぼくには全然わからなくて」
fee「『理解できる』ではなく『理解した気になれる』ですね。心が落ち着くんです。安らかな気分になる。相手もおそらく安らかな気分になる。二人とも安らかな気持ちを共有できて、親密感が生まれる。安らかな気分なら、弱みも見せやすい。男性の場合は、Hの前は緊張・興奮状態ですけど、射精をすることによって脱力する、緊張が解ける。それで安らかな気分になる、と思うんですけどw 肌の触れ合いや他者との繋がりが、オナニーとの違いというか」
仔月「ぼく自身が潔癖なのかな、よくわからないんですけど」
fee「単なる快楽だけだったらオナニーしてる方が気持ち良いと思います。そもそもエロの快楽なんて単なる脳の電気信号ですし。実際に膣に入れる必要もなければ、手で触る必要すらない。ただ脳が興奮すればイケるんです」
仔月「グレッグ・イーガン的な世界観ですねw」
fee「そうすると、本当に虚しいでしょ。虚無というか。ぬくもりがほしいんですよ。そういうところを、このロリータシリーズは書いているんじゃないかなと思いました。寂しがりやの主人公と寂しがり屋のロリの話ですからね」
仔月「そうだ、ここなんですけど。ここのところがわからなかったんですよね。愛は交換できないというところが」
でも、愛は何にも交換できない。無価値だ。
だからこそもっとも価値があって、心にのこり続ける。
↑引用
fee「愛は(即物的な物質や、利便性とは)交換できない、と読みました」
仔月「ぼく読んでて、とまり・すなお・主人公はwin-winの関係だと。それは時間とか、そういうものを分け合って、それで生活していく。その過程で、愛も交換されているんじゃないかなと思って。そうなると、愛は交換できないというのはなんなんだろうって」
fee「この文章の前にも『愛は利益を求めてするものじゃない』とか、『愛は無償の心でするもの』だとか、そういう話が結構出ていました。そこに結びつけると、『愛は交換しているのではなく』、『愛は与え合っている』のだと思います。まぁ結果的には交換なんですけど。
たとえば……僕のエロ本と、仔月さんのエロ本を物々交換しているんじゃなくて。
僕が善意で仔月さんにエロ本をあげたいと思ったからエロ本をあげて、
仔月さんも善意で僕にエロ本をあげたいと思ったからエロ本をあげて、お互いが嬉しい。そういうことじゃないでしょうか」
仔月「納得できました! 見返りを求めないってことですよね」
fee「見返りを求めた時点で愛ではない。キリスト教的な愛、博愛の話ですよね。異性間の関係、特にエロゲなんかをプレイしているとすぐに恋愛や性愛に結びつけがちですが、友愛、博愛、人類愛。そういった方向性をこの作品では語っているのだと思います」
☆対談後編
fee「なぜロリシリーズは全部最後妊娠で終わるんでしょうか?」
仔月「なぜなんでしょう?」
fee「あれがあると、主人公が罠にかかった気分になって悲しいんですが、いつもそうなんですよね」
仔月「宗教色がけっこう強いじゃないですか。とまりとすなお……この二人が本当に双子なのかはわからないんですけど……」
fee「そうそうそう、そこも突っ込みたい。本当に双子なんですか? 双子って設定はありました? 読んでいて気づきませんでしたが」
仔月「血のつながりは、明示されていなかったと思います。本当に双子なのか、孤児同士で仲良くなったのかはわからないですよね」
fee「孤児同士で仲良くなったんだと思って読んでいました」
仔月「ぼくもそう思います。寂しさを埋めるために近づいたのかなと」
fee「すなおちゃんがとまりちゃんに近づいたのかな?」
仔月「そうなりますねw」
fee「双子じゃない方が、それっぽいですよね。血のつながりがない方が、作品的にはあっている気がするけど、なぜ双子というタイトルなのかな?」
仔月「そっちの方がキャッチーだから?」
fee「商業主義的な事を考えるとつまらなくなるからやめましょう……」
仔月「まぁまぁまぁ(笑)」
fee「双子的なモノを期待して、すなおちゃんがとまりちゃんに近づいた。実の双子じゃない方が、そういう思惑や絆が見えて良いと思います」
仔月「ですね」
fee「ごめんなさい、話をそらしちゃいました」
仔月「もともと、すなおととまりで2人だったじゃないですか。寂しさを埋めるために2人だけじゃいけないのかなと思って。中盤に『2人だけだと言えないことでも、主人公を間に挟むと言える』みたいな場面があったと思うんですよ。2人だけでは安定しなくても、3人だと安定する。そういうのは三位一体説的な、宗教的モチーフを意識しているのかなと思いました」
fee「なるほど。仔月さんに言われて初めて気づきましたけど、ありそうですよね。キリスト教的世界観の話ですから」
仔月「でもそう考えると、子供ができると5人になっちゃいますけど……」
fee「なっちゃいますね。まぁ2人だけじゃなく、誰かが入る方が安定するというのはあると思います。子供ができるのはなんなんでしょうね? 子供ができると家族的な絆がより深まる、主人公の逃げ場がなくなって家族的なものに縛られる。良くも悪くも離れられなくなりますけど。ロリシリーズに限って毎回妊娠するんでねぇ……」
仔月「あ、他は違うんですかw」
fee「『お姉ちゃんクソビッチ』も妊娠していましたけど。要は家族的な繋がりの強化を描きたい時に妊娠することになっているのかなぁ。毎回妊娠するわけじゃないけど、ロリシリーズでは毎回妊娠する。まぁ妊娠萌えの人もいるのかもしれない」
仔月「ふふふ(笑)」
☆
fee「まとめると、ロリは邪悪だなと。ロリが天使的なものだというのは宗教的に何かあるんでしょうか?
主人公は単に生活に疲れているはずなのに、自分は罪深い人間だとか言っていますし」
仔月「冒頭でも、『きれいな涙を流せるのはいつまでだろう』みたいなことを言っていましたね」
fee「きれいな涙なんて何歳でも流せますけどね。まぁ感受性をすり減らして生きていることに抵抗があるんでしょうけど、感受性ってそうそうすり減るものでもないですよ、多分」
仔月「うーん」
fee「人前できれいな涙を流せるのはいつまでだろう、みたいなニュアンスなのかな? 心を曝け出すことに臆病になるというか。人知れず泣くのなら何歳まででも泣けますけど」
仔月「涙にそもそもキレイも汚いもあるのかという疑問もあるんですけど」
fee「あれじゃないですか。誰かが死んで悲しいなと思いながら、でも遺産はもらえるぜラッキーみたいな、そういうやつですかね、汚い涙って」
仔月「作り物の涙ってことですか?」
fee「いやいや、100%作り物の涙ではなくて。悲しくて泣く気持ちがメインなんですけど、心のどこかに別の気持ちがある。雑念、邪念が湧く。
ストーリーに感動して泣きながら、『こんな純粋なストーリーで泣けるオレ、実はいいやつでは?』みたいな邪念が混ざっている涙じゃないですか? 人間の心って目まぐるしく動くので、一つの『悲しみだけ』に集中できなかったりしますけど、それがそんなに悪いことだとは思わないかな。
それよりも言いたかったのは、子供ってそんなに無垢なものですか?」
仔月「あぁ~」
fee「現に、すなおちゃん、めちゃくちゃ汚くないですか? 主人公より汚いと思いますけど」
仔月「打算行為で近づいていますからね」
fee「全然無垢なるものでもなければ、罪なきものでもない気がするんです」
仔月「まぁまぁまぁw」
fee「これ子供作っちゃってどうするんですか? 主人公は結構有能マンらしいから、二人の子供……え、ヒロインも子供だから四人? 四人の子供を扶養していくんですか?」
仔月「まぁ大変ですよね」
fee「大丈夫か? 心配になるなあ。全然羨ましくないじゃん」
仔月「でも主人公は自信満々だった気がしますよ」
fee「主人公、自棄になっちゃったのかな。あるいは実はかなりの資産をため込んでいる」
仔月「資産があるようなことは書いてありました」
fee「資産があって有能マンなら勝ち組では? 何もロリに走らなくても。なんでこんなに疲れ果てちゃったんだ? 結局そこに戻ってきてしまうw 描かれていないだけで、同世代の女性への恐怖症的なトラウマがあるのかな?」
仔月「作品のテーマ的に、仕事は渇きを満たしてくれないみたいなところがあったので」
fee「資産があるなら会社やめちゃえばいいし。仕事はやった分だけ返してくれるみたいなことも言っているし、それなら多少は渇きを満たしているのでは? よくわからないなぁ。まぁそんなにツッコむ必要もないとは思いますけど。ただ、すなおちゃんはずいぶん良い男に目をつけましたね」
仔月「最高のカモですね」
fee「すなおちゃんの嗅覚は素晴らしい」
仔月「このシリーズのロリータ娘はみんな嗅覚優れていますね。カモにできそうな人」
fee「寂しくて貧乏な人じゃなくて、寂しいけどお金はある相手を捕まえてくる。そこが厭らしい。
こんな読みでいいんですか? 不思議なのが、『夜のひつじロリータ悪女説』をネットで見たことがないんです。『癒される』とか『羨ましい』という感想ばかりで。ええ?って。
これはカモられちゃった話では?
主人公はもともと追い詰められているけど、ロリと一緒になることで更に追い詰められた気がしてならないんですけど。なんでヒロイン悪女説をほぼ誰も唱えていないんだろう」
仔月「見た目がかわいらしいからじゃないですか?」
fee「かわいければ何をしても許されるのか!」
仔月「まぁまぁまぁww」
fee「幼女を愛でる癒しゲーとかじゃないですよ。代償に主人公は未来を捨ててるんですよ」
仔月「www 男性が女性を愛でるような、男性主体の話じゃないですよね」
fee「男性主体じゃないですね。女性にいいように転がされています。女性側の欠落を埋めるために、男性が見初められてしまった話に読めます。
まぁこれで、孕んだロリを捨てて逃げるようなサイテーな男だったら、逆に勝ち組ですけどね。そういうリスクも踏まえた上で、誠実そうな縛れそうな男をすなおちゃんがちゃんと見つけてきた」
仔月「『ゆびきり婚約』の最後はいまだに納得がいかないですね。最後子供を作るとき、『いくら二人が愛し合っていても、死ぬ瞬間は一緒ではない』みたいな話が出てくるんです。『ただ、子供が死ぬときに、子供の中で自分たち二人は同じ瞬間に死ぬことができる』と。
二人が同じタイミングで死ぬために子供を作ろう、という話をしていて。あの作品の根底に『持ちつ持たれつ』みたいなところがありますが、いまだ生まれていない子供にまでそんなものを押しつけるのはおかしいのでは? 身勝手だなぁと思いました。提案しているのは鈴佳の方ですし」
fee「まぁ、親なんてみんな身勝手なものですから。生まれてきた後で、『私たちが一緒に死ぬために、あなたを産んだのよ』みたいなことを言わなきゃいいんじゃないでしょうか?」
☆オマケ
fee「そういえば突然『斜陽』のオマージュが出てきたのが面白かったです。気づいた人、どのくらいいたのかなぁ」
仔月「どこでしたっけ?」
fee「これです。全然関係ない話なんですけど、僕、つい先日違うエロゲレビューで『斜陽』を引用したので、タイミングがちょうどあって面白かったです」
シスター「――この世の中に、戦争だの平和だの貿易だの組合だの政治だのがあるのは、なんのためだか、このごろ私にもわかってきました。
――あなたは、ご存じないのでしょう。だからいつまでも不幸なのですわ。
――それはね、教えてあげますわ、女がよい子を生むためです」
きっと聖書の言葉ではないだろうセリフの後に、ごゆっくりと付け足して、彼女は去って行った。