七人の仲間たちの強い絆と共に、家族への不満や孤独、全てを投げ打つような恋愛を、美麗なBGMに載せて描いた青春群像劇。「ひらたい」好きにもお勧め。
物語の感想を書く前に、まず書いておきたいのは楽曲の良さ。
100以上のエロゲーを今までやってきたけれど、ここまで音楽に魅せられた作品はありません。
挿入歌のFree Willなんて、流れるたびに聞きほれてしまったほどです。
『大まかなあらすじ』
優秀な兄と比べられ、強い劣等感と孤独感を抱える少年浩は、屋上で自分と同じ境遇を持つ智子と出会う。智子を誘って入った軽音楽部で、二人は五人のかけがえのない仲間たちと出会った。お調子者の部長、麗次とその弟子を自称する元気な少女まりも。麗次に想いを寄せる瑞樹と、その兄秀一。そしてマネージャーのほのかの五人である。初めは不協和音を奏でることもあったが、徐々に仲間として溶け込んでいく二人。七人になった軽音部は智子作曲の「Free Will」を掲げ、文化祭で大成功を収める。だが、そんなある日、智子の祖母が倒れると同時に智子に転校の危機が訪れる。六人は智子の転校を阻止する為、智子の誘拐を計画する。
これが前半のあらすじ。秘密の楽屋(タクタク?)で七人の仲間たちが過ごす日々は、
とても印象深く、心に染み入りました。
とにかく、お互いがお互いを想いやっていることが強く伝わってきて、清々しい感動を覚えました。
ラジオ番組という小道具もバッチリ決まったし(あかん子=阿寒湖=まりもは、最初全然わからなかった)、「祈る夜」が流れるクリスマス前のシーンも実に良かったです。
このゲームは智子シナリオだけが突出して素晴らしい出来なので、よく智子ゲーとか
智子以外イラネとか言われたりもします。しかし、脇役としての彼ら・彼女ら――浩と智子の他の、5人の仲間たち――が立っているからこそ、智子シナリオは感動的なシナリオに仕上がっているのだと思います。
まりもって本当に良い娘ですね。智子も好きだけど、まりもも好きです。
後、瑞樹ちゃんにもっと出番を……。
後半は、智子と玲子という、二重人格の方に話がシフトしてしまった感があり、
やや残念。
これはこれで面白かったのですが、テーマが分散しちゃった上に、前半のテーマの方が好きだったので。
単品として見れば後半のネタも面白かったのですが。
このゲーム、智子シナリオだけにテーマが集中し、他ヒロイン。
とりわけまりもは不遇だったので、仲間たちの活躍はまりもシナリオに任せて、
智子シナリオは二重人格に専念しても良かったような気がします。
あるいは、智子シナリオの後半を思い切って削って別のエンドを用意し、
『Remind Of You』だけに二重人格をひっかぶせるか。Remind Of Youが無いと、後半が中途半端な気が。
Remind Of Youはこれまた素晴らしい出来。突然、文の感じが変わったり(主人公の一人称から、三人称への変更)して、初めは戸惑いましたが、浩を想う仲間たちの気持ちや、智子を失った浩の喪失感が巧く描かれていて良かったです。
ただ、最後がちょっと不満かも。
二重人格じゃないんだから、記憶を統合するのは構わないけど人格まで統合しちゃいかんと思った。
というか、あの短いシーンだけだと玲子が智子に喰われたようにしか見えない。
そういえば、このゲームに出てくる家族を見てみますと、
悪い父・母に代わって、良き兄・姉が弟・妹を支えている構図が見えてきます。
宮本家・小西家・草薙家・村上家(後者二つは親の存在感が全く無い)の四家に共通していて、なかなか興味深いです。