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feeさんのD.C.Dream X’mas ~ダ・カーポ~ ドリームクリスマスの長文感想

ユーザー
fee
ゲーム
D.C.Dream X’mas ~ダ・カーポ~ ドリームクリスマス
ブランド
CIRCUS
得点
65
参照数
701

一言コメント

「D.C1」のファンディスクが駄作ばかりであるのとは対照的に、「D.C2」のファンディスクには良品が多い。本作では、まさにその2つがクロスオーバー。作品の質もまた、駄作と良品の間をとった印象だ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ダカーポシリーズ全てのファンディスクをプレイしたわけではないのだが、
「ホワイトシーズン」、「サマーバケーション」といったダカーポ1のファンディスクには良いイメージを持っていない。

一方で、「スプリングセレブレーション」、「フォーリンラブ」、「To you」といったダカーポ2のファンディスク群には、キラリと光るシナリオがそれぞれ1つは含まれている。曲芸商法としての負の面よりも、様々なファンディスクが作品世界を補完し、作品世界への愛着をくれる、正のイメージが強い。


さて、そんな両者のコラボということで、「あまり期待できそうもねーな」と思いながら買ってはみた。私の勘は当てにならないのだが、今回ばかりは当たってしまったのである。


ここでは、聖夜のアメージングストーリーズについてのみ語る。

イケてないRPG風ミニゲームは正直遊べるレベルに達しているとは思わないし、イケてない音姫さんと触れ合うゲームはまさに誰得?状態だからだ。僕は音姫というキャラがあまり好きではないが、じゃあ(僕の好きな)ことりを使ってほしいとは微塵も思わなかった。


D.C1のメンバーが、53年後の未来に向かう『クリスマスミライコイユメ』と、
D.C2のメンバーが、53年前の過去に向かう『Day Dream Beliver』の2編。


2編とも時間旅行モノということで、SFっぽい設定になっているのだが、素直な時間旅行モノの『クリスマスミライコイユメ』に比べると、『Day Dream Beliver』はちょっと(あまり良くない意味で)捻りすぎな感がある。


作品の質、読後感は65点の点数が示すとおり、あまり良くはない。
実際プレイしている間は、ことりに萌え転がったり、雪月花のやりとりに和んだりと、雰囲気ゲーとしてのテキストレベルは決して低くない。
にも関わらず、あまり印象が良くないのは、物語自体がどうにもワンパターンだからだろう。


・夢オチに近い形のエンディング(両編とも)

・あまり意味がない、D.C1本編ことりシナリオの劣化焼き直しである、ことりの告白シーン(『クリスマスミライコイユメ・ことりルート』)

・トラブルの原因はまたも芳乃さくら(『Day Dream Beliver』)

・小恋がボケを通り越してアホの子に(『Day Dream Beliver』杏・ななかルート)

・コラボストーリーなのに、エロはコラボしない


と、まぁこれらが不満要素である。


1番上の『夢オチ』は説明不要だと思う。


2番目。ことりの告白シーンが、初代ダカーポのことりルートと全くといって良いほどに一緒である。

初代ことりルートの告白は、ことりの「学校中の皆の前で告白することで、音夢を始めとする恋のライバルを一網打尽にする大作戦」であった。学園中の前でカップル宣言をしてしまえば、後顧の憂いも大幅に減らすことができる。一種の作戦勝ちである。


翻って今回はというと。未来の学園生の前で告白をしても、上記のような効果は何ひとつ生まれない。目立ちたかったのか?としか思えない、単なるバカップルの告白になってしまった。


余談だが、本編ことりのこういった打算・計算高さをドぎつく書いて悪女化したり、腹黒キャラとしてネタにせずに、等身大の女の子として描いたところに、白河ことりというキャラ造形の巧さを感じていたりもする。
あの程度の計算高さは人間として当たり前と感じるからだ。
最近、ちょっと人間味のあるヒロインが出てくると、やれ腹黒だの何だのとケチをつける人を垣間見るが、どうにかならないもんかね、と思っていたりもする。


話を本道に戻そう。
3番目。僕はD.C2という作品自体、結構気に入っているのだが、物語の構造としてはあまり巧くはないと思う。
文字通り『ダ・カーポ=始めに戻る』であり、演じられている物語の大筋は『ダ・カーポ1』同様であるからだ。
再び桜の木の魔法が暴走を起こし、再び同じ過ちを繰り返した張本人は芳乃さくら嬢であった。

さて、今回の『Day Dream Beliver』においても、黒幕は芳乃さくらである。
悪いことが起こると全部さくらが原因、というこの構図は正直可哀想な気もしてしまう。


4番目は手短に。僕は小恋というキャラが好きなのだ。Ⅱのヒロイン6人のうちでは2位。大幅に新ヒロインが加わったプラスコミュニケーションでも3番手である。
しかし今回の『Day Dream Beliver』では、ただただドンくさく頭の鈍い姿を晒してしまっており、魅力的に描けていたとはお世辞にも言い難い。
本編で萌えたヒロインに対して、苛立ちを感じるようでは本末転倒である。

一言言いたい。小恋はこんなバカじゃありません! もっと可愛い娘なんです!
たぶん。


5番目。仮にもエロゲーなんだからさぁ、クロスオーバーしようぜ。
朝倉音夢&音姫&由夢の、まさかの祖母孫丼とかさぁ!

ことりVS小恋の、ムッツリヒロインエロ対決とかさぁ!

子供さくらが大人さくらを責め抜くとかさぁ!

クロスオーバー関係ないけど、ことり&みっくん&ともちゃんの百合とか雪月花の百合とかさぁ。


…なんか、賛同をあまり得られそうもないので、この辺にしておきますけど、個人的には残念でした。『ダカーポーカー』なんて、世界観を大いにぶちこわす作品を作っているんだから、今更エロ面で世界観を心配する必要なんてないと思うんだけどな。