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farewellさんの遥かに仰ぎ、麗しのの長文感想

ユーザー
farewell
ゲーム
遥かに仰ぎ、麗しの
ブランド
PULLTOP
得点
100
参照数
3376

一言コメント

適度の情報を以ってプレイすればとても素晴らしいゲームに思えました。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

まず、述べておきたいのが「前情報がなければ間違いなく評価は低かった」という事実。以下の理由が当てはまります。


○他の方が必ず仰いますが「本校ルートと分校ルートで主人公が別人格」ということ。これは前情報がなければデメリット以外の何者でもありません。シナリオによって主人公の行動パターンがバラバラなのですから。

○本編が結構長いということ。やはりプレイするからにはある程度の覚悟がいります。

○「複数のシナリオを楽しむ作品」だということ。一本シナリオの良作への期待みたいな過度の期待はしてはいけません。作品の肌色が違います。


上記を心がけてプレイするだけでかなり楽しさが変わると思います。また、主人公の性格はよく「本校ルート>>分校ルート」といわれていますが、この情報は鵜呑みにしないでプレイしていただきたいです。意見は人それぞれなので。。私は逆でしたし。。。


ではここからレヴュー。


まず触れておきたいのは、上記でありましたが主人公の性格について。本校ルートの主人公が圧倒的支持率を誇りますが、私は逆でした。
 まず本校ルートの主人公のほうが圧倒的に人間の器が高いですが、完璧すぎて「いかにも」といった感じです。お陰で本校ルートは感情移入度が分校ルートよりも低かったです。

 逆に分校ルートの主人公は庶民感漂う、感情移入しやすい普通の主人公でした。どのルートでも身の丈以上のことはしてくれますが、その過程も超人臭さは少なく良かったです。
 ちなみにこの本校、分校での人格の違いですが本作においてこれは間違いなく「アリ」でした。6つの未来があったとして、一つの人格では「魅せれる範囲」というのは知れてます。その点二つの人格を使えば魅せれる範囲は拡大します。
主人公二人にしたらいいとかはナシで。主人公はなりきるためのものなので、ひとりがベストに思えます。矛盾しますがここら辺のプレイヤーの感情の処理が「前情報」によって左右します。


続いてシナリオについてですが、非常にびっくりさせられました。「監獄」「手の届かないお嬢様」「大富豪」といういかにもノンフィクション感漂う設定の中、私が感じたのは「生々しい」という感情。もちろん完全ご都合主義です。ありえません。何が生々しいんだと罵られるところですが、私が感じたのは「人間関係における感情の変化の期間」が生々しく、結果ありえないシナリオがありえるシナリオにみえました。
というのも昨今の作品では、出会って一ヶ月程でさっさと恋に陥り、契りを結び、命をかけるという子どもの恋を一世一代の恋みたいに見せようとするシナリオが往行しています。そんななか、本作においてどのシナリオでもそういった関係になるには半年以上、しっかり友好関係を結ぶところから始まり、恋仲になったからといってすぐに体を売らずその場限りの恋でない。。。というのを実感させてくれます。命をかけるには実際ではもっと熟成期間があってもいいですが「作品」としてはここらが妥協点。これ以上はプレイヤーのアレがついてきません。
一部、「毎日の描写が欲しかった」「期間が長くてシナリオが薄っぺらく感じる」と仰る方も居そうですが、実際平日祝日関係なく毎日女の子とストーカーのように接して早ゴールインするいかにもエロゲーな作品より、こういった「長期的に描き、その間起こりうるイベント」を凝縮して描写し、その他普通のことはあえて描かない方向のほうが遥かに現実的で白けません。
そして、上記の理由により大富豪の娘との恋愛事情という、ありえない事象に関しても生々しく受け入れることができる。。。という点で評価がかなり底上げとなりました。


各シナリオについても相関図が面白く、シナリオの見せ方もギミック多彩で楽しめました。二人のライターさんは接点がなかったのか、受け持った3人だけしかシナリオにおける共通点を持たせなかったのも好感度↑です。この規模で矛盾なく6人接点持たせるには並大抵ではまかり通らないと思いますし。。。
具体的に某ちびっ子以外は全部良かったです。というか、魅せるポイントがシナリオごとに違ったのが非常に良かった。うまく説明はできないですが、言い換えたなら「多国籍料理を一つの場所で至上の品を食べれる」感じ。ちょっと違うけどタブンそんな感じです。ちなみに某ちびっ子のシナリオに関しては最後の終わり方が。。。。アレさえうまくまとまってたら全員◎だったのですがね。。。というよりこのシナリオの何割かの人はリーダに心を持っていかれます。その場合わたしと同じ気持ちになる。間違いない。

私個人の意見として一つの物語(ヒロイン を主軸として一つの物語を魅せる作品より、こういった数撃ちゃ当たる的シナリオのほうが好きです。エロゲーはどうか知りませんが、昨今の一本シナリオは余程突拍子もないシナリオでない限り言いたいことは知れてますので。一本に期待が集中するあまり駄作に感じてしまう。。。みたいな。
そんな無謀なことをするより複数本「ありそう」なシナリオを用意し、魅せるポイントをバラバラにし、期待以上を楽しませるほうがエンターテイナーです。実際6シナリオ中5シナリオも当たりと思えるようなシナリオでしたので上質な一本をプレイした後の感動より、感動の回数と質供に多種多様で満足してます。


キャラクターに関してもメインヒロイン6人全員◎。サブキャラの三嶋鏡花、上原奏、リーダ、暁光一郎と名役者揃い。というか、サブキャラは反則です。久々にサブキャラに満たされた気がします。ファンディスク、コンシューマでの攻略可or不可によって本作のファンが暴動起こすんじゃないですか?イヤ、マジデ




○久々のプレイ、そして今年最後の作品としてとても満足のいく作品でした。こういった作品に出会えたときの嬉しさは計り知れませんね。こういった作品に出会えたことを幸運に思い、本レヴューを終了します。文句なしの100点!!!


追記:本作のツンデレは完璧です。昨今の「とりあえずツンツンしてデレっとしたらいい作品」に飽き飽きした方、是非どうぞ。