また一段とD.C.の世界が深められた作品です。シナリオ周りのスタッフが大きく変わり不安でしたが、D.C.Ⅱを彷彿とさせるD.C.感あふれる作品でした。
全ルート一周したので、見返しつつ感想や考察などをつらつら書きます。読みやすさとかは考慮していないのであしからず。
まず、前作D.C.ⅢがD.C.Ⅱと非常に密接しているのに対し、本作は他のD.C.作品とは、今のところ直接はほとんど関係していないのには驚きました。ただ、世界観が上手く共有・深堀りされており、他の作品と雰囲気がだいぶ似ているため、D.C.シリーズだな、と思うのと同時に、今後の展開に期待が持てました。あえて他のD.C.シリーズとの時間軸を言うなら、無印の10年程度後ということになるかと思います。この「あえて」という表現は後述する「3つの国について」に関係します。
シナリオは3章構成で、流れはD.C.Ⅱに似ています。学園イベントに向けてのドタバタコメディの1章、そこで仲良くなった2人のキャラクターを中心に何かを行う2章、個別の3章。特に1章はD.C.ⅡのSSPのような普通の学園イベントにはなさそうな斬新な切り口が良かったと思います。
立絵は今までも後ろ姿などを上手く使い、立体感が出ていましたが、今回さらに台詞にあわせて縦横に動かし、より感情が出ていたかと思います。よくノベルゲームは超豪華版紙芝居といわれますが、今回は超豪華版紙人形劇という感じがしました。
メインヒロインのCVは以前までと違って、多くの期待の新人を育てるという感じではなく、声の合っている、元からできる人を多めに起用している感じがします。このあたりは時代の流れなどでしょうか…?新人には有里栖・有里咲の演じ分けとかがほぼ不可能だったからかもしれませんが。なお、結果としてはそれぞれのキャラクターに合っているし、感情の込め方なども流石としか言いようがなかったです。とてもよい。
BGMも一新されています。今までのように同じテーマのアレンジ曲が使われていたり、まさにシンセという音が少なめでだったりピアノ系の音に特徴があったりするのか、多くの曲でD.C.シリーズのBGMだ、と感じられるのには驚きました。個人的には「心踊り胸弾む」が今までの雰囲気を持ちつつ、新しい要素も取り入れている感じがしてお気に入りです。
挿入歌がほぼなくなってしまったのは寂しく感じました。今まで一番の感動的なシーンをこれでもかと押し上げていたんだなあと実感しました。OP/EDでは個別ルートOPの「ハジマリノキセキ」がお気に入りです。
○各ルート感想・考察
・有里咲:
「8歳と9歳と10歳のときと、12歳と13歳のときも私はずっと・・・・・・待ってた・・・・・・!」
これはそれっぽいネタをただ挟んだだけかと思いましたが、事情を知ると本当に幼い頃から待ってて重みが感じられます。
恋よりも自分の使命を全うしようとする魔法使い。Ⅱの音姉の姿が重なりました。
D.C.4の舞台である"ミズの国"の有里栖、シリーズの他の作品の世界の"サクラの国"の有里咲。
対となる存在。
有里咲はその名を魔法使いとしての真名と言っていましたが、
真名はその場での混乱を避けるための口実で、単なるサクラの国での名前な気がします。
魔法使いの真名があるのであれば、D.C.Ⅲでその設定が使われていると思うので…
有里栖が学校を休んだ前後で声の高さとスピードに若干違和感があり、何か別人っぽくなってるぞ?
って思ったら本当に別人になってたんですね。
有里咲の声は有里栖に比べて若干低め、遅めな気がします。東山奈央さんすげえってなりました。
有里栖と入れ替わったあと、たまにワンダーランドのALICEとも入れ替わっている気がします。
ワンダーランドでの有里栖とのキス未遂のとき、
2人を見ていたALICEはその表情からALICEのものではありません。
そして、次回訪れた時のALICEの不調。
自分そっくりなもう一人の自分と一登の関係が良くなっていくのを見て、
気持ちを抑えるのが大変になっているのでは…
やっぱり愛が重…深い…よい…
ビンタまたはキスの縁がどのような形でカガミの国に残されたのかは分かりませんでした。
ただ、時間やマナバランスの影響を受けないカガミの国に縁を残す、
というのは最後のハッピーエンドを迎えるためには欠かせないかなと思います。
有里栖と入れ替わっていた有里咲のどちらを選ぶかの部分で、
認識論の範囲での独自考察が入るかな、と思ったんですが、選択肢1つで決まったのが少し残念。
ミズとカガミとサクラの国の考察はあとの「3つの国について」に回します。
有里栖・有里咲ルート以外での彼女は…魔力が衰えていないからマナバランスの崩壊を普通に阻止できたと考えましょう。
・有里栖:
1年の間、有里咲が勝手に体を使っていたにも関わらず怒りもせず、
さらにそんな有里咲が命を賭して魔法を使おうとすると止めようとするなど、心の広さがとてつもない。
食べキャラなんてとんでもない。天使キャラ。
2章の後半では一番普通の男女の恋愛をしていた気がします。
というか実際有里栖とちょこはヒロインの中で珍しく魔法を知らないんですよね。
有里栖の場合はシナリオの途中までですが。
普通の恋愛をしていても他のルートと比べて浮いた感じがしないのは、
思い出探しやもう一人の自分探し、という名目のおかげかなと思います。
ルートのキーとなるのは、ミズの世界では恋をしたら魔力が上がること。
サクラの国と鏡あわせのようなミズの世界の法則としては納得できる部分もありますが、
気になることもでてきます。ここは、後の「魔法」の部分に書きました。
有里栖が使えるようになったのは、「変換」の魔法といったところでしょうか。
恋することで増えた自身の余分な魔力をマナに変換し、周囲に拡散します。
マナが妖精の形を取るミズの世界では、人工妖精にも魔法を乗せることができるようで、
香々見島の人間が恋をすることで有里栖の魔法が発動し、マナを増やすことが出来ます。
面白いことはマナの増加の連鎖でしょうか。
マナが増加した人間の周囲にいる人もマナが増加しやすくなる傾向が見られるようです。
一つの島の人間の恋が増えた程度で世界的なマナバランスの崩壊が止められるのかよーとか、
増えた魔力を勝手にマナに変換して害はないのかよーとかは言ってはいけないお約束な気がします。
そもそもマナは通常どうやって生まれるのでしょう…謎です。
今後この辺りが納得できるような考察材料が出てくるといいなあ…
・二乃:
君は「妹」には「こいびと」という意味があったのを知っていたか?
…すいません初耳です。
デジタル大辞泉さんによると、
いも【▽妹】
1 男が女を親しんでいう語。主として妻・恋人をさす
だそうで。これには一本取られた感がありました。
D.C.といえば義妹ですが、ここまでツン要素がない妹キャラは初めてな気がします。
小悪魔感がとても良いですね。
このルートは、二乃が交わした約束の物語です。
相手はそれぞれ一登とその妹の三美。
どちらも一登の「妹」になるという約束で、きれいにまとまっている気がしました。
キーとなるのは、二乃は「祈り」の魔法が使えること。
純粋な願いを現実に変える、枯れない桜の片割れのような存在です。
ちなみに、もう一方は願いを集める役割です。
純粋な願いでさえあれば本人の意思とは無関係に発動してしまいます。
ただし、魔法を習っていないせいか、使いこなすことはおろか、まず使えません。
一登に対して○○したいという条件と、恋する強い想いがあるときにのみ発動していると思います。
常坂家の事故と二乃の魔法に関しては完全に無関係かなあと。
発動していたら元さん気付いて何かするでしょうし。
CVは伊藤彩沙さん。長編のヒロインの中では一番新しめの声優さんな気がします。
舌っ足らず感がとても良い…
夢については後述します。
・韻子:
こーいうおねーさんがいてくれると世界は平和になる気がしますね~
因幡の白兎がモチーフとなっています。
神社の名前が違ったり、内容が古事記のそれとだいぶ違うのは、ミズの国だからということもありそうです。
あと、bad endがほとんどないD.C.シリーズで1週目の終わり方は印象的でした。発狂ものです。
物語としては考察するところが多い気がするので、いくつかピックアップします。
憶測ばかりで不備も多いかと思いますがご勘弁を。
①事故の一件の一登の魔法
二乃と韻子が事故にあいそうになったとき、一登は一瞬頭が真っ白になっており、動くまでに時間がかかっています。
そして二乃は家族として、韻子は恋する相手として、
それぞれの愛の感情を持って、助けたいと強く想って手を伸ばします。
このとき鏡が光っており、一登は何らかの魔法を無意識で使っています。
ここで発動したのは時遡の魔法かと思います。
時遡の魔法はいろいろなものを元に戻す力です。
時間を自分と縁のある時間に戻したり、壊れたものを戻したり。
子供の頃の一登は時間を戻りすぎ、自分と縁のある時間がなくなったことで、永遠に時間を戻りそうになったと考えられます。
それを途中、若かりし頃の元が一登と時遡の魔法の因果を切ることで解決しました。
元が一登にかけた時遡の魔法との因果が戻ってくる条件は、「愛する女のために使うこと」です。
その条件から、強く助けたいと想うことで一登に時遡の魔法との因果が戻り、
2人の位置または時間などが若干前に戻ったために、出遅れた一登が2人を助けられたのではないかと思います。
②事故の一件で韻子の呪いと祝い(のアップデート部分だけ?)が解消していること
badのビデオで韻子は自分の呪いが解けた理由は一登を好きになったから、と考えています。
有里栖ルートででてきたように、ミズの国では他人に恋することで魔力が増幅するため、
その魔力で葛木の鬼のように呪いと祝いに徐々に耐性をつけることができそうです。
ただ、祝いはアップデート部分のみが突然消えているため、少々説得力にかける気もします。
そこで、考えられるのは、①で書いた取り戻したてな一登の時遡の魔法が関与していることです。
一登は時遡の魔法が取り戻したてで、暴走と呼ぶまでは行かないものの不安定に発動した結果、
呪いと祝いの状態を祝いのアップデート前まで戻してしまったのかと思います。
そして、恋が強くなるにつれて、呪いが徐々に消えていったと考えられます。
③22409102
これは何を意味するのか全く分かりませんでした。誰か教えて下さい。
④true endでなぜ韻子が助かったのか
一登は、bad endを世界が不安定だった場合に起きていたかもしれない可能性として解釈しています。
では、世界が安定していた場合は呪いから無条件で助かるかというと微妙です。
というのも、安定した世界においても元は韻子の呪いを解呪していないためです。
解呪しなかった理由は、不老の呪いを解くと韻子に本当の死が連続して訪れるため。
そして、全ての死のあとには存在が消えるため(bad endの韻子のビデオより)。
実際、true endで一登が見ているビデオでは韻子は何度か死んだためか、自分が近い未来に消えることを予見しています。
この存在の消滅に関してはD.C.Ⅱで語られていました。
Ⅱの義之と違い、bad endで存在が消えても皆に覚えていてもらえるのは、世界は韻子の存在を認めていたからでしょう。
世界が安定しており、韻子と一登は互いを強く想っていたため、存在の消滅が回避できた。
D.C.の世界では想い合う力が最強なのです(ⅡとⅢより)。
⑤true endで魔法の勉強をしていること
D.C.4で語られている、魔法の勉強をしている一登は有里咲ルートの先の世界の一登のみです。
しかし、その世界ではSSRを作るきっかけを有里咲が作っておらず、SSRが存在していないはずです。
すると少なくとも1章との整合性が取れなくなるため、
有里咲ルートの先以外で一登が魔法の勉強をする、かつSSRが存在する世界があると考えられます。
ひとつの可能性としては、②の時遡の魔法との因果が戻ってきたことにbad endの後の一登が気付き、
時遡の魔法を使って、自身が魔法の勉強をするよう仕向けることです。
この場合、マナバランスの問題はそのままなので、上の世界が成立します。
そして、魔法を勉強していた一登は、
マナバランスが崩壊していること(すでに有里咲が解決してるかも)や、
自分の魔法の因果などを知っており、瀕死の韻子を見たときにどうすれば助かるのかが分かった。
だからこそ、true endへの選択肢は「今度こそ救ってみせる」で、世界を安定させたのかと思います。
⑥祝いの概念
このルートで特筆すべきこととして、D.C.シリーズで初めて祝いの概念がでてきました。
と言っても呪いと同じく、魔法のような超自然的現象で本質はほぼ同じでしょう。
呪いは変身と不老。
祝福は変身。
祝福の変身は常坂元にアップデートされ、より自由に変身できるようになっています。
一登が幼い頃の韻子が幼めなのは、このアップデートにより、
自身で幼い外見に変身できるためと考えられます。
そして、シリーズとして重要になりそうなこともいくつか明らかになったかと思います。
解呪には呪いの本質を見破らなければいけないこと、
呪いは重ねてかけることが出来ること、
祝いでは呪いを打ち消すことは出来ないこと、
などは今後の展開に影響してくるといいなーと思います。
加藤英美里さんのおっとり系お姉さんの声は初めて聞きましたがとても癒されます…
・ひより:
負けず嫌いで自分の気持ちにも気付かないふりをする不器用さが良いです。
流れはまさに白河という感じです。幼い頃にいじめられたとき、人の心に干渉する力を得て、個別ルート中にその力を失う。
ことりとななかは共に他人の心を知る能力でしたが、ひよりは心をつなぐ能力です。
このあたりはミズとサクラの国の違いでしょうか。
恋愛フラグの概念には笑わされました。
ひよりの銃や恋愛請負、未羽との追いかけっこの伏線の回収がきれいにまとまっているのも良かったです。
ひより(と未羽)が魔法を使える原因はマナバランスの崩壊と思いますが、
世界問わず、白河家には人の心に干渉する魔法の素質が受け継がれている気がします。
ただ、魔力が足りないために通常使えないところを、今回は、マナバランスの崩壊によって魔力が補われた、
という感じでしょうか。
阿澄佳奈さんの声がひよりにぴったり合っていて最高でした。イエス!アスミス!
空元気のときの声のトーンがすごい自然でとても印象的でした。
あ、2章終了時にひより自身に残っていた恋愛フラグは1(未羽談)、その後それを渡そうとするも失敗しているのは、
想い(恋)の強さかと思いました。D.C.の世界では想い合う力が最強(ry。
・詩名:
最初にやったルートなのですが、デレぢからに完敗しました。はい。
D.C.っぽさが強く、安心したルートでもあります。
詩名かわいいよ詩名。
シリーズではⅡ以来の楽器が関わるお話です。
第二ボタンの誓いとサクラサクミライコイユメのピアノアレンジとてもいいですね。
古参のファンにおっと思わせる演出だと思います。
2章の一登がピアノのトラウマを克服する部分はとても丁寧に描かれていると思いました。
詩名は、一登の子である可能性が高いので時遡の魔法がうっかり発動してこの世界に来たのか、
サクラの世界から来たのか、はたまた、完全に別なのかははわかりません。
苗字の鳳城はどこからきたのかがキーになるかもと思ったのですが、全く触れられてない気がします…
サクラの国に「鳳城一登」がいれば分かりやすかったのですが(笑)
あとスパの住み込みバイトはどういうきっかけではじめることが出来たのかは触れてはいけないんですかね…
気になる箇所としては2つ。
①詩名と一登は2人の魔法を合わせてなぜカガミの国で元に会ったのか。
2人が願ったことは「元に会うこと」です。
詩名の魔法は鏡に会いたい人を映す魔法です。
これは、鏡と会いたい人の間に縁を結んでいるのではないかと思います。
その鏡に会いたい人の像を結ぶ。
今回、鏡はカガミの国と縁でつながっているために、カガミの国に像が結ばれそうです。
一方、一登が使った魔法はカガミの国に行く魔法かと思われます。
この魔法は忘れているだけで本来一登が使える魔法です。
鏡に元が映ることが分かっていたため、より正確な願いは
「鏡の中の元に会うこと」となり、一登の鏡の縁からカガミの国に繋がったのではないでしょうか。
これらが合わさり、2人はカガミの国で元に会えたと予想します。
ちぇしについては謎です。
②詩名は最後になぜ帰れなかったのか。
まず考えられる1つは詩名がサクラの国以外(ミズの国のほかの世界線など)からこの世界に来た可能性。
例えば、後の「3つの国について」で触れますが、
違う世界線への干渉はこの2人後からを持ってしても不可能だったということは十分ありえます。
また、ミズでもサクラでもない国からきていたとしたら考察は現状不可能です。
ただ、こちらの可能性はD.C.シリーズである観点から見てまずないのかなと思います。
サクラの国から来ていた場合は帰れる可能性は十分あると思います。
朔の月の日に魔法を使っていることと、
恋により魔力が十分すぎるほど満ちていること、
一登は愛する詩名のために魔法を使ったこと(時遡の因果の解決)、
などから魔法を発動する条件は揃っているかと思います。
実際、途中までは発動し、体が触れられないくらいにはなっていました。
しかし、魔法が発動しきるまでに、互いの想いを言葉に出し、
最後にキスで繋がってしまった。強い縁で繋がってしまった。
これが一番の理由かと思います。
ただ、隠しているだけで、詩名は元の世界に戻りたい気持ちより、
この世界に残りたい想いがより強くなってしまったという可能性もあります。
ED後は、魔法の波長を合わせることをデートの口実に使ってますからね…
どちらにせよ、2人の想いの問題だと思います。
やっぱりD.C.の世界では想(ry
心を許した相手へは声のトーンが若干上がったりなどだいぶ雰囲気が変わり、水瀬いのりさんいいなあってなりました。
余談ですが、僕はD.C.Ⅱに影響されてギターを始めたのでだいぶ感慨深かったです。
詩名かわいいよ詩名。
・未羽とちょこ:
びっくりするほどシナリオが短いかわいそうな(?)お二人です。
HPを飾るのが5人なのはこのせいかって納得しました。
内容もそれぞれひよりと詩名を別の切り口から見ている印象が強いため、
サブヒロインでよかったのでは…?
友達思いといえばたしかにそうなのですが、
2人を焦点に当てている感じがあまりしないので考察などはあまりしないことにします。
あとお約束の七不思議が出てきましたが、シリーズの中で一番平凡な気が…
まあ他のが濃すぎるだけとも言えますが。Ⅱはガチだった…
○魔法
魔法使いの能力について、元さん曰く、
「魔力の強さは子供のような純粋さから、
魔法の精度は分別のある大人の精神力から。」
これらを両立させることで、少なくともミズの世界では立派な魔法使いになれるようです。
ミズの世界で恋をすることで魔力が高まったのは皆純粋な恋をしていたからでしょうか。
しかし、ミズの世界の魔法使いはサクラの世界よりも非常に少ないようです。
これは、すぐに純粋さを忘れるためにミズの世界は魔法使いだらけにならない…ということでしょうか?
謎が残ります。
以下では魔法に関連する、重要に感じた要素の考察をします。ただし、魔力やマナについてはこの感想のいろいろな部分で少しずつ勧めていることと、深く考察するには他のシリーズを含める必要があると思うのでここでは割愛します。
まずは「月」です。今までになかったのは、Ⅱまでは大きな魔法の発動のお話がなかったこと、そしてⅢは地下でのお話だったからかと思います。D.C.は様々な技術体系をもとにした魔術のお話ではなく、想いを直接具現化する魔法のお話だからか、昔の人間が不思議に思うような月の満ち欠け程度が関係しています。占星術のようながっちりした技術体系は入ってきません。このあたりのさじ加減は絶妙かと思いました。元さんは太陽系儀などを持っていましたが、多分単なる趣味ではないでしょうか。純粋な興味に従うことで、魔力の劣化を抑え、ジジイになっても一登の存在に干渉したり、記憶を消したりできた、と考えると辻褄が合いそうです。
また、今回「縁」が大きく取り上げられているように感じました。血縁もそうですが、恋愛的な縁、何かと何かの全てのつながりに対して言えそうです。例えば、カガミの国とVRカガミの国。通常は関わるはずのないものですが、カガミの国との縁を持つ魔法使いの一登がVRカガミの国を使用したことで、同じ名前の2つが繋がっています。
○夢見とカガミの国の桜
一登が見るヒロインと音夢(のような人物)の夢。
有里栖と一登が見た同じの有里咲と一登が出てくる夢。
幼少時の二乃が見た予知夢。
元も同じ夢を見たような口ぶりでした。
常坂一家ならまだしも、魔法を知らず、魔力も一般人並の有里栖が夢見を使えるはずはありません。
シリーズで、魔力が一般人並で夢見を使えた(使わせられた)人は純一や義之です。
彼らは、枯れない桜との縁を通し、桜が集めた想いを通して他人の夢を見(させられ)ています。
そこで、今回も何かによる助けを通して夢を見ていると考えるのが自然です。
その助けとは、カガミの国の桜と縁ではないかと予想します。
まず、一登は韻子やひよりの夢などを見ていることから、ミズの世界の人の夢を見ています。
有里栖たち4人はカガミの国の夢を見ています。
そして、一登が見た詩名と音夢の夢。
これらは、ミズとサクラ、どちらの世界の夢なのかわかりません。
ただ、ストーリーとしてほとんど関係のない音夢の夢を見たことと、
その内容がおおよそサクラの国の音夢と一致していることからサクラの国の夢と考えられます。
このように、3つの世界が関係しており、
さらに、これはD.C.シリーズであるのでカガミの国の桜が関係していそうだと予想できます。
次に縁。
元は有里咲の祖母に直接会ってそのときに安定化の魔法を渡しています。
このとき、カガミの国の桜と縁を作っていておかしくありません。
ついでに夢見も使える可能性もあります。
そして、一登と二乃は元の血縁です。
ただ、一登は幼少時、直接カガミの国の桜と自身で縁を作っている可能性もあります。
有里栖はカガミの国の桜と直接の縁があるであろう有里咲と体を交換しているため有里咲を通じて、
または体を交換するときにカガミの国を通ったときに、縁を作っていそうです。
その縁を通して、カガミの国の桜が夢を見せているのではないかと思います。
カガミの世界の桜は全ての世界の想いを集める魔法の桜で、
相手を想う気持ちが強い場合に、その相手に関係する、または共鳴する夢を見せている。
カガミの世界の番人が関係しているかもしれませんが、
ただ、サクラの国の枯れない桜と違い、世界を変える力は多分ありません。
恋(とその行動)が世界を変えるのです。
余談として、カガミの国の桜とサクラの国の枯れない桜の関係性としては、
参考モデル、または枯れない桜自体がカガミの世界の桜で出来ている、あたりでしょうか。
カテゴリー5のリッカさんをしてうならせた桜です。
その世界には本来存在しないものと考えると納得します。
○3つの国について
※ここでは現実の物理的な知識を若干入れていますが、物理学科出身というわけではないので、
多分に独自解釈が入っているかと思います。あとこの考察が何かの役に立つかといわれると何も言えません(笑)。
D.C.4では、一登たちの生まれたミズの国、有里咲の生まれたサクラの国という似ている2つの世界と、
全く異なるカガミの国が出てきます。
有里咲は似ている二つの世界はパラレルワールドではない、鏡のような関係の世界と言っています。
パラレルワールドとは異なる世界線の世界を指していると思われます。
世界線は、量子力学の根深い問題である観測に関する問題の解釈からきています。
自分の理解の範囲で書くと、観測問題は、大雑把には
「量子力学に従うある物理量を測定するとき、その値は確率的に定まる」
という公理をどう解釈するか、という問題です(もちろん実験事実と整合性はとれるようです)。
解釈で有名なものが射影仮説と多世界解釈です。
射影仮説は、確率的に定まった世界のみが残る、という解釈です。
射影という名前は、数学的な操作に由来しています。
一方、多世界解釈は、確率的な観測が行われた時点で世界が分岐するという解釈です。
全ての可能性の世界がそれぞれ残され、それらの分岐した世界の流れが世界線です。
なお、世界が分岐すると言っても、人間は同時に1つの世界のみしか観測できていない経験的事実から、
異なる世界線は観測することができません。
D.C.の世界では、多世界解釈が採用されており、無数の世界線が存在しています。
例えば、若かりし頃の常坂元が一登の暴走を止めた世界と止めていない世界などは別の世界線の世界です。
シリーズで言うと、D.C.Ⅲが分かりやすいかもしれません。
そして、異なる世界線の観測などは不可能、または非常に難しいと思われます。
有里栖ルートにおいて、有里咲はマナバランスの崩壊を抑える魔法が発動出来なくなった原因は自分の現在の魔力不足で、
昔の自分であれば難しくはなかったと語っています。
よって、もしミズの世界と同様異なる世界線と繋がることが出来るならば、
恋をしていない世界線の自分に頼むことで難なく解決できます。
しかし、有里咲は魔法を発動するには自分の命を引き換えにするしかないと言っていることから、
異なる世界線と自分から繋がることはほぼ不可能だと考えられます。
ミズの国とサクラの国、カガミの国の関係は、少なくとも現代の物理学に対応する部分は未だない、
物語独自の関係にあるかと思います(物理学では完全に未知の領域を設定しています)。
空間や時間、世界線とはまた違う概念の次元の上で成り立つ異なる世界です。
2つの国は鏡の関係にあるため、その次元の物理量(実数とします)の、ある値に対応する世界がミズの国、
それに-1をかけたような値の世界がサクラの国、そして0に当たる世界がカガミの国でしょうか。
0に当たるからこそ、0と無限の概念が出てきているのかと思います。
そして、時間は意味のない、けれども私たちとにとっては理解しやすい概念、と有里咲は言っています。
まず、私達に理解しやすいとは、それぞれの世界ではおよそ一定に流れているように知覚できるので、
言っているのかと思いました。
しかし、異なる世界では、時空の揺らぎと重なりが関係して一定ではなくなる。
簡単な例では、ミズの国の1秒とサクラの国の1秒は、長さが同じとは限らない、ということでしょうか。
マイナスになることもあるかもしれません。
というのも、カガミの国で有里咲は2つの世界線の一登と会っているためです(同時ではありません)。
異なる世界線と偶然繋がったと考えることもできますが、
マナバランスが乱れて時空が揺らぎ、同じ世界線だけれども違う一登に会ったのかと思います。
このあたりは解釈の問題にもなるかと思います。
○D.C.ⅣでなくD.C.4
D.C.Ⅲまでの舞台はサクラの国で、D.C.4はミズの国が舞台です。
サクラの国とミズの国は完全に対称というわけではなく、名前なども若干異なります。
例えば、白河ことり(サクラ)と白河琴里(ミズ)。
例えば、初音島(サクラ)と三日月島(ミズ)。
この関係と同様に、タイトルもⅣではなく4にしたと考えられます。
○謎
杉並よ、非公式新聞部はどうした。ミズの国にはないのか?
非公式新聞部が魔法使い集団であれば、ミズの国にないのは納得できる気がします。風見鶏とかもなさそうなので。
元と有里咲はなぜ髪が金色になるときがあるのでしょうか?
常坂家の人は名前に数字が付く人多いけど意味があるのでしょうか?
元がなぜ安定化の魔法を教えるのではなく、与えることしか出来なかったのでしょうか。
そして、なぜ与えたのでしょうか。
元は行方不明となっていますが、人知れず何かをやっているのでしょうか。
考察が及ばない部分もありましたが、D.C.4の製作に関わったスタッフ皆様、D.C.シリーズを続けてくださりありがとうございました。上には書いていませんが、泉先生の授業とかも聞いていてこんな学校に通いたかった…とか思ってしまうほど細かい部分までしっかり作られていると思いました。
とても面白い作品に仕上がっていたと思います。