泣くまで、戦え。
私はG線上の魔王、車輪の国とるーすぼーいの作品をやってきたが、私が思うるーす作品の良さとして①読みやすく軽快なテキスト、それを彩る有葉氏の絵とBGM②ジェットコースターのように乱高下し読み手を引き付けるシナリオとしての力強さ③主人公、ヒロイン、魅力的なサブキャラ④終盤の怒涛のどんでん返しや伏線によるカタルシスというものが挙げられると思う。
①今作もこの視点から見ても素晴らしい出来であったと思う。原画の有葉氏はさすがというべきか申し分ない出来で、背景、キャラクターの一枚絵など、どのシーンを切り取ってもクオリティが高くプレイ中に気になる点などは私の中で全くといっていいほどなかった。
西坂恭平氏が紡ぐBGMもあかべぇそふとすりぃのできない私が、くり返す。の時にも感嘆させられたのだが今作も作品の良さを更に仕立てあげる素晴らしい出来であった。公式HPのBGMを初めて聞いたときからこの作品のBGMは素晴らしい出来になるであろうと予感していたエロゲーマーは私だけではないだろう(笑)
テキストという面では会という中々頭の中でイメージしにくいものを取り扱っているということもあって少し冗長に感じさせられるテキストもあったが基本的には癖のあまりない小説家のようなテキストなので読むこと自体にはそれほど苦労はさせられなかった。
②ジェットコースターのような乱高下するシナリオといえばG戦場の魔王の終盤のようなイメージがるーす作品では浮かぶかもしれないが、今作もふと安心したところで急に突き落とされたり天国と地獄を行き交うような読み手を引き付けるシナリオの力強さが中盤から特に終盤にかけてあった。
ただ、久しぶりのるーす作品ということで私自身身構えていたというところもあるかもしれないがG線上の魔王をプレイしたときよりも物語全体が乱高下するようなスリリング感は少なく感じたのは確かである。だが少なくとも、今作もるーすぼーいらしいジェットコースターのような気分を感じることが出来て私が内心ニヤリとしていたのは言うまでもない(笑)
③まず主人公という点から掘り下げると私はここでいきなりるーすぼーいの術中にまんまと嵌ってしまった(笑)ゲームを開始した時点は縦テキストが読みにくいな~程度の感想しか持っていなかったのだがまさか縦と横のテキスト形式を使い分けることが主人公そのもののテキストとして使い分けていたとは思わなかった。
ネタバレ要素が多いためあまり語れませんが本作の実質的な主人公である蓮司は頭がキレるがゆえの失態なども犯してしまうが、仲間やヒロインであるるみに支えられながら成長していく姿はどこか京介や森田を思い出させる主人公であった。
やはり良いエロゲーには良い主人公がいるものなんだな、と思いました。
そして悪役の長門大地。とっつぁんといい権三といい悪役たる悪役が良い味を出してます。
ヒロインであるるみはただただ芯が強いな、と思いました。私ならあの厳しい環境で育ったらもっと荒んでしまいそうです(笑)
メインヒロインが一人だということもあり一途に思われている蓮司はほんとに幸せ者だと感じました。リア充爆発しろといいたくなるのは私だけではないはず。
蓮司の友人である沙代ちゃん、徹、しのぶ、結花、工藤ちゃんもサブにするのがもったいないぐらい魅力的なキャラクターでした。個人的には結花がお気に入りで、ダメな自分を変えるために必死に頑張っている彼女には本当に心を打たれました。
この作品に対する1番大きな文句といえば個別ルートがなかったことですかね。ミドルプライスなので仕方ありませんが(笑)
④どんでん返し、伏線回収によるカタルシスといえばるーすぼーい作品の醍醐味でもあると思います。どんでん返しという点では終盤にヒヤヒヤさせられたりオッと思わせられるところもあり楽しめたのですが、前述した通り私がるーすぼーい作品ということで肩肘張りすぎて読んでしまったのかもしれないが、展開が読める部分も多々ありG線のようなやられたというようなどんでん返しはあまり無かったのかなと感じられます。
伏線回収という点においては序盤では???な出来事も終盤にかけて綺麗に回収していくのでやはりこのライターの力量は素晴らしいなと感じられました。伏線をどうなるのかと考えながらシナリオを読んでいくのもるーす作品の醍醐味だと私は思っています(笑)
総評として、今作は申し分ない出来だと思いますし、るーすぼーいがこの作品に込めたメッセージも自分の中で受け取ることもできました。ですが、他の方も言う通りミドルプライスということもあって各キャラクターに対する掘り下げと成長が車輪と比べるとあと一歩かなという気持ちもありますし、終盤の伏線回収によるカタルシスもG線よりも少し弱いかなと感じるところがあったのも事実です。
ですがあまり過去作に囚われてしまうのもどうかと思うので純粋にこの作品単体で評価した時に何点が相応しいのか、ということを考えた時に充分満足できる出来だったので90点という点数をつけることにしました。
私はやはりるーすぼーいというシナリオライターが好きだ。(あくまでシナリオライターとして)
長文の駄文になりましたがこれにて失礼します。