寂しさを感じる作品。
5年以上前にPC版をプレイして、ふとプレイする機会があったので2度目のプレイ。
精神を具現化した「エゴ」能力者同士のバトル!
といったものから期待するような派手さはあまりないが、
淡々としたテキスト、存在感のある音楽、各キャラの機微、
引き込まれるものがある作品。
ゲームの半分以上は芝浦八重の主観、背景がすこし暗くなると各キャラの主観となっている。
そのことを意識してプレイしてみると違って見える。
75~佳作
80~良作
85~名作
90~神ゲー
ビジュアル:全体的にキャラクターはほのぼのとした柔らかい感じがするものの、作品との相性が悪いわけではなく、若者らしい幼さがでている。エゴデザインはダサかっこいい。
音楽・ボーカル:ボーカルは無し。BGMはおしゃれな感じのものが多く全体的に質が良い。
ボイス:PS2版では男性・主人公含めフルボイスに。PC版とのイメージの差もなくハマっている。
システム:スキップ、ジャンプ、巻き戻し、かなり使いやすいシステム。オート無し、セーブスロットが少ないのが難点か。
シナリオ・テキスト:ページの区切りがうまく、読みやすく伝わりやすい文章。
「~と言った」等全体的に細かく描写しているため、プレイヤーの想像する隙間がない場面も。
「…………」沈黙が多用されている。蛍の間の悪さからの気まずさや、多くのシーンでの緊張感など、ありありと伝わってくる。
雫の毒電波や痕の鬼の力、リアライズのエゴ。中二的視点から見るとエゴが1番かっちょいい。
特に攻撃した相手から力を奪える設定自体が好きなので...
しかし戦闘の面白さでいえばΣ戦がピーク。ミラージュ、ブランクといったテクニックでの盛り上がりが最後。
というのも結局のところ精神対精神の戦い「心を強く保つ限り、傷ついたエゴは回復する。無限に。無限に回復する。」というのもあるが、本体を攻撃する(春秋の言う)しらけるやり方も存在するわけで...
規模が大きくなり力が強くなればなるほどあっけない終わり方になるのは容易に想像できる。
暁のいう大人のやり方なんてのは物語的にはしらけるやり方だろう。
邦博「ガキが色々とスタイリッシュに名付けては喜んじゃいるが、やってることはただの喧嘩だ。」
ただの喧嘩だからこそ、傍目から見てくだらない内容だからこそ、その人の一面が出て面白いとも言える。
結局のところ本作でのエゴとは一線を超えるのを後押しするものでしかない。
「自分で考えて、決断し、行動にきちんと責任を持ってくれ」
本作での結論、結末は序盤に出てしまっている。
群像劇によってその答えを、少し深掘りするのが本作かと。
リアライズの話は設定とキャラクターが魅力的だからこそ、結末はどこか物寂しいものになってしまうのだろう。
・芝浦八重
菩薩。幽霊。パールホワイト。エゴを吸収し続けた人間の成れの果て。
パールホワイトは人々の幸福を求める意思(願望や欲望)の集合体。
あらゆる障害を乗り越えていく絆の「強さ」「健やかさ」という「揺るぎないもの」が強固な核となったエゴ。
悲しい過去を背負った、善い性格のキャラの様に描かれているが、
その実1番話の通じないキャラなのではと感じた。
序盤の会話では「私には」「そういうの無理だと思う」と言っているし。
みんなの幸せを願った自己犠牲もエゴの押し付けなわけだし。
・松浦亮
悩んでばかりな上に無口。修二の彼氏。
彼女がいるのに男とばかり絡む。
エゴのせいで規模が大きくなっているが、悩んでいることは思春期の少年らしいものだなと。
「自分が変わる……。
他人の影響で……。
しかも自覚もないうちに……。
それには、ひどく抵抗を覚えた。」
人を傷つけることは、暴力に対して暴力で制裁することは、身近な人の死とは
エゴという特異な設定でありながら、普遍的な題目だなと。
八重のエゴとの融合の影響かはわからないが、精神的にはかなりタフ。
多くの出来事を正面から受け止め、自制し取捨選択している。
・伏見修二
亮の彼氏。
人には人の正しさがあるので、自分で考えて自分で行動に責任を持てという、答えに対し、
蛍の考えである話をしてお互いの意見を深めていくというよりは、自身のみで完結させる色合いが強い。
エゴの回復方法は孤独になり自分を見つめ直すこと。
だからこそ沙耶と近づけたのかなと。
・芦田蛍
ほのぼの担当。
「私には私の「正しいと思うこと」があって……。
亮には亮の「正しいと思うこと」があって……。
どっちが正しいのかってことも大切だけど、こうして話をして、お互いの意見を深めていくことも大事なんじゃないかって思う。」
エゴがなくてもお互いわかり合おうとすることが大切だよねと。
亮がエゴの力を使わないことによって結ばれる。
といった具合に修二や八重と対比になってはいるのだが、やっぱり描写不足。
・宮路沙耶
エゴのデザインやその愛嬌、数少ない描写の多い女キャラのため、記憶に残るキャラ。
他人を受け入れないのではなく、自分の意志を貫くか否か。が本質。
ただ不器用な性格なだけで、修二から影響を受け物腰が(多少)柔らかくなるが、
芯の強さは作中でずっと変わってなかったと思う。
かっこいい。
・稲葉倫
ほのぼの担当。
PS2版では倫エンドに手が加えられており、
亮に幸せの形を示し、八重を成仏させている。
「エゴはオレンジ色の光に包まれていた。
それは、稲葉倫の光だった。
芦田蛍の光だった。
伏見修二の光だった。
彼を支えている多くの人々の光だった。」
本妻の蛍より影響与えてるんですがそれは。
・麻生春秋
現実主義でありながら、周りに流されない強さにあこがれている節がある。
「どこにいても溶け込まないってのは格好いいよね。
それが、賢い生き方かどうかはともかくとして」
「自分自身に受け入れられたかったのかな」
悪い奴だがどこか憎めないところがある。
最後の最後で亮とパーティーを組んでおきながら警備員にエゴの力を使っていて
らしいなとくすりとなった。
・浅見邦博
強さを追い求め続ける途中、ふと自らの美意識に反する行動をしてしまい、自分の社会的立場、
自分が今何をしているのか感傷的になり、幼馴染のところに寄ってしまう。
リアライズはこういった描写の少ない脇役が本当に魅力だなと思えるキャラの代表。
例えば殺し屋、踏切の制服の少女等も背景や今後が気になるキャラばかりだ。
自分のエゴが具象化したら....
醜悪な見た目になってそうだなぁ...ww