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eroger_tさんのハミダシクリエイティブRe:Re:callの長文感想

ユーザー
eroger_t
ゲーム
ハミダシクリエイティブRe:Re:call
ブランド
まどそふと
得点
80
参照数
361

一言コメント

ごめんなさいイキは最高です。ねえ、みなさんもそう思いますわよねえ?

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ろくに前戯もなく、喘ぎ声だのジュポ音だのが主体で誰とエッチしても大して変わらないようなテキストを読ませてくるエロゲにはほとほとうんざりしていたので、そういう意味で莉々子さんとのエッチだからこそのやり取りやリアクションが見られるのはとてもよかったんじゃないかなと思います。僕はエロゲーマー界隈で市民権がない「エロゲにエロはいらない」派でしたが、このゲームはあってよかったんじゃないかな。

ところで僕は悪役令嬢モノが結構好きで、それなりの数悪役令嬢モノの漫画を読んでいる。そこで描写される悪役令嬢とは往々にして意思が強く、我が強く、またそれらを通すための能力や権力、財力を有す。他にもジェンダー意識が高い人から怒られそうだが、どちらかと言えば男性的というか男らしさがあり(作中で同性から敬愛を超えた淡い恋慕を抱かれるようなことも少なくない)、自立的で現代女性の憧れる理想の女性像に近いことが多い。この場合の理想は、シゴデキでサバサバしているが同性からも異性からも一目置かれてイケてるヒーローからは執着される的なもので、男で言えば戦闘力が高く財力もあり女は股を開くみたいな。ちょっと夢見がちな理想。でもこの悪役令嬢像って思ったよりも莉々子さんと合致していなくて、掘り起こせば乙女的な憧れを持っていて、どちらかと言えば献身的だ。作中でも割と早い段階で悪役令嬢を否定するモノローグがあるが、これは微妙に間違っていて表出しやすい気質が悪役令嬢チックなのである。

彼女が描いた濃厚なキスシーンを指摘された結果、修正し完成させた漫画を読ませる際に「予定になかった1ページを違和感なく差しこむために、どうしようか頭を悩ませていたのですけれど、良いアイデアが浮かびました」と話して、主人公が心の中で「違和感しかないでしょう、あなたの漫画の話の繋げかたは。」と突っ込むシーンがある。こうしたやり取りの背景には彼女の悪役令嬢チックな性格が根ざしていると思う。

莉々子さんが否定されずに育ってきたのはレスバ事件や無意識的な同調圧力からも分かる通りだ。自分の正しさに疑いを持たず他人と自分の価値観や思考にズレがある場合を考慮できないので、そういう人は例えばAからZに飛んでも間にB~Yがあるのは常識であるため描写不要だと考える。(ただこれは必ずしも莉々子さんのような人のみに起こる現象ではなく、手前の話で恐縮だがこうしたエロゲの感想一つをとっても、この話をするには前提条件の説明が足りてなかったなと後々反省することは多々ある。)莉々子さんの中では論理的に繋がっているが、説明が足りていない可能性を考慮しない。よしんばしていても「聞かれたら後から作者の考えとして正解を教えて差し上げればよろしいのではなくて?」程度に考えている。

おそらくそれが彼女の漫画が「違和感しかない繋げかた」と言われる理由で、エピソードがきちんと性格に基づいているのだ。環境(家庭・学校・地位など)や遺伝が複雑に絡み合って形成された性格だということが推察できて読んでいて楽しいし存在に厚みを感じる。また、ギャップ萌えは定番とはいえ、これをヒロインとして可愛く表現したのは流石だと思う。「少女漫画脳なのと理想を優先しがちな性格なので、自分がこうすると決めた想定と目の前の現実がずれ始めると修正に必死だ。」なんて言われる女、現実で見かける場合は間違いなく地雷だもの。KAWAIIだけを描写する頭空っぽの萌えではないところはしっかりと評価していきたい。

最後に。
ごめんなさいイキはお好きなの?そうではないの?はっきりしてくださらない?
あと、三浦大根さんの株(大根なのにカブとは)が上がり続けている。無印のころから好きだったけどやっぱり間違ってなかったよ。