ErogameScape -エロゲー批評空間-

eringi7854さんの猫忍えくすはーとSPIN! LOVE+PLUSの長文感想

ユーザー
eringi7854
ゲーム
猫忍えくすはーとSPIN! LOVE+PLUS
ブランド
Whirlpool
得点
62
参照数
92

一言コメント

 プレイ時間は約2時間。『SPIN!』の新キャラクターのみとのイチャイチャを存分に楽しめるミニFD。細かいことは考えず、イチャつけるだけ…かと言うとそんなことはなく、ストーリー性らしきものも少しはあったりする。しかし、頭空っぽで楽しめる猫忍ワールドは健在。点数等は一切気にせず、欲望のまま貪るべし!猫忍との触れ合いが、みなさんに癒しを提供します。

長文感想



☆作品紹介

 1年と2か月前に発売した『猫忍えくすはーとSPIN!』。そのミニFDです。私も当然、過去の『猫忍シリーズ』の『LOVE+PLUS』は全てプレイ済み。ゆえに傾向は分かっていました。
 ズバリ、「何も考えるな、感じろ!」ということです。キャラクターの魅力をイラスト、サウンド、声優さん等様々な面から引き出すことに長けたWhirlpool様のサービスFDが約1000円と安価なお値段で登場!これは買うしかありません。キャラクターの紹介等は潔く、公式サイトに任せます。今回は本編を分析しつつ、ご紹介します。


☆シナリオ(22/50)

今までの『LOVE+PLUS』以上にキャラ特化。

〇設定が出来上がっているからこそ安心感がある一方、弱点もある

 本作は当然、『猫忍えくすはーとSPIN!』のミニFD。ゆえに設定諸々を引き継いでいます。私が『SPIN!』を『無印』シリーズよりやや高めに評価しているのは、何と言っても、過去作からの設定に基づく、物語展開が一応はなされていること。そして、キャラクターの精神年齢が『無印』と比べてかなり高く設定されていることの大きく分けて2つです。結局、『無印』の大きな弱点は、キャラクター達が猫忍の本能に従うがあまり、キャラクターの精神年齢が低過ぎる。そのため、主人公、春希君マンセーの雰囲気が形成されていたとともに、共に人生を歩むパートナーとして、猫忍達が(言葉を選ばずに言えば)幼稚過ぎる点です。その点はクリアされていたと思うのです。前作は。
 実際、今作『LOVE+PLUS』でも設定は引き継がれており、補完的な側面が強いです。ゆえに、安心感はあります。一方、設定が固まり過ぎて、キャラクターの幼稚さが戻ってきている印象があります。これは、ライターである近江谷宥先生の癖なのかもしれません。しかし、キャラクターの相対年齢がどうしても低く見えてしまっています。
 特にナナコとチカについては、軽く前作を確認した上でも分かりましたが、明確に稚拙な行動に及んでいます。私は男女問わず、18禁ビジュアルノベルのキャラクターには最低限の品位と尊厳を求めます。18禁ビジュアルノベルの顧客は成人した大人だからこそ、そこは守って欲しいのです。しかし、本作は良く言えば、ワイワイガヤガヤ賑やかでしたが、悪く言えば、少々子供らしい側面が表に出ていましたね。前作のナナコ、チカは女性としてのケアが比較的しっかりしている印象でした。主に〇シーン中心に母性本能や煽り等で精神年齢を引き上げる手法が使われているのです。ですが、本作ではその手法を使い、キャラの大人びている側面を前面に出す技法が展開されるほど、尺がない。ゆえに近江谷宥先生のキャラクター表現がどうしても稚拙な行動に頼らざるを得ないのです。ここが原因でシナリオの点数を本編より6点ほど、引いています。

〇物語性は限りなくゼロ

 加えて、本作はミニFDらしく、今までの『LOVE+PLUS』同様に物語性は限りなく薄いです。無論、後述するような新ヒロインの登場や藤花の葛藤等、無視出来ない物語的側面は存在します。しかし、尺の関係もあり、限界があります。
 それでは、みなさんは本作を通じて何か印象に残ったシーンは(〇シーンを除き)あったでしょうか?私は過去の『LOVE+PLUS』を含めても最大級に欠けている。そう考えます。なぜかと言うと、藤花、ナナコ、チカの三人に尺を振り分けなければならず、物語性の付与に成功しているのが、メインどころの藤花のみなのです。ここは非常にセンシティブな部分です。物語性(=ストーリーの進行)をミニFDで付与して良いものか、と言う問題ですね。難しい点ですが、私は、ゲームとして市場に出ている以上、一定の物語性は担保される必要があると考える厄介な人間でした。それが感動、笑い、エロ。何でも良いのです。ですが、本作はいずれも中途半端。ミニFDであることを考慮してもこの程度の点数が限界というのが正直なところです。

〇次回作以降のヒロインにも期待

 さて、本作ではみなさんお楽しみ、新キャラクターが全てのシナリオで、シルエットで出現します。私もこれにはワクワクしました。『LOVE+PLUS』における新キャラクターのチラ見せ、登場確定はシリーズの恒例行事であるとともに、嬉しいニュースです。本編『SPIN!』の新作が発売することが事実上、決定したわけですからね。
 個人的には猫忍らしい可愛らしさに+αして、姑息さ、要領の良さ、女性的な精神年齢の高さを期待します。私は『SPIN!』のテーマ自体、意外と心理的に根深い部分にあると捉えています。次回作にも期待しつつ、今は待ちの姿勢で待機です。

 総じて、不足点が大きく見えてしまったミニFDでした。もっとも、点数化すると参考値としてこの程度だよ、というお遊び要素です。しっかり、心は温まり、猫忍達の日常を見る事も出来ましたし、満足のいくFDです。Whirlpool様のサービス精神に乾杯です。


☆キャラ(32/40)

 キャラクター部門は前作『SPIN!』より1点引いて、32点です。理由は、前作で登場していたマヤ、陽葵、シノが登場せず、キャラクターの賑やかさという『猫忍』シリーズの良い点が欠損していたからです。一方で、この欠損は良い点と言うこともできます。つまり、藤花、ナナコ、チカにフォーカス出来るということです。
 特にチカについては、私は今でも忘れていません。チカの〇シーンが本編で1シーンだけだったことを。しかし、『LOVE+PLUS』では当然、チカの補完もされており、メスガキらしさ。反省も出来る程度には素直な点がピックアップされていました。私はこの点、特に好きですね。
 次にナナコですが、私が最も好きなキャラクター(僅差ですが)です。しかし、本作では若干冷遇気味というか、ツッコミ役に回ってしまって本人の活躍はイマイチだったかなとも考えています。もっとも、本作のそれがナナコの個性です。柳ひとみさんのお声と合わせて堪能は出来ました。しかし、不服も若干ではありますが、あり。難しいです。
 最後に藤花です。藤花は、評価が上がりました。彼女にもまだまだ秘密があり、それを主人公、菊丸に言えずにいる。そういったもどかしさで苦しむシーンもお話が動いている点と合わせて素敵でした。個人的には春乃いろはさんが大好きなので、ここは頑張りどころというか、押さえるべき点は押さえたかなといった箇所でしたね。
 総じて、『猫忍』らしい賑やかさこそ静まってしまいましたが、概ねキャラクターは評価出来ます。言うことなしとまで言えませんし、尺の関係もあります。完全にユーザーを満足させるのは不可能でしょう。それでも最大限の努力を感じたので、32点と30点は超える点数を点けています。


☆その他(8/10)

 新規曲はなし。しかし、使い勝手の良いシステム面は健在。バックログからのシーンジャンプ、速いスキップ、お気に入りボイス登録機能。最高峰のシステムとそれゆえの快適さを保証します。
 雰囲気、世界観も超ロープライスに相応しく、ミニマムにまとまっています。綺麗にまとまりがある、強力な作品と言えるでしょう。詳細は私の批評空間上の『SPIN!』の感想で述べていますが、一定の納得できる世界観を『無印』シリーズから引き継げるのは単純に強いです。
 総合的に見て、最高のキャラゲーですが、楽曲面、世界観もコンパクトにまとまりつつ、と言うところで、ロープライス相応の8点。つまり、ロープライスの最高峰点数です。


☆総括(62/100)

 総合的には佳作(C)認定です。正直、本作を点数という可視化された尺度から見るのは、根本的にはナンセンス。結局、可愛らしい、お気に入りキャラクターが登場するか否かが重要になってきます。自分で行っておいて恥ずかしいのですが、シナリオがどうだの言って、点数を点けること自体、無粋という観点も確かにあるでしょう。
 しかし、私にもユーザーとしての矜持があります。ゆえに、評価は公平な視点からさせていただきましたし、後悔はありません。『猫忍』シリーズの良さ、気になる点が表出した作品。それが本作、『LOVE+PLUS』なのです。
 本作からは次回作への伏線らしき描写もお見受けします。次回作も大変楽しみでありますし、発売日に購入する程度には気に入っています。点数に支配されず、楽しく作品を享受したい。そう考えます。
 ここまでネタバレなしの感想にお付き合いいただいた皆様。心からの感謝を。そして、同時に、このようなサービスFDを大変安価で提供して下さったWhirlpool様にも深い感謝を示します。以上です。失礼いたします。