ErogameScape -エロゲー批評空間-

ergotkさんの創作彼女の恋愛公式の長文感想

ユーザー
ergotk
ゲーム
創作彼女の恋愛公式
ブランド
Aino+Links
得点
77
参照数
1363

一言コメント

桐葉、好きだ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

このゲームは桐葉が全てのルートにおいていい味を出しています。桐葉が一番好きなキャラだと胸を張って言えるでしょう。しかしこのゲーム時代が好きなゲームだと言えるか、それは難しい話です。具体的な感想を語っていきます

<共通>
共通√が本当につまらなかったです。付き合っては離れて、付き合っては離れての繰り返し。なんの意味があるのかという感じでした。現代の恋愛への価値観の変わり方を汲み取って新たな「お付き合い」の在り方を表そうとしていた・・・と擁護も出来ますが、それにしたってお試し恋愛で付き合っては別れる、それを桐葉だけではなくエレナともやってるのは流石に・・・となりました。まずここが賛否両論ポイントの一つになるでしょう。同じことの繰り返しで投げてしまうプレーヤーも多いんじゃないかな。ましてやエロゲであまり見かけない、裏事情のあるお試し感覚での恋愛を共通で見せられてもねぇ。だからこそというか、お試しで恋愛してたらいつの間にか好きになってました~みたいな「恋という気持ちを得る過程と様子」に軽さが出てしまうんですよね。作品を通してモヤモヤしていた部分です。無論、「恋愛とはなんなのか」という問いに対して書いた答えというならば納得できます。ライターとしてもお試し感覚でくっついたり離れたりを繰り返させることでヒロインに恋愛について考えさせる、そのような意図をもって書いたとは予想が付きます。でもやり方は他にあったんじゃないかなぁ。せめて桐葉だけでも良かったと思う。

<桐葉>
最初に桐葉をやったんですけど、キャラとしては好きだし性格もストライク、彼女の持つ面倒な性格の部分が魅力的に描かれてて良いシナリオだったんです。だったんですけど一つだけ文句を言いたいのが「なぜあれほどまでの超展開を続ける必要があったのか」ということ。主人公がファンに刺されたり桐葉が声出せなくなったりの展開が急すぎるし、解決方法を思いついてから実際に解決するまでの早さも異常。これは全シナリオにて言えます。とにかく軽いんです。表現しにくいんですけどね、どこのルートでも「あぁ、立ち止まって考えてみればそういうことだった。初心に立って正攻法で行こう」の繰り返し。主人公が自分で物事の捉え方を難しくしてるくせに助言をスッと与えられたら考え直してすぐ解決。「俺が今までなんで悩んでたのか分かりました、それでやってみます」を何度聞いたことか。まぁエロゲの話の作り方としては一番オーソドックスだし意外性を求めてはダメとも言えるんですけどね。ほぼ俺が難癖をつけてるようなものでもあるので。逆に一番褒められるのが桐葉の告白台詞とCG。雨の中素直になれない桐葉がこの時ばかりは素直になって心情を吐露し告白するシーン。本当に良かったです。特に「ムカツクムカツクムカツク~!」のあたりらへんの葛藤と主人公への八つ当たりね

<ゆめみ>
最も無難で、最も普通のシナリオ。恋したら作品作る理由無くなったけど、じゃあその恋を糧にして主人公のために作品書けばいいや、で解決。個人的に一番期待していた結菜とのぶつかり合いがありませんでしたね。共通でやっちゃったから今回の個別ルートで悩んでる問題については正面から喝を入れずにぶつかり合わなくても助言だけでなんとかなった印象。むしろ逆で個別で思いっきり彼女たちにぶつかり合ってくれた方が印象は大きくなったのですが、なんというか惜しい。

<エレナ>
このストーリーが最も「クリエイター」について迫っていた印象。天才と凡人の対比~の流れは似たようなアニメや漫画で腐るほど見てきましたが、それでも王道らしく面白かったです。ただ全体的にはエレナが全肯定主人公ラブだったので薄味。恋愛模様に対して起伏が無くまぁそうなるよなで終わり。でもエロゲとして一番エロゲしてる√だったかも。好きな女の子と結ばれて、イチャイチャして、好きと言って貰ってドキドキして、それでいていつまでもお互いの背中を追い続けながら寄り添う。一番オーソドックスで、一番安定して綺麗な物語でした。

<逢桜>
人によっては大きな地雷。問題ルート。どうしてそうなったんや。とにかく言いたいことが山ほどありますが、他のエロゲのタイトルを借りて話すなら「恋かけみたいな羽目になるなよ・・・」というストーリーです。「実は死ぬ運命のヒロインでした~!」って言われてもえ?ってなる。でもそれはまぁ許せるんですよ。というのも、「奇跡なんか、いらない」というテーマに一番寄り添ってる展開だからです。死ぬ間際までもクリエイターとしての矜持を持ち続け、命を燃やしてでも最高の作品を作り上げる。そのことへの葛藤、周囲の悩み、説得、そして”生き方”への問い。死生観を扱う物語としてベターだと言えなくもないですが、先述したキャッチコピーとマッチしてますしクリエイターの矜持がなんちゃらの話とも噛み合ってて良かったんです。本当に。まぁグランドルートでそんなのやるなと文句の一つも言いたくなりますよ?それでも作品として書きたいことを書くためには必要だったしと思って許せていたんです。ただなぁ、本当に何でグランドでいきなり死生観を匂わせてきたのかな~というところだけはモヤモヤしています。純粋にクリエイター同士が切磋琢磨するタイプの作品を期待していただけに、ヒロインが死ぬ運命にあるというストーリーを追う覚悟が出来ていなかったのでそこだけは残念です。キャラゲーでもないから文句言えないですけど。

<全体として>
完成度は一級品です。このブランド初の作品とはいえ有力なクリエイターが複数関わっている作品だけあってレベルは高かったでしょう。CGも声優の演技(特に桐葉)もレベルが高く、音楽も美しいし何より目や口が動くシステムが凄い。今までのエロゲとは一線を画すとも評することが出来るレベルです。あと良かったのは全員3回目のエッチで目のハイライトが消えるところです。マニアックというかこだわりというか、失神するくらいまで爛れた性交をするところが非常に良かった。おかずとしてのレベルも高かったというわけです
あとは文句があるとすればどこかで見たようなキャラ、展開が多いかな~ってこと。パクリとは言わないですよ。でも例えば「結菜はいろ〇すさんかなぁ~」とか、「この展開は冴えカノだなぁ~」とか、「主人公が最初物語を書けなかったり、手紙のやり取りが途中で終わったり、ヒロインが主人公の前から(逢桜は留学で)いなくなるあたりとか”恋かけ”だなぁ~」とか。まぁどこでも扱われやすいテーマですし、似ても仕方ないでしょう。

以上が作品に対しての感想です。アペンドはそれなりに期待して待ってます。あとは江ノ島に行ってみようかな。


<追記>
アペンドでif√が出る際はやはり逢桜の生死が関わってくるのでしょうか?いずれにしろ首を長くして待ってます。桐葉の後日談も期待。ライターが桐葉を一番お気に入りとして扱ってるみたいなので優遇されてると嬉しいです。