いつもどおりのSMEE。平和な恋愛を描いた作品。悩んでいるなら買いましょう。
※総評は個別のネタバレ少な目ですが、未プレイの方はご注意ください。個別の感想はネタバレあります。
1 総評 85
SMEEらしい作品としてまとまっていたな、というのが第一の感想でした。前作が不発気味と感じており、今作がどうなるかと不安な部分もあったのですが、奇を衒った部分のない普通のシナリオで安心しました。どのシナリオもそれなりにまとまっていたように思います。そして、これは他のSMEE作品でも言えることですが、主人公がいい男なので、シナリオ中にイライラする要素がないのもいいですね。
時間軸を縦に区切るという試みについてもどちらかというと好印象です。学生の恋愛と社会人の恋愛で、それぞれ雰囲気もシナリオのゴールも変わっており、一本の作品でありながら時間経過と主人公の変化を感じることができる面白いコンセプトでしょう。
あえて要望をいうなら、もう少しヒロインとの会話などに選択肢要素を増やしてくれると、ヒロインのことを深く知ることができたのではないかと思います。メイラバ系統の作品もそうですが、攻略パートがない分シナリオを読み続けるだけになりがちで、プレイヤーとしてヒロインにアプローチをしたいという希望が満たされない感じはありました。
ともあれ、恋愛を安心して楽しめるSMEEらしさの詰まった素晴らしい作品でした。次回作も期待しています。
2 えいみルート 75
王道学園モノ。普通の学園モノです。フレラバくらい普通の学園純愛モノです。つまり何が言いたいかというと「こういうのを待っていたんだ」ということ。普通の主人公とヒロインが、普通にイチャイチャしてくれれば満足です。
ヒロインは、誰とも分け隔てなく接する人気者の優等生。ドライなようで心は繊細。表情豊かで賑やかな性格。一緒にいて楽しいタイプ。CV柚木サチ。どこかの田舎の学園で生徒会長しつつ、たまに隠れて原チャ通学してそうなタイプです。対等な恋愛を描く彼女とのストーリーは、普通な恋愛ストーリーかもしれませんが、普通だけど特別な日々を描いているように思います。生放送で我々の耳を粉々に破壊したことに定評のあるシャウトも健在です。
ただ、逆に言えば、これといった特色が無いかな、という印象も受けました。えいみのキャラクターがぶっ飛んでいるわけでもなく、ストーリーも平坦という感じ。シナリオのラストはちょっと突飛な締めだったように思います。
3 千津ルート 85
年下彼女。先生呼び。CV実羽ゆうき。最高。最高なのは間違いないんだけど、感想が出てこない。彼女のキャラクターが好きすぎてほとんどストーリーを忘れました。
そんな彼女は、控えめな年下タイプ。だけど母性のような優しさ、包容力もある。年上の主人公を甘やかすような言葉で脳が溶ける。実羽さんボイスの独特の伸びがある語尾で脳髄まで溶ける。最高。
最初、主人公と出会ったばかりのころ、おどおどしていて人見知りをしていた女の子が、主人公に恋をして大人の女性になっていく。そんな素敵なストーリーでした。
そしてやっぱり実羽さんの声が素敵。好きなんだよなぁ。
4 コレットルート 95
今作イチのシナリオではないでしょうか。大きな山も大きな谷も飛び道具も用いることなく、ただラストの盛り上がりに欠けることはない。主人公の抱える漠然とした未来へ不安も、コレットの心の隙間も、その家族との関係も、主人公とコレットの未来も、すべてが綺麗にまとまった、素晴らしいシナリオでした。
特にヒロイン像の深掘りは素晴らしかったように思います。天邪鬼なめんどくさい美少女(いい意味で)というとエロゲのキャラ付けとしては珍しくないですし、コメディ向きなキャラクタでもあるので、その性格は、ただ性格として完結しても不思議ではない。そんな中で、あえてそこにコレットの心情を描き出し、ラストの大団円への端緒としているのは見事です。
狂ったカルリーニ夫妻(特に夫)も大好きです。アナフリ性欲魔人。唇がキモイ。目がつぶらでキモイ。カルリーニ夫妻が出てくるとコメディパートが一気に華やぐので、それもまたSMEEらしい雰囲気と言ったところでしょう。
「こんにちは。私、クソ女よ」(ばい~~~ん)、で発売前の私の期待を爆上げしたコレットのルートは、その期待を大きく超える素晴らしいルートでした。
5 多恵子ルート 90
全体を通して落ち着いたラブストーリーという印象。他の3ルートのように賑やかなシナリオではなく、年上のお姉さんとの静かな大人の恋愛を描くシナリオでした。
ヒロインがババ……今作(というかSMEE史上)最年長なので、どういったキャラクターなのかと思っていましたが、年の差を感じさせない、かわいらしいという言葉の似合うお姉さんでした(お姉さんというかお姉ちゃん系でしょうか)。授乳(出ないけど)手コキの似合う年上ヒロインに外れはないですね。初めの頃こそ恋愛慣れしていない奥手なところがいじらしい彼女でしたが、最後には主人公に積極的に好きをぶつけてくるようになっているのも、主人公に対する心の変化を感じられて良かったと思います。
主人公26歳、ヒロイン30歳というと、SMEE作品ではどちらも最年長にあたると思いますが、その最年長カップルだからこそ描き出せるSMEEの大人の恋愛を十分に楽しめる、そんなルートでした。