ErogameScape -エロゲー批評空間-

eq41itdさんのClover Pointの長文感想

ユーザー
eq41itd
ゲーム
Clover Point
ブランド
Meteor
得点
90
参照数
244

一言コメント

このゲームは本当に”妹ゲー”なのか

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

このゲームは本当に妹ゲーなのか。以下はシナリオに記された事実よりもプレイヤーの体感に基づくレビュー。


まず、「実の兄妹」とは何か、と考えたとき、
(1)兄妹がお互いに兄妹と認識し、血縁を自覚し、家族として過去を共有している。
存在だとすると、「妹(実妹)ゲー」とは何だろうか。
ここでは狭い定義、つまり、
(2)複数のキャラクターのうちの1人に妹がいる、というタイプのゲームではなく、(1)を満たす妹が物語上重要もしくは萌えの主体として描かれるゲーム
だとしてみよう。


そのことを前提として、この作品を読んでみると、
a 主人公は夜々をかりそめの妹としている。
b 夜々は主人公をかりそめの兄としている。
c 本編での2人のいちゃいちゃの大半は、本当の”兄妹”としてのものではない。
d 記憶想起の後の関係は、近親愛について吹っ切れるか、吹っ切れないか、という押し問答しかない。(最終的に身体が危険になったので火事騒ぎに乗じてまあいいんじゃね?という結論)
e 記憶想起後の2人の記憶は少しずつ回復していっており、兄妹として完全に記憶を共有している状態ではなかった。


では、このゲームは「本当の妹ゲー」なのか。
まず、a,b,cが(1)と矛盾する。事実として血縁があっても、本人に自覚がなければ「実妹萌え」は不可能だ。
次にdだが、これは(2)と矛盾する。この作品の萌えの主体は、a=かりそめの妹である。
また、「物語上重要」である登場人物が妹であると本当に言えるだろうか。
eを参照すると、記憶が想起された後の2人は「かりそめの兄妹」の延長線上にある関係にあり、(1)、すなわち「実の兄妹」を完全に再現した関係ではない。2人が「実の兄妹」であるという真実を知った後も不均衡で不完全な関係を続けていた。
つまり、eにおいても(2)と矛盾が生じる。


以上のことからこのゲームを「妹ゲー」と言うには、かなり抵抗感があるというか、無理があるように感じる。
というより、このゲームは「妹的ポジションの後輩ゲー」なのではないか、とすら感じる。
それは言い過ぎなのだが、とはいえ、夜々が実妹である事実に変わりはないので、広い意味で「妹ゲー」というのも間違いではない。
このゲームは「正真正銘の妹であることを”プレイヤーが”感じられないまま終わっていく妹ゲー」なのだ。

そう考えると、シロツメ√ラストの夜々の反応が、本来あって欲しかったものなのである。