雰囲気と音楽に関してはかなり見どころを感じたものの、終盤のシナリオ運びに弱さを感じた
憂鬱になるような冬の曇り空、白黒で対になる天使たち。Monochromeのタイトルらしいキャラデザインや背景と、テンションの上がり切らないテキスト、展開。雰囲気を楽しむ作品としては高いレベルで統一されたグラフィックとシナリオは、とりあえずやってよかったと思わせる内容だと感じた。
シナリオに関して、雛水√までのシナリオはそれなりにまとまっているとはじめは感じた。遊羽と雛水の輪廻転生(キリスト教っぽい意匠なのに?)に関してはこの後にちゃんと説明してくれるならば、人によってはビターともとれる終わり方でも問題ないだろうと考えたが、梨沙√も生まれ変わりでまた出会うことで感動を誘う手法を使いまわしてしまっており、そうなると遊羽以降の√はすべて消化不良と言わざるを得ない。
特に、梨沙√に関してはかなり投げやりな出来であると言える。唐突に挿入される過去回想では、これまでのどの登場人物とも関わりのない人間を「対象者」とした天使の昇格試験がはじまる。そこで同時に降り立った二人の天使こそ、主人公と梨沙の転生前の姿、というわけであるが、彼らの輪廻の原因となったこの試験。端的にいって「運が悪かったね」と言うことに尽きる。対象者の男女それぞれが急に豹変して二人の天使をレイプするという展開(鏡映しのように同じ!)は、事実は小説より奇なりと言うように、そんなこともあるのかもしれないが、それを筋道があるように書けないのならエンタメとしては破綻しているのではないか、と言わざるを得ない唐突さを感じた。これが原因で二人は記憶を失って人として現世をさまよってまた出会いましたよ、と言われても、『AIR』の往人と観鈴ちんのようなカタルシスは望むべくもない。そこだけはとにかく残念だった。