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emiyさんの封緘のグラセスタの長文感想

ユーザー
emiy
ゲーム
封緘のグラセスタ
ブランド
エウシュリー
得点
85
参照数
1405

一言コメント

【3周目クリア後感想】シナリオ:王道の内容、それなりに楽しめたが一本道なのが残念。ゲーム性:いいバランスで楽しかった、ただし不親切な点も多かった(それを手探り感があると思えれば面白い)

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

エウシュリー過去作では、神採りアルケミーマイスター、創刻のアテリアル、を数百時間ほどプレイ済み。
率直な感想としては、この2作と同じくらいゲーム性は楽しめた。ストレスになる要素もあまり無かったように感じた。

【シナリオ】
~あらすじ~
ある戦争がきっかけで都市グラセスタに奴隷として連れてこられた主人公ジェダル。
グラセスタという都市は ”黒の抗” という魔族が巣くうダンジョンの上にあり、長きに渡り魔族と戦いを続けていた。
またグラセスタでは強さと功績が大きく評価されており、たとえ奴隷でも功績を稼げば何でも手に入れられる。
高価な物、地位や身分さえも。認められればグラセスタの王にもなることもできる。

多くの奴隷は魔族との戦いに駆りだされており、ジェダルもまた魔族との戦いに身を投じていく。
だが最低身分のジェダルに任されるのは大して稼げない低レベルな仕事ばかり・・・
何とか今の境遇からの脱却を図っていたジェダルの前に、グラセスタ貴族のリリカがあらわれる。

とある事情から”黒の抗”の深部攻略を目指しているリリカ、ジェダルは彼女と協力して”黒の抗”を攻略することになる。
リリカのグラセスタに関する深い知識と貴族権力による許可証、ジェダルの卓越した戦闘能力と経験、がタッグすることで”黒の抗”攻略は順調に進んでいく。
そして彼らは”黒の抗”の深部でひそかに行われていた陰謀を知ることになり、巻き込まれていく。
果たして彼らは、グラセスタを魔族から守りぬき、リリカの目的を果たすことができるのか・・・というお話。


シナリオは上記の「リリカと”黒の抗”の深部攻略を目指す」の一本のみ。
このためメインヒロインはリリカ一人のみ。他ヒロインはサブイベント&Hシーンがあるだけと思ったほうがいい。
内容は、ラスボスの陰謀を主人公がぶっ潰す、という非常に分かりやすい王道ストーリー。予想外の展開はほぼ無いが普通に楽しめる内容だった。
※ジェダルとリリカは違うベクトルで力を持っており二人とも賢い。お互いに足りないところをうまく補い合いながら物事を進めていける、正に良き相棒といえる。
そんな彼らなので物語中に愚策を用いることもまずなく、シナリオに関して彼らの行動にストレスを感じることがほぼ無かったことが楽しめた大きな要因であったと思う。


基本的にリリカ以外のキャラは、主人公達の攻略を「お金で雇われて協力しているだけ」という立ち位置。
彼らも各々の価値観や目的をもって行動しており、初めから主人公達に親切心から協力してはくれない。
他作品のように「特に理由もなく無償で命をかけてくれるキャラクター」よりも行動理念に納得できるし、実にグラセスタという舞台で生きる人間らしいと思う。
一方で主要キャラ以外はメインストーリーにほとんど絡んでこないため寂しくも感じる。
(とはいえアグナやザルドネなどがメインストーリーに口出ししてきても煩わしいだけなので、ジェダル&リリカがメインの方がすっきりして良いとも思うが)



【キャラ・CG】
キャラクター達は皆が自分の目的に対して勝手気まま、それゆえに個性的に描かれていて良かったと思う。
CGはいつものエウシュリーどおりに綺麗、私好みに合っていて満足できた。



【システム・攻略】
基本的にはシナリオ一本道、EDもひとつだけ。メインシナリオのクエストを順にこなしていくだけで良い。

ただし各章毎に発生する、サブヒロイン達などからのサブクエストは時限制のものが多いので注意が必要。
・就寝したときに発生するものもあるので雇用費がもったいなくても何度か就寝を繰り返した方がいい。
・発生条件が分かりにくいものがいくつかある。(ロザリンド:オリジナル武具の試し使用を何度かしないといけない、ユリーシャ:スキル駄天使・・・回復がたまにダメージになる、を発動させないといけない、など)

またメインシナリオも、基本はMAP上の「!」のアイコンをたどっていけば良いが、いくつか次の進め方が分からなくなりやすい箇所があり困ったことになりやすかった。特に既読スキップ多用する2周目以降。
この辺りはもう少しイベントポイントを分かりやすくして欲しかった。
[例1]第三章、闘技大会が開催されない
・上隷士になってから就寝した後に自動発生するイベントを多分見ないといけない。
・闘技場の入り口に近づいた際に発生するイベントを見ないといけない(これは「!」のアイコンが出ない)
[例2]第四章、「紅蓮の明星」が被害を受けたイベントの後から先にシナリオが進まない。
・東地区のリリカ自宅に近づいた際に発生するイベントを見ないといけない(これは「!」のアイコンが出ない)
[例3]第六章、藍鷹騎士団駐屯所に裏口から入ったが先に進む道が見つからない。
・倉庫奥の棚の後ろに隠し通路がある(これは「!」のアイコンが出ない)



【ゲーム性】
ダンジョン内にいる敵シンボルに触れるとバトル突入する。(たまにランダムエンカウントもする)
敵を倒したり避けたりしながら、ダンジョンギミックを解きつつ先に進み、BOSSを倒す、が基本の流れ。

<所感など色々>
(1)仲間の雇用、装備の購入、スキルの強化、身分の向上、イベント(娼館の利用)など、どれもお金(GP)が必要。
稼いだお金で何をするか、どのキャラから強化するか、で悩むのが楽しかった。
過去作では「特定のアイテムを大量に稼がないといけない」が億劫でストレスに感じることがあったが、今作はお金を稼げばいい(手段は色々ある)なのでシンプルでよかった。

(2)一度行ったことのあるMAPにワープポイントがあれば、MAP選択から瞬時にワープできる。
 また一部の状況を除き、ダンジョン内からも瞬時にグラセスタにワープで帰ることができる。
 同じ道を何度も歩いて戻ることがなくて済むので非常にストレスフリーだった。

(3)バトルシステムは戦女神シリーズ同様のアクティブフレームバトル。
(行動毎に待機時間が発生し、待機時間0になったユニットから行動していく。)
また今作はHPゲージがパーティ全員合計で共有。個別にHPや防御が低いキャラも安心して使える点は良かった。
ただしこのHPゲージは「戦闘に参加させていないユニット分も含まれる」。
そのため、HP高いけど使いづらいキャラは戦闘に参加させずにHP底上げ&荷物持ち要因用として仲間にされやすい。
HPゲージは「戦闘に参加しているユニットの合計」の方が良かったのではないかと思う。

(4)バトルでは敵の待機時間を遅延させるスキル”魅了”が非常に強い。魅了持ちに全体攻撃させればほぼ被ダメがなくなる。なおこの魅了を無効にするスキル”遅延無効”があるが、効果は「遅延効果の軽減」ではなく「一定までの効果を無効にする」である。バランス面では”遅延軽減”の方が良かったように思う。
※遅延無効+5(5フレームまでの遅延を無効)のスキル持ちに対し、魅了+6(攻撃を当てると6フレーム待機時間遅延)のスキル持ちが攻撃するとそのまま6フレーム遅延で通る。2周目以降は魅力+9のキャラを作れるが、遅延無効+9を持っていないBOSSは一度もターンを回さずに倒せてしまう。(ちなみにラスボスも遅延無効+5なので・・・)
BOSS戦は全て1面戦闘なので魅力キャラの攻撃を集中できてしまうのも問題、このため4面配置された雑魚敵の方がはるかに厄介ということがしばしば起きる。

(5)各スキルは使用回数が決められており、アイテム使用か就寝により回復できる。
ただし真面目にアイテム強化すれば、アイテム使用で全員のスキル回数を各20回復を容易に乱用可能。
そのためスキル回数の温存は全く考えなくて良い。このせいでゲーム難易度が大幅に下がったように感じる。

(6)何においてもステータス「待機」が最重要。待機が短い=強い、待機が長い=弱い、のキャラ性能差がひどかった。
※敵の行動早いユニットでは待機6~10くらいが結構多く、パーティキャラの待機が遅いと敵に先に行動されてしまうことが頻発する。待機の短い味方ユニットを装備でさらに待機時間短縮のうえ、魅了で敵の動きを止める、をしないとかなりストレスが貯まる(物語後半は下手をすると何も出来ないまま全滅しかねない)
このため、唯一待機を短縮できる靴関係の装備「不動の靴(待機ー3)」や「再動の靴(待機ー5)」選択する以外の余地がなくなる。他の装飾品がほぼ無能アイテム化してしまった点は残念だった。
またアグナやロザリンドなどの待機の遅いユニットが1回行動する間に、再動の靴を装備したユナギなら最速攻撃スキルを最低3回は確実に撃てる(ユナギに全体攻撃させたいならお札を使わせれば良い)。
総ダメージ量、命中精度、魅了与える回数、どれをとっても待機の早いユニットの方が優れており、待機の遅いユニットがいらない子になってしまった点は残念だった。
ステータス「待機」のユニット間の差はもう少し小さくするバランスにして欲しかった。

(7)一部の武具は、強化材や他の武具を使って能力強化することが出来る。
また、それらの武具は同属性の武具を強化に使うことでスキルも強化することができる。
この武具スキル強化が説明不十分だと感じた。Ver1.02以降は装飾品のスキル強化もできるようになっている。
・武器:色々な属性の強力武器が多い。スキル強化用に属性付き武器は極力残した方がいい、物理属性はいらない。特に、最強武器に多い無属性、魅了付き装備(「冷気の剣」と「トリューネの涙杖」など)に使える冷却属性はあったほうがいい。
・防具:無属性の防具だけ残しておけばいい。不要な物理・その他属性は無理して残さなくても問題ない。(魅了付きの「睡魔の衣」、反射無効付きの「氷鏡の衣」が有用だがどちらも強化できない。2周目以降に入手できる最強防具を除けば、この2つより使い勝手の良い強化可能防具が存在しない。)
・装飾品:前述の通り最終的には「再動の靴」しか選ぶ余地が無い。このスキル強化用に、属性無しの回避UPできる装飾品(鉄の盾、価値の無い靴など)を残しておくと良い。

(8)どうも味方LV=敵LVになるシステムらしい。そのためLVが上がっても強くなった実感が全く得られないのが残念。
強力な装備を入手する、装備を強化する、早くスキルレベルを上げて上位攻撃スキルを入手する、戦闘時能力UPの消耗アイテムを強化する、あたりをしていかないと戦闘が全く楽にならない。

(9)戦闘オート機能がある。結構細かい条件設定&どのスキルや道具を使うか選択、ができるのでありがたい。
※とはいえ、私は最初から最後まで「ペイロのみ攻撃・他は全員防御(または回復)」の設定にしかしたことはないが。
今作ではフールミル(アイテムドロップ+1個)が存在せず、ペイロのスキル”強奪”でしかドロップ個数を増やせない。
BOSS戦では強奪を狙いたいが発動確率低めなので普通に攻撃すると先にBOSSを撃破してしまいがち。
かといってペイロが強奪するまで延々と手加減攻撃し続けるのは苦労するためオート設定しておくとすごく楽。



【Hシーン】
合計48シーン(前座のみ含む)。
・リリカおよびサブヒロインは各2~3回ずつ本番あり。+リリカは他ヒロインとの3Pが3回あり。
・受付嬢のシェリエラは本番2回。
・その他、娼館関係の女性キャラ各1回ずつ本番、など

ユナギとアグナは個別イベントで敗北陵辱シーンあり。エクセルは強制で陵辱?シーンあり(回避不可)。
ミクリは他の男仲間を交えた3Pあり(ミクリ本人の要望)。
これら以外のHシーンは全てジェダルを相手にしたものだけ。陵辱要素は薄め。
※リリカ家メイドのマオはフェラのみ、新人受付嬢のリュシーはHシーン一切なし。

またグラセスタの街中で行われるシーンが多く、ダンジョン内でのシーンはかなり少ない。
ベッドなどの上に寝かせて、服を脱がせて普通にHする、がそこそこ多かったと思う。エウシュリー作品にはそういう普通のHシーンが少なくて残念な印象を持っていたので嬉しかった。



【総評】
キャラは可愛い・美人が揃っているし、みな個性があって魅力的。
ゲームも適度に難しすぎず、簡単すぎずの難易度でちょうど良い塩梅。
シナリオは意外性は無いものの、ストレスなく読める王道モノで楽しめた。グラセスタの世界観も良かった。
欲を言えば複数ルートのシナリオがあると嬉しかった。

バランスが悪いところもあるが、トータルで見れば万人受けされる良作RPGだと感じた。
(分かりづらい仕様も結構あるが、それを手探りで見つけていくのもまた本作の面白さだと思う。)



【その他 感想】
・MAP内にかなりたくさんの隠し要素があるので、MAP内を歩き回るのが楽しかった。
・EDが1つだけなので3周目以降の周回要素としては、能力底上げアイテム(主に所持数+1できる商人の秘石)を稼ぐぐらいしか思いつかない。もう少しやりこみがいのある要素が欲しいところ、アペンドDISCに期待。
・最終的に”魔王石”は結構余る。新しい交換要素追加して欲しい。(2周目限定MAP行く等のイベント消費分は周回時に戻ってくる。全部集めれば、全交換しても不足することは無いので安心して交換に使っても問題ない。)
・ミニキャラまで用意されている歪魔ルイズがなぜか仲間にできない不思議。神採りの歪魔ミレーヌみたいに仲間に出来るかと思っていたのにどうやっても娼館に売り払うしかできない。強力な魔族をご主人様~って従えることができたのだから戦闘要員に加えた方が間違いなく有用、ここだけはジェダルの行動に納得がいかない。