感動はある。でもいじめに対する不真面目さと、全体を通しての退屈さが難点。
いじめをテーマに扱うという事は、ある種の挑戦だと思ってる。
ライターにはそれなりの誠意と覚悟を持ってシナリオを書き上げてもらいたい。
このゲームでは、村での差別を受けているはやみと、彼女と仲良くすることで同じ目にあう主人公の葛藤が中心に描かれていた。ただ、はやみの日記を取り合うあのシーンは余りにもチープで、少なくともまともではなかった。物語に意味を持たせようと思うなら、少なくともあのシーンは真剣に書くべきだったんじゃないかと思う。
いじめが絡む以上、被害者である主人公側と、加害者であるクラスメイト達には明確な対立関係があり、ある種の法則性がある。いじめる側は、いじめる相手に対して憎しみや敵意、そういったものを持っていなければならない。排斥する側の行為にはそれらがこもっていなければならないし、ゆいたちの普段の行いや言動にはそれが現れていた。とするなら、あのシーンでふざけた態度をとるのは明らかに間違っている。辻褄があっていない。あの場でコメディ要素を加えるのは、それまで起きていたいじめと、そこで葛藤する主人公たちへの侮辱に他ならないし、何よりプレイしていた俺に対しても真摯さが欠けていると思う。
まあ、そういういじめのシーンに目を瞑れば大方の所はまとまっていたと思う。
目が見えるようになってから成長後の後半にかけては少しボリュームが少ないと感じたが、アフターストーリーも加えればそれなりの量ではある。個人的には、主人公目線でのストーリーを見てみたいと思ったけど…。
ただ、やっぱり退屈さがゲーム全体を占めていたのが点数を下げる一番の理由である。
主人公の幼稚な語りが延々と続くため、好みに合えば問題ないのかもしれないが、俺には合わなかった。笑いのセンスが足りてない。面白みがない。それを我慢して読み進めたものの、はやみと結ばれるまでの経緯では不満な点も多かった。例えばはやみの家についても具体的な背景が語られることがなく、主人公の家もほとんど謎のままで、舞台となるあの村で唯一主人公の面倒を見る叔父さんは、主人公の問題にそれほど深く関わってこない曖昧なキャラクターだった。冒頭で流れる踏切の描写も、少し予想通り過ぎてカタルシスが感じられなかった。
はやみ以外のルートをみればこうした謎や不満は解消されるのかもしれないが、もう一度楽しもうと思わせるだけの期待がこのゲームには持てない。
はやみが幸せになれたという記憶だけ残してこのゲームは終わらせようと思う。
暇があれば、またプレイする事もあるかもしれない。