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elmallさんのナマイキデレーションの長文感想

ユーザー
elmall
ゲーム
ナマイキデレーション
ブランド
まどそふと
得点
79
参照数
1465

一言コメント

これ、「なんとなく作ってみたらこんな作品になった」じゃなくて、「狙って作りました」だったら、まどそふとはきっと良質の萌えゲーブランドになる。まさに「自分が今やりたかった萌えゲ」を作ってくれました。

長文感想

1.幼馴染や妹などといったテンプレ属性に、その属性にありがちなシナリオ展開。
2.コンセプトの「ナマイキ」も、「まあこんな娘いるよね」と思う程度でインパクトは無い。
3.ヒロイン4人かつシナリオも短めなので、15時間程度でクリアできてしまう。

というのが本作の簡単な概要。
これを見て、「コスパ悪そうだな」とか「ただの萌えゲか」と感じた方は、買うべきではない。
もし、「普通で良さそうだ」と感じた人には、手放しでオススメできる。

1.属性とシナリオ展開

幼馴染の汐里、妹のみさき、ホントは善人な不良娘、偉そうな金髪ちび。
ありきたりを通り越して、最後なんて紹介文を読んだだけで金田まひるボイスで再生されそうな普通っぷり(*)。
だが、普通だけに大外れもない。プレイ前から安心できるし、プレイしてみても期待を裏切らない。

シナリオについてもやっぱり同じことが言え、普通といえば普通。
いや、普通は普通でも「最高級に普通」なのだ。起承転結がしっかりしていて、盛り上がるシーンはしっかりと演出する。どこか既視感のあるシナリオでも、ちゃんと自作品に落とし込めている。
こういう「普通」が、とても安心できる。

* 後ろ二人はよく見ていくと「手が早いキャラなのに最初から主人公と知り合いじゃない」「金髪キャラだけど高飛車でもツンデレでもツインテールでもない」と、微妙にテンプレを外しているというのは後から気付きました

2.ナマイキについて

このコンセプトで注目すべきなのは「登場時どういう性格か」じゃなくて、「仲良くなるにつれどうなるか」だ。
これも、(上述の通り予想の範疇でありながらも)シナリオ上のアクセントとしては効いている。

自分が安心したところは「この子ホントはいい奴なんだよ」と説明だけはいっぱいしてくれているパターンじゃなかったこと。
サービス精神旺盛なゲームだと、そのキャラの考えなり理念なりを過剰にアピールしてくれるものですが、失敗すると口だけになってしまう。
そして、一歩間違えればただの暴力女になりそうな渚は、欠点がありつつもそれを含めてすべてが親しめるキャラになっている。

あえてこの作品を批判するとすれば、「ホントはいい奴なんだよ」という種明かしがあまりにも早すぎるところか。売りの一つとして強く押し出すのだとしたら、拍子抜けと言われても仕方ないレベルかも。

3.シナリオ構成と分量

キャラに萌えて、エロさに悶えて、最後イイハナシダナーと余韻に浸って…と考えると、本作は妥当な構成・分量ではないだろうか。
部分的に、あのシーンは3日もいらない・このシーンはもう少し膨らませてほしかった・告白からセックスまでもう少しタメが欲しかったみたいな不満点は出るものの、全体を見るとどのルートも良いと言えるだろう。

以下、最初に触れていない細かなところ。

4.日常シーンとパロディ

ボケも突っ込みもできる主人公に、それぞれ違ったアプローチで笑わせてくれるヒロインたち。
知性は無いけど、ノリと勢いはなかなかあり、日常シーンは結構楽しい。
…それだけに、「流行りものから引っ張ってきました」的なネット系パロディで台無しになっている。
顔文字の多用は我慢するにしても、2chやニコニコ系ネタは唐突にやってきて、ただ場の温度を下げ帰ってゆく。

この作品、キャラやシナリオは「しっかり自分の作品に取り込んでいる」のに、パロディは唐突感ばかりが感じられ、とても残念なのだ。
「Steins;Gate」だったり「Rumble」だったりでネット系ネタやパロディが多用されていたら、もはや「そういう作風だから」となるものの、本作の借り物ネタの数々はただただ私を微妙な気持ちにさせるだけだった。

5.エロシーン

各キャラ6回。みさきはフェラのみが1回あるから7回。
コンフィグで中出し・外出しは固定できる。
エロシーンになるとウィンドウ枠が透明になったり、効果音が充実していたりと、頑張っている。

6.「普通に」面白い作品

本作のアピールポイントは、タイトルにもある通り「ナマイキ」だ。
コンセプト紹介で丁寧に説明されていながら「普通の作品」と紹介すると「面白くなさそう」という印象を抱かせてしまうかもしれないし、作り手からするとガッカリな面もあるだろう。
しかし私は、本作を平凡だと言いたいのではなく、「安心してプレイできるバランス感覚を持ったゲーム」と称賛したいのだ。
処女作でここまでレベルの高い作品を出せるのであれば、このブランドは萌えゲーを作るセンスがある。属性「ナマイキ」のムーブメントを起こすほどのパワフルさは無いにしろ、「エロゲーマーの嫁にナマイキっ娘が1人追加される」くらいのポテンシャルは持っている。

次回作が楽しみだなあ。

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【追記1】渚について

複数ライターの弊害については、「パロが部分的に増えるなあ」くらいしか抱かなかったのだが、渚の性格については疑問。
最初に渚ルートやったせいからか分からないが、他ルートではありがちなただの暴力女に成り下がっている。
いや、最初からそういう奴だったらそれでもいいんだけど、コンセプトにも通ずるところなのだから、擦り合わせしてほしいところ。

私の抱く渚像は、「つい手が早く出ちゃうことを悪いと思いつつも直せないでいる」キャラであって、「軽口に対して暴力で返して主人公を黙らせる」のはもはや別キャラだと思うのだが、買いかぶりすぎだろうか。