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elmallさんのフレラバ ~Friend to Lover~の長文感想

ユーザー
elmall
ゲーム
フレラバ ~Friend to Lover~
ブランド
SMEE
得点
91
参照数
891

一言コメント

これがSMEE流の『Friend to Lover』か。好感度だけを積み重ねる友情発恋愛行きエロゲ。共通部分のパワーアップにより、恋人関係だけでなくその過程も楽しめる良作となった。あとらぶでれ千歳が好きな幼なじみスキーは本作を押さえておくべき。

長文感想

「恋人になるまでの過程を特に重要視する」というエロゲーマーにうってつけの一本ではないだろうか。
SMEEで元々定評のある「キャラのかわいさ」と「読後感の良いシナリオ」だけでなく、
本作では恋人になるまでの過程を「固有イベント」と「会話パート」で丁寧に描かれている。
開始時点で友人じゃないキャラもいるが、どのキャラも友人→恋人という段階をしっかり踏んでいる。

■積み重ね

冒頭で「好感度だけを積み重ねる」と称したが、これはどういう意味か。
これは、「それぞれの話は独立していて、好感度の上下だけ引き継ぐ」という意味だ。
そして、その好感度の上下は会話パートによって表現される。

本作…いや、『らぶでれ』の頃からそうだったが、SMEEの作品は基本的に1話完結のものが多い。
ヒロインの抱える問題で長く悩むことは無いし、学園祭に向けての話で長い尺を使うこともない。
また、各話の内容に連続性はあまり無い。数多い出来事から選んで記事にする、日記とさして変わらない。

SMEEの強みは、このピックアップされる話の出来が素晴らしいことだろう。
(ヒロインの新たな一面を見られたり、楽しい日常を味わうことができたり…)
内容が詰まっている割には楽しくプレイできる。
そして、シナリオの締めくくりもこのような性質を崩さずに終わらせる。
そのため、私たちはSMEEのゲームで「大した話ではないけど良い読後感」という満足を得ることができるのだ。

今回もこのように作れば、外れることは無かっただろう。
しかし、『フレラバ』と言うからには、読者に「段階を踏んでいる」という実感を与えたかったのではないか。
そして、段階を踏んでいる表現のため会話パートを利用した。私はそう考えている。
一見「独立した話が並ぶだけ」の作りの中で、ちゃんと「少しずつ近付いている」雰囲気が出ている。
それは会話パートでプレイヤーが自分たちで近付いた証と言えるだろう。

■フレンドパート

本作では(おそらく)「固有イベント」でキャラの一面を見せ、「会話パート」で次の段階へ行くという表現をしている。
そういえば『らぶでれ』にも会話ワードを覚えて使用し、少しずつ固有イベントが発生するという要素があった。
そして、今回の会話パートはさらにこの役割を明確にしている。

公式サイトにある通り、距離が近くなる→表情と会話の反応が変化、という様子をしっかりと感じ取ることができる。
好感度の表現を数値ではなくこういう変化で表すあたりが良いのだ。

会話自体も楽しいものが多く、会話コンプリートを目指したいような作りになっている。
中には告白前からちょっとデレデレしすぎな会話などもあるものの、「早く付き合えよこいつら…」ともやもやするのも楽しい。

個人的には、「反応が良くないから戻って選び直そう」と考えず、どんどん先に進んで欲しい。
元々この会話パートの難易度はかなり低く、わざと選ばない限りバッドエンドへは行かない。
また、反応良くない会話を消化した後に出現する会話が楽しかったりもするのだ。
同時攻略のため好感度を効率よく稼ぐより、各ヒロイン最初から始めてダラダラプレイしたほうが結果的に早いクリアになるのではないだろうか。

■キャラ

『フレラバ』というタイトルは、「知り合うところからのキャラもしっかり友人→恋人という段階を踏むよ」という意味であり、最初に友人かそうでないかは関係ないようだ。
それぞれ主人公との関係性は違うが、ちゃんと『フレラバ』している。

今回の幼なじみは、過去の時間軸での出来事をつまみ食いしながらも現在の時間軸で友人→恋人をやるシナリオだ。
幼なじみゲーとしてはかなり変わっている構成だが、幼なじみの「関係性」を重要視するプレイヤーであれば必ず気に入るはず。

■総評

陽茉莉で大満足。
とはいえ全キャラ素晴らしく、陽茉莉が好きとはいえ他のシナリオもやってみたくなる出来であった。
選択肢の多さに煩わしさを感じる方もいるだろうが、気に入った娘をのんびり攻略して欲しい作品である。

『フレラバ』としてのコンセプトも良い上に日常シーンの面白さも健在。SMEEは本当に良いゲームを出しますね。

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↓ 以下、各キャラについて語らせてください。
(本編中の内容を含みます)

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■理奈
主人公と理奈は既にある程度お互いを知った仲であり、「実はこういう弱さがある」という隠れた一面を推していくのだろうという予測はありました。
結果、共通では考えられないような一面を見ることができました。
とはいえ、(理由付けされていたとはいえ)恋人パートでの甘えぶりにはかなりのインパクトがあり、女友達ポジションを崩さない恋人パートを期待する方々にはイマイチだったかもしれません。
告白絡みのイベントは全キャラ良いけど、理奈とのシーンが特に出来が良いです。
理奈の新たな一面を見られること含めて。

■ゆずゆ
作中で一番変化があったヒロイン。
それも、変わりそうな予感を描いておきながら段階を踏んでいったため、別人という感じはありません。
「こいつ本当は面白い奴なんじゃないか」と感じ取ったのだとしたら、主人公クンはかなり人を見る目がありますね。
ただ、恋人に至るまでにがらっと変わりすぎて、恋人になってからもスタート時点のちょっと乱暴な一面が少し残っていれば良かったのになと、ちょっと思いました。

■岬
他のヒロインとは違い、出会いから恋愛に至るまでの流れを描いています。
高嶺の花ヒロインの本当の一面が明らかになっていき、最終的に周囲の誤解も解こうというシンプルな流れでした。
この話で『何をしたか』と考えると大したことやってないのですが、主人公→主人公の周り→先輩の周りと
誤解を解く相手を変えていき、最終的に主人公と岬のカップルが認められていく過程が良かったですね。

また、このライターにしては珍しく主人公―ヒロイン間で収まらない問題を扱っています。
そのため、他のキャラとの絡みが(他よりは)多いシナリオです。特に不自然なところは無かったように思います。

残念なところは、先輩がちょっと不思議なキャラだったところ。
「なんか変わった人だね」と思わせるよりは「どういう人なんだろう」と思わせるべきなんじゃないかなとは感じました。

■陽茉莉
SMEEではらぶでれ千歳が幼なじみの完成形と思っていたが…これは甲乙つけがたい…。
幼なじみゲーとして見ると、過去の思い出を「その話のネタ」としてのみ使い、お互いの恋心に過去の思い出を持ち込んでいない様子が新しいですね。

呼び名の使い方が特に良かった。
クラスでは皆原って他人行儀な呼び方をしつつ、会話パートでちょっと盛り上がるとつい陽茉莉って言っちゃう主人公。
デートのときにあえて「皆原さん」って呼ぶ主人公。

こうして、うっかり過去のノリが出ちゃうこともあるのだけれども。
全体的に「好きだったことを思い出す」のではなく「また新たに好きになる」というシナリオに仕上がっていました。