オモシロ転入生だって毎日面白いわけじゃないんですよね。でも最初で一目ぼれしてしまうと、おそらくあなたは最後まで読み進めてしまうはず。
◆わるいところ
なんでもありな「ヒーロー部」という場のせいで、目的意識を失っているように思えた。
作品が目指すところの目標が曖昧だから、プレイヤーもどこで気持ちを高めればいいのかよくわからない。
私は「らき☆すた」も「けいおん!」も序盤しか見ていないため、こういう「ふわふわした」(あえて曖昧な表現を使う)作品の楽しみ方がよく理解できていない…のかもしれない。
仮に、ヒロインたちの日常をゆるりと楽しむ作品だったとして。
話の並べられ方や近くに控える目標というのがもう少し整理されていたら、と思うのだ。
いや、たまにイベントのようなもの(演劇とか)はあるのだが、ものすごくあっさりとした描写で終わってしまう。
それがたとえば「へークラスでの舞羽ってこんなヤツなんだ」「ほー多紀さんも可愛いところあるなー」くらいでも、なにか感じるところがあればいいのに。
「二年間の学園生活が楽しめる」…二年間にどんなことをしたい?
「短めの一話完結」…短い話を積み上げていってどんな話にしたい?
コンセプトは面白いのですが、それがもう少し内容の面白さに結実していれば…と感じてしまう。
◆いいところ
…と、批判から入ってみたが、じゃあモチベーション続かなかったのかと聞かれると、そんなことはない。
おそらく、本作があまり楽しめなかった人は上記のような感想を抱くことだろう。
本作のいいところは、一旦プレイし始めるとそのまますんなり最後まで読めてしまう、没頭させてくれる力があることではないだろうか。
序盤数時間プレイした時点では、「最初の劇的なヒーロー部デビューシーンでは大いに笑ったけど、そこからはわりと大人しいシナリオと展開に落ち着いたな」とか、「あれくらいのバカっぽさと面白さが途中にもあればいいのに」といった感想を抱いていた。
…いや、そうではない、そうじゃないんだ。おそらくあのデビューの部分は「転入生の自己紹介」にあたり、その後の日常が「転入生の2日目以降」にあたるものなのだろう。
4人が部室に集まることが当たり前になる頃には、何が目的だとかそういうのはどうでもよくなっている。
強烈な転入生は、あっという間に「私の日常」に溶け込んでいた。
◆しすてむのはなし
どうせあらすじを付けるのならば、再プレイ時に読めるようにしてほしかった。
アニメの次回予告を意識したのかもしれないが、「間があくと忘れちゃう」という部分のフォローにはなっていない。
ショートエピソードの集まりなのだから、各シナリオを読み返しやすく、またあらすじも参照しやすくしてもらいたかった。
細かい指摘ではあるが。
◆まとめ
悪いところを色々挙げてみたものの、なんだか楽しく読んでしまってあっという間にコンプしてしまいましたよ。
変わったエロゲであることは間違いないですが、その変わった仕掛けにも、ちゃんと恋はつまっている。
初登場時からふわふわしまくりで、個別ルートでもどこかつかみどころのない舞羽ちゃんが、個人的にはとってもお気に入りです。
よい作品でした。