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elevenさんの遥かに仰ぎ、麗しのの長文感想

ユーザー
eleven
ゲーム
遥かに仰ぎ、麗しの
ブランド
PULLTOP
得点
90
参照数
1683

一言コメント

設定を十二分に使い切った分校系シナリオは、一つの道筋を各ルートで補完するもので、その統一感は秀逸。エロさ全開のおバカな主人公には爆笑させられることしきり。こんなエロゲは大好きです。一方、完璧系主人公が少女たちを救済する本校系シナリオは、、女性視点を用いてまで主人公を全肯定したその姿勢に感服(悪い意味で)。衛○○○改め滝沢司こと主人公が己が闇を糧とし固有結界『無限の救手』でヒロイン達及び学園をその支配化に置く手腕にはただただ脱帽(若干引いたけど)。その傲慢さはまさに狂気にして凶器、ゆえにこれ最強(主人公を全肯定できることがすごい)。全体的に見ればCG、演出、音楽、システム等調和がとれており、また両者ともシナリオがよく練りこまれていて、まさしく良作といえましょう・・・。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

○世界に羽ばたく力
本校系:みやびとリーダ(従者は孤児)
分校系:ゆうなといえめい(相棒は孤児)
○家族そして世界の開放
本校系:とのこ
分校系:すみか
○主人公のトラウマ発動と救済
本校系:しの、みやび
分校系:ミサキ

本校系と分校系のヒロインたちは設定とテーマこそ似通っていますが、二人のライターは彼女達ひいては主人公にそれぞれことなった回答を用意しています。
(メモ:回答の書き方という点で言えば、本校系シナリオは、肌に合いませんでしたが)
『愛していると言う本校系』
「自分は裏切られた。許せない。自分は救われた。彼らは裏切らない。だから信じられる。そして僕は誰も見捨てない。決して裏切らない」
少女たちの救済のため、本校系主人公のこの「強さ」は必要だったのでしょう。
「愛することが怖い。深く愛して裏切られるのが怖い」
しのしのルートで見せる主人公の「弱さ」は、「決して裏切らない愛を示される」ことで癒されます。
また、みやびルートではリーダの言葉によって、
「最後まで見捨てない誇り」を思い出し、「愛を信じる勇気」
を獲得します。
両者に共通するのは、
彼女達がそして主人公自身が「決して裏切らない愛」を救いの前提にしていること。
むうう・・・。

『好きって言う分校系』
一方、分校系シナリオでは主人公はみさきルートで真の救いを得るに至ります。
主人公のすべてを受け止めた彼女に触れ、彼は泣き、両親の顔を思いだす。
そこにあるのは
「許す愛。裏切られてもそれを許す強い心」
愛を恐れ憎む心からの開放がここにあります。
みさきがこれを成し得たのは彼女だけが、両親から愛情を正しく受けて育ったからでしょう。
これはヒロインたちの救いにも当てはまります。
すみかは「家族」を許し、ゆうなは「世界」を許す。
そして、みさきは、「主人公」を許す。
分校系シナリオの根底にあるのは「許す愛」。
むうう・・・。

「裏切らない愛」
「許す愛」
貴方はどちらを望みますか?