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elevenさんのリトルバスターズ!の長文感想

ユーザー
eleven
ゲーム
リトルバスターズ!
ブランド
Key
得点
95
参照数
2720

一言コメント

発売日にプレイ開始したのにクリアに三ヶ月もかかったのは、各ヒロインルートがちょっと冗長だったりしてあまり面白くなかったため。がメインシナリオは凄かった。泣いた。泣けた。リトルバスターズは永遠だ。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

思ったこと考えたこと疑問に思ったことテケトーに。自分でも未解決なところいっぱい。

ゲームの完成度としてはやっぱり群を抜いていますね。
音楽、CG、声、演出、システム等高いレベルでまとまってストレスを感じません。
ただ、リン役の声優さんをリキとササミにも使っているのは??な印象。
主役のリキ君はいつものオレ様系主人公じゃなくて新鮮でした。
物語はループ物ですが、ループするごとに共通ルートなどでこまごまと変化が見られる演出は読み手にきちんと物語の手がかりをくれているし、ゲームとしても飽きさせない作りになっているかと。
野球のミニゲームやバトルランキングなども新しい試みで面白かった。こういうことはどんどんやってほしい。
シナリオ面は、やっぱりクラナドほどの破壊力がなかったかなと。
ただまあこれは攻略するのに間を空けすぎたせいかもしれませんけど。
しかし、リン(メイン)シナリオ以外のヒロインシナリオはもうちっとどうにかならなかったのかと言いたいです。
ハルカは面白かった。というか分かりやすかったから理解しやすかった。
クドはいらんギミックばっかでちと退屈。最後の出来事は後々解明されるんだろうと思いスルーできた。まあ言いたいことは理解したと思う。
クルガヤもえがった。最後は??だけど、それはこの物語の根幹に関わることっぽいからスルーできた。というかあれは議論させるためにわざとああしたように感じがするなあ。
ミオはトリになったあたりからは意味不明だったがそれでもそこらへんは面白かった。そこにいくまでが眠かった。
コマリは、この先おそらくメインルートにいくんだろうけどほんと面白いの?という不安でなかなか進められなかった。リキが絵本を製作するのはいいんだけど、その他は脳内補完ばかりで退屈だった。

まあ全体的に冗長すぎ。
ただ意味不明だから冗長だと感じたのかもしれないというのはある。それが冗長ということか?
とにかくメインにいく前に各ヒロインたちのルートを攻略することは絶対必要なことなのだから、もう少しなんとかしてほしかったなあ。

それでもメインルートは泣いた。
最後はさわやかで救われた。
めでたしめでたし。

では、シナリオについていろいろテケトーに。

まず、ヒロインたちの虚構世界での役割。彼女達は何も知らなかったのか?
彼女たちは知っていはず。でなければ、虚構世界を構築できない。

*ただし、クルガヤルートで彼女はリキに対し「この現象がなんなのか自分でもよくわからない」というような発言をしている。これは、リキに真実を知らせないための方便か、はたまた彼女自身があのステージ上では己の記憶を封印していたのか?

虚構世界はリキとリンをのぞく残りのリトルバスターズの力によってキョウスケを中心に創り上げられた世界。
だとすると虚構世界で問題解決したからこそ、事故後彼女たちは現実世界でも問題を解決させて、幸せになり、そして彼女たちは強くなった。
と仮定した場合、矛盾が生じる。
・事故前の彼女達は自身の抱える問題が解決しておらず「弱い」。故に虚構世界を構築に足る力を有していない。
・またこの場合、彼女たちがリトルバスターズに参加していないことも考えられるわけで、その彼女たちがキョウスケの呼びかけに答え波紋の世界でリキやリンを助けようと思うわけもない。

逆にいうならば、
・虚構世界を構築するにはすくなくともある程度は「強さ」が必要。
・リキやリンを救いたいと彼女たちが考える程度にはリキやリンしいてはキョウスケたちと仲が良いはず
・何よりもハルカの姉「カナタ」の事情やコマリやクドの事情は彼女たち自身だけでは知りえない「外部情報」である。
では何故彼女たちは(キョウスケを含めてもいい)それを知っていたのか、それはすでにその外部情報を手に入れていたということではないか。
とすると、彼女たちの問題はすくなくとも修学旅行前までにはある程度の解決をみていたことになる。

すなわち虚構世界で示されたヒロインたちのトラウマ及び解決方法が「正しい方法」であるならば、それはすでに現実世界で経験済みであるということではないか。
経験済みであるからこそ、虚構世界に外部情報を現出させることができ、そしてリキを鍛えるためのステージを用意できたのだろう。


では、現実世界において、リン以外のヒロインたちの「問題解決」にリトルバスターズは関わっていたのだろうか。
関わっていたのだろう。
なぜなら、深く彼女たちと関わっていたからこキョウスケは彼女たちを含めたリトルバスターズの意思をもって虚構世界を構築することができたから。
なによりも、ヒロインたち自身が他者を救う強さをこの時点手にしていなければ虚構世界の構築・維持さえままならないはず。
それにキョウスケがリキを強くするためにリトルバスーズを作る際、ヒロインたちを含めることを「当然のこと」であると断言していることから、リトルバスターズにとってヒロインたちが「すでに」大事な仲間であったのは疑いようがない。
ただし、問題解決は皆で行ったためリキ自身は「強さ」は得ていないと思われる。
この問題解決を虚構世界でもう一度リキ自身の手で行わせることにより「リキを強くする」ことがキョウスケの計画。

では「ヒロインたちの問題はすでに解決済み」であるとしたがはたしてそうか。

クルガヤ・・・もっとも自身の願望を現出させたのが、クルガヤ。
彼女には二通りENDがある。
END1・・・事故後の現実世界で皆が助からず、クルガヤ自身も皆の記憶を失っている? 
あの場面は虚構世界とも思えるが、虚構世界は「一学期」のこと。ゆえに虚構世界ではない?
END2・・・事故後の現実世界で皆帰還。あの世界も虚構世界だとするとクルガヤは虚構世界を構築するほど強いとはいえないはず。
ちなみに、クルガヤが修学旅行に参加していなかったとも考えられる。がしかし「おねーさんがそんな楽しいことに参加しないわけないじゃないか」だろうと思う。
というか、玉は八個。あの場にいなければこの奇跡に参加できはしまい。
クルガヤだけは問題解決していなくとも、十分強くはあるが、救うことを前提にした虚構世界を構築するには問題解決し答えを得たクルガヤでなければならない気がする。

ミオ・・・おそらく完全に解決済み。ただ解決方法は虚構世界のものとはかなり異なるはず。あれはリキ自身で導いた解決方法。
ハルカ・・・完全にとはいかないまでもすくなくとも修学旅行前までにはカナタの事情をある程度知っていたはず。そのことをリキは知らずにいたため、修学旅行後の夏休み明け「知らない間に仲直りした」みたいなことを述べるのかも。
*この発言からもわかるように、またクルガヤの寂しそうな笑顔の意味がわかっていないことから、リキは虚構世界での問題解決・恋愛のことはやはり覚えていない。覚えているのはリフレイン以降のみか?
コマリ・・・この子もおそらくは完全に解決済み。解決にはリンがリキの役割を果たしていたのかもしれない。それもおそらくは初期に。ゆえにリンと一番親しい。
クド・・・完全解決にいたらずも、修学旅行に参加できていたことから、また荷物に破片があったことから、一度故郷に戻り、母の生存を確認後再び一人で帰国。・・・マジ?

リン・・・問題は解決しつつあった。ヒロインたちと仲良くなり積極性を手にし始めていた。がリンは事故に会い悲しいことを忘れるために、ヒロインたちのことも忘れる。
ゆえに虚構世界では経験値がない状態でスタート。
それとリフレインでリンはリキほどの強さを獲得していないように見えるが、これは以下のような感じではないか。
1、現実世界である程度の強さを得ていたが事故により「忘れる」。
2、虚構世界開始時。経験値ゼロ。リキとともに日常を営むことにより少しずつ忘れたものを取り戻していく。
3、キョウスケの強引な方法により、リン壊れる。1よりもマイナスの状態に。
4、リフレインでリキにより少なくとも2の状態にまでは回復される。

リンにとって重要なのは、強さを獲得することでなく「思い出すこと」。悲しくても、忘れてはいけないことを思い出さなければならない。それがリンにとって強さを得るということ。
だからこそリンはラストステージで忘れていたものを取り戻し、本当に大切なものに気づき、リキとともに現実を救うに足る力を獲得するのではないか。

「忘れていることを思い出す」これはリキも同様だろうが、キョウスケ並みの強さを求められている以上、思い出すだけでは足りない。ゆえに彼には試練が待っている。

まとめというかイメージ

第一ステージ(共通ルート)→野球の試合まで
このステージでリキは、各ヒロインたちが用意する専用ステージのどのルートをとるかを決定する。
リキはここで誰も選ばずに日常ENDを何回か経験する。いわゆる準備段階。
*同時にリンにも経験を積ませているがここでは言及しない。

第二ステージ(リンルート)
リキが一番はじめに選ぶであろうヒロイン。
ただし、ステージ監督はキョウスケのため、リキの力量不足を指摘し、先にはすすませない。
ここでリキは他のヒロインに目を向ける。

第三ステージ(各ヒロインルート)
各ヒロインとキョウスケが監督・脚本のステージ(よって各々の願望も再現されたりする)
ここでリキはヒロインたちが用意した問題を解決していき強さを得ていく。


○ハルカ→現状維持を打破する強さ。
○クド→願えば叶う心。あきらめないこと。


○ミオ→「俺たちを信じるな。自分を信じて進め」。信じる心。世界法則を突破する心?

○クルガヤ→ここが虚構世界であることの示唆。このルートでリキが強さを得たかどうかは不明。
クルガヤだけは、キョウスケの意思や皆の意思を共有しつつ無視し、虚構が虚構であることを受け入れ、それが終わることも受け入れつつ、それでもリキを求めてしまったが故。
このルートで登場人物たちが記憶を喪失していき、また雪が降るのは、キョウスケが世界を崩壊させたためかもしれない。
ある意味、一番のオトメ思考の持ち主であった。

○コマリ→「貴方の目がもう少し、ほんのちょっとだけだけ見えるようになりますように」これがこのルートの全て。

第四ステージ(リンルート)
このステージでキョウスケはリキ及びリンに試練を与える。
ここを乗り越えれば、リキとリンはキョウスケが考える「強さ」を得るはずであった。
が、強引すぎ、失敗。*ここでケンゴの離反。ただし、世界維持には協力。
失敗するも、リキを信じて、リキに問う。
「これでいいのか?」
リキはここで喪失の痛みに耐え誓う。
「次は絶対強く生きてみせる」

第五ステージ(リトルバスターズルート)
このステージでキョウスケは限界を迎えつつある虚構世界の維持にのみ専念。現実世界でもリキを信じてあきらめていない。
各ヒロインはすでに役目を終え消えているため、世界を維持しているのはキョウスケとケンゴとマサト。

○キョウスケ→リキを信じて、虚構世界に干渉せず。
○マサト→リキそして仲間を信じるが、中立。
○ケンゴ→リキとリンは弱すぎるため、また自身の願いから虚構世界の存続を望む。けれど。

リキ、リトルバスターズを再度結成するために動く。
同時にリンの回復も行う。
そして虚構世界からの脱出。
この時点でキョウスケは一度失敗はしたがなんとかなったと考えたのだろうが、リキはキョウスケが考えている以上に強くなっていた。


第六ステージ(現実世界)
今まで得た強さでリンと二人で生き残る。
眠るリキにキョウスケは最後のアクセス。
「これでいい。あとは頼む」
ここで、リキは、強さを示す。
「まだだ。皆がまだ助かっていない」
それは無理だ。一人では無理だというキョウスケにリンが自分も居ることを、逃げないことを宣言する。
この時点で、リンはすべてを思い出しており、かつて現実世界で手に入れた強さ+虚構世界で得た強さを手にしている。

第七ステージ(さらに強くなるべくリキとリン己の自己虚構世界へ)
リキ→喪失の恐怖よりも出会いの喜びを示し、自身の弱さの象徴であった眠り病を克服。
リン→外世界の恐怖を克服し、コマリに誓う。

第八ステージ(再び現実世界へ)
リキとリン、すべての経験と強さをもとに皆を救う。


ラストステージ(現実世界)
リトルバスターズは永遠だ。
修学旅行のやりなおし。






ケンゴと古式ユカリのことメモ書き

まず、古式ユカリは現実世界ですでに死亡しているかもしれないということ。そしてそれはケンゴにとって悔いの残るできごとであった。

・ケンゴは虚構世界でずっと過ごすことを望んでいた。リキとリンを鍛えることに賛同はしているが、皆との永遠を望んでいたふしがある。それがよくないことであると認識していても。故に古式ユカリの現出も許可している。
・屋上は何故閉鎖されているのか。現実世界で過去よくないとがあったためではないか。
・古式ユカリはケンゴにとって誰にも犯されたくない領域。元気づけることができなかっただけで?
・コマリルート、コマリ兄の墓参りでリキはケンゴらしき人影をみる。ケンゴは誰の墓参りをしていた?
仮に古式の墓参りだとすると矛盾が生じる。虚構世界内で古式は生存している。にもかかわらず虚構世界内で墓参りするのはおかしいのでは?虚構世界内で古式の生存を良しとしているケンゴがそんな真似をするだろうか? それとも虚構を良しとするも、現実を受け入れる強さを持つがゆえに死者をある意味冒涜している現状に対してのケンゴなりの侘びであったのか?
・虚構世界での古式の自殺騒動で「俺はそんな子供じゃない」、「キョウスケが解決している」などの発言から虚構世界での古式は死亡しないとわかっている。
 それでも、ケンゴは助ける。キョウスケが古式を死なせないはずだとわかっていながらもケンゴは助けた。それは何故か?
・古式自殺騒動後のケンゴの豹変。「武」に対する思いの変化? やっと「武」を横において置いて皆と遊ぶことができるから?ここだけはようわからん。
虚構世界で古式を救おうとも現実では救えなかったことに対する滑稽さを感じていたか? だがそのような負の感情はなくむしろ「ふっきれた」ようにも思える。

現実世界でのつながり。
死亡したかどうかはともかく古式の自殺を引き金にコマリのトラウマも発動したのかもしれない(これはただの想像)