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elevenさんのChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-の長文感想

ユーザー
eleven
ゲーム
ChuSingura46+1 -忠臣蔵46+1-
ブランド
インレ
得点
90
参照数
632

一言コメント

設定に矛盾が散見されるものの忠節を貫いた武士の生き様と少年の成長を軸に最後まで物語を描ききったのは見事。久しぶりに女の子たちだけが主役ではない少年少女たちが主役の物語に出会えたこと、作り手には感謝したい。ただこれは、先達が作り上げた「忠臣蔵」という物語あってこそのこの面白さであることは忘れてはならないことだろう。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

郡兵衛が画面に出てくるだけで笑ってしまうんです。これ僕だけでしょうか?





(成長の見込めない)貧乳はヒロインじゃないんだ、ごめんな。

色々言いたいことはあるけど、この作品の一番の問題点はずばりこれだと思うんだ。

・右衛門七専用ENDがない
・つか、刃・忠勇義烈編のOPもねーじゃねーか!(假名手本忠臣蔵編のが兼ねてる…だと!?)
・ラストバトルで主人公の背中を押すのが、小夜という
(これにはマジで吃驚した。この場面は今までのヒロインが背中を押すのかと思ってたから)

もう、なんなんです、この扱いの悪さは!激おこぷんですよ。
仇華・宿怨編の前に、右衛門七ルートで一本ちゃんと「忠臣蔵」やってくれよぉおおっ。


……まあ、ほんと言うとわかってた。
この主人公、『パルフェ』の明日香押しだもんな。つまりロリ巨乳押し。
そら右衛門七じゃダメだわ、もう成長止まってるし。
ループするごとに恋に落ちるヒロインが年若くなってロリっていくけど、皆、巨乳だもんな。
最後の最後でこの先の成長が見込める小夜に落ち着くのはちかたないね。
ったく、製作者はすげー伏線用意してくれたもんだぜ。


閑話休題。
假名手本忠臣蔵編で「忠臣蔵」という物語を語り、江戸急進派編で江戸からの視点を見せ、
百花魁編で物語を一旦締めくくる流れは、とても「美しかった」と思う。
そして、仇華・宿怨編で「忠臣蔵」に別の解釈・考察を提示し、刃・忠勇義烈編にて
エンタテインメト的大団円へと物語を結実させたことに、なるほどとは思ったしこれはこれでアリかなとも思った。
思ったのだが前三章に比べると感動は薄かったと言わざるを得ない。
仇華・宿怨編では、主人公が一魅の言葉に翻弄されるわけだが、お前は今まで何を見て来たんだと突っ込みを何回入れたか分からないし、
刃・忠勇義烈編では、終盤の説明台詞で済ませるあたりに、作者体力尽きたか?と余計なことが頭をちらついて物語に集中できなかった。
いや、てゆーか、右衛門七の江戸下りで小夜との別れのシーンに号泣した僕の感動返せコラとかね。

まあそんなわけで、後二章の練りこみ不足さえなければ僕としては100点付けたかった、実に惜しい作品。
今後はアニメ化して、赤穂市とタイアップしてくれると面白いですね! 萌え化の波が赤穂市に襲い掛かるYO!!

ちなみに、タイムスリップって言ってるけど、主人公が女の子が刀を佩いて侍してることに疑問を抱いてることから、これ過去じゃなくて『恋姫†無双』で言うところの
外史みたいなもんじゃね? みたいな疑問もあるにはあるのだけど、この点は別段減点対象じゃないことは明記しておきます。
こんなとこですね。ではでは、48時間楽しかったぜい!


あ、あと、最後に。この作品、声優さんが皆すげー良い演技してて、あの声優さんってこんな声出せるのかーとか、
これは当たり役や!ってのがプレイした人それぞれにあるんだろうけど、僕は御苑生メイの演技にびっくらこいたよ。
なんやあれ、迫力ありすぎてちびっちゃったよ。声優ってすげーな!



追記(2014/1/9)

この『プラスいち』という作品、私の中ではどう評価してよいのかいまだ定まっていない作品だったりします。
というのも、こういった、史実として実際にあった出来事。そして物語として数百年かけて磨き上げられてきた『忠臣蔵』という作品を
乱暴に云えばただ単に登場人物たちを女性化しただけの(ここの部分には多くの人が異論を唱えるでしょうが)この『プラスいち』という作品を
どこまで「製作者が作り上げたひとつの作品」として評価すればよいのか答えを出せなかったからです。
たとえば、『恋姫』シリーズや『三極姫』『戦極姫』シリーズなども史実の武将を女性化したゲームではありますが、
これらは一本のゲームとしてゲーム内に収めようにもその史実や原典が膨大であるがために、エピソードの取捨選択が行われていて、
かつ歴史のifを盛り込み「ありえない結末」を向かえることで作品として成り立っているわけですが、これらに対して『プラスいち』では、
『忠臣蔵』という物語を丸ごとゲームの中に収めています。江戸時代に起こったあるひとつの事件。そしてこの事件を元にして成った物語。
数は多いけれど、その長さは三国志などとは比べるまでもなく、短い。短くそして結末まで美しく仕上がっている。
そんな物語の登場人物たちを女性化しただけの作品が面白くないわけがない。
たしかに女性化にあたって上手く料理してはあります。その点はおおいに評価すべきところでしょう。
しかしだからといって、物語としての面白さをあまりにも『忠臣蔵』に依存しすぎているのではなかろうか? と考えてしまうのです。
これもまた『忠臣蔵』という物語のひとつの解釈で、これはこれでありだとは思うのですが……。
そしてこう考える理由はもうひとつあって、それは製作者がゲームに盛り込んだオリジナルのシナリオ部分が
はっきりいって『忠臣蔵』に並べると随分見劣りする出来栄えだったからなのです。
同人だと凄いが、オリジナルだとぱっとしない人の典型っぽくて、まあ、ぶっちゃけるとこのオリジナル部分のせいで製作者の力量を
信頼できなくなってしまったわけです(ゲームの製作者としてではなく物語の書き手という意味で)

とまあ以上のことから、いざ評価しようとすると「うーん?」となってしまうのです。
上の感想と随分テンションが違うのは、上は逃げの手を打ったからですごめんなさい。
これ原作付きで漫画描いてる人とか同人作家さんとか二次創作者すべてに喧嘩売ってるようにも受けとられかねないので
書くかどうか迷いましたが自分がすっきりするために書いちゃいました。
ゲームとして演出や歌などほんと熱く作りこまれていて文句はないんですよ?
そこのところは間違えないでください。以上。