ErogameScape -エロゲー批評空間-

dysonさんのラブピカルポッピー!の長文感想

ユーザー
dyson
ゲーム
ラブピカルポッピー!
ブランド
SMEE
得点
79
参照数
595

一言コメント

サブキャラのポテンシャルが高いのか、メインキャラの出来が良くないのか。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

〇涼花

 他のキャラと比べると圧倒的に個性が弱いというか、存在感が薄く感じるキャラクター。学年首席とされる学力を持つものの、それを活かすようなシーンは無い。実妹という個人的に好みではない設定も相まって兎にも角にも刺さらなかったという印象。告白シーンそのものは悪くないんだけど、恋愛感情への変遷の描写が主人公共々足りないので薄っぺらく見える。SMEEの実妹だし、周囲からは祝福されることは予想できてたけど、実妹であり世間からは祝福されない関係みたいなことは意外にも強調されていたように思う。ドロドロしたのが見たいわけじゃないけど、兄と性交渉(近親相姦)してもいいように、こっそりピルを仕入れて飲んでいたって部分は妙に生々しくて好き。

 公式サイトの恋愛ポイントは「お兄ちゃん至上主義」→「段々と理性より煩悩が上回り……」
お兄ちゃん至上主義はともかく、理性より煩悩~みたいなシーンあったっけ?



〇綾子

 攻略対象キャラ内の唯一の社会人にして年上。告白シーンは自分を卑下しまくる綾子と、男として甲斐性を見せる主人公のやり取りがとても好き。だからこそここはCGが欲しかったが。告白シーンもさることながら、初体験の際も(異様に小さい)バスタオルで必死に身体を隠していたり、そのタオルを取られて恥ずかしがったり等、年長者ながらも初々しい反応を見せる点もグッド。全体的に短いながらも中々に刺さる要素があり、それなりに満足度は高かった。

 公式サイトの恋愛ポイントは「疲れたお姉さんを癒してあげる」→「互いに幸せを噛みしめる日々」
癒してあげていた感じはそこまで強くなかったように思うが、互いに尊重し寄り添っていたのは間違いない。



〇美卯

 理由があったとはいえ互いに名前呼びして欲しかった。個人的に名前呼びはこういうゲームにおいてかなり重要な要素だと思っているので、それが無く終盤まで進行したのは残念。しかも理由もなく呼ばないのではなく、呼ぶのを拒否した上でその理由を明かさないまま進行し、そのままエロシーンも全て消化してしまうので非常にモヤモヤした。名前呼びは許してくれないが距離はやたらと近いなどのちぐはぐな印象により、個別より共通の方が可愛かったというのが正直なところ。悪い意味で予想外だったというか期待外れ。また、共通で見せた「暗いところが怖い」という設定は忘れられたようにそれ以降使われることはない。それどころか最後の方で何食わぬ顔して夜に流星群を見に行く始末。怖いとは一体。ついでに言うと共通でのガチスポ大会で実は足が速いという設定を突然披露するが、その辺の理由も特に触れられることはない。全体的に設定が雑である。

 公式サイトの恋愛ポイントは「一度落ちればとことん堕ちる」→「惚れた相手には距離感0でバグりまくり!」
やたらと一緒に居たがるなどバカップル感は出てたけど、適度に理性は残っていたように思うので、終始バグり散らかしていたという印象はなかった。



〇たんぽぽ

 こういうゲームで裏表がなく純粋に好意を伝えてくるキャラクターって結構珍しい。少なくとも自分はあまり見たことがなく、それゆえ新鮮に映った。それでいて抜けているように見えて思いやり、恥じらいの心はしっかりと持っていたり、雷が苦手だったり、ほんの一瞬ではあるが焼きもちをやいたりというギャップも素晴らしい。シナリオは友達想いの面が描かれており、ただの天然少女ではないことが強調されていた。うさぴょんを渡すシーンは読んでいてグッと来るし、サブに据えるには色々と勿体ないキャラクター。もうちょっと読んでいたかった。

 公式サイトの恋愛ポイントは「どストレートな好意」→「最初から最後まで直球勝負!」
コンセプト通りではあるが、描き切る前に終わってしまったようにも感じる。



〇珠祈

 他キャラと比べるとキャラの掘り下げ描写がしっかりなされていたように思う。シナリオ面も見たいもの(寮生との絡みなど)が豊富に描かれており、満足度が高かった。甘え姿もさることながら専用のボサボサヘアーの立ち絵なども大変よろしい。それにしても声がとても素敵で、お気に入りボイス機能があれば間違いなく活用していただろう。一点だけ挙げるとすれば最後まで名前呼びしてくれなかったのだけは少し残念。

 公式サイトの恋愛ポイントは「内に秘めた甘えん坊」→「主人公にだけ、心からの甘えた姿を!」
ほぼコンセプト通り。しかも個別に入ってみるとなんと甘えるだけではなく甘やかせる母性まで披露。至れり尽くせりである。



〇希未

 ひたすら主人公に一途でぐいぐいアプローチをかける様は見ていて面白かった。個別に入ってからはCGを用意してのしっかりとした焼きもち描写も素晴らしい。しかし告白して即エッチしたり、途中で1年が経過してタメ口に変化したり懐妊したりと全体的に急ぎ過ぎというか飛ばし過ぎ。年単位で経過するのはエピローグだけでいい。ついでに実は語学に強く、エピローグも外資で働いていることが明かされるのだがどうにもイメージに合わない。共通の時点で英語が得意な様子でも見せておけばまた違っただろうに。他にもライターのクセなのか、会話のキャッチボールも見ててヘンな感じがするなど色々と期待外れな部分も多し。ちなみに、共通であれだけ恋愛に必死だったのに別キャラのルートに入っても失恋する様子はない。まあこの辺はそういうの見たくない人向けの配慮とも取れる。

 公式サイトの恋愛ポイントは「恋に必死な女の子の可愛さ」→「恋愛が成就すると、それまでのアプローチが黒歴史になったり……?」
ちゃんとコンセプト通り。黒歴史化についても結構掘り下げられる…というかネタにされる。



〇主人公の名前(愛称)呼びについて(主人公デフォネーム)

 ・涼花  :お兄ちゃん、兄さん
 ・綾子  :(なし?)→哲也くん
 ・美卯  :八乙女
 ・たんぽぽ:ままりん→だーりん
 ・珠祈  :八乙女さん
 ・希未  :八乙女さん→哲也さん

 ※主人公→ヒロインは個別に入ると全員愛称で呼ぶ
 
 名前(愛称)呼びって個人的に重要な部分だと思うのだが、呼び方を変える経緯まで含めてしっかり描かれていたのはたんぽぽくらいである。涼花はそのままで文句ないし、綾子も違和感はなかったのでいい。希未は呼んでくれるのはいいが、回数が極端に少ない上にいつの間にか呼び方が変わっているのは残念。美卯は前述のとおりだが、珠祈は一切触れられない。主人公はちゃんと愛称で呼んでいるのに。キャラゲーならこういうとこちゃんとして欲しいと思う。現に過去作ではしっかりと出来ていた部分のはず。



〇他

 共通Aルートにて夜の学校のグラウンドが映るシーンがあるが、どういうわけかガチスポ大会の背景を暗くしただけのものを流用している。飾り付け等がずっと放置され続けてるのは流石にあり得ないだろう。
 フキダシは特に面白みはなかったかなと。わざわざクリックしなければいけないのが面倒だし、何ならクリックせずに最初から見えるようにしておけば良かったのでは。
 エロシーンのクリックモードは案外悪くなかった。強いて言うならお知らせもなくいきなり始まるので、クリックできる状態であることに気付きにくいくらいか。

 絵柄はとても好み。正直これまでのSMEE作品の中ではトップクラスのお気に入りである。
 OPは珍しい電波?系。繰り返し聴いていると意外とクセになってくる。
 全てではないが、サブ、モブ含めしっかりと魅力的なキャラクターは存在する。特に要所要所で出てくるモブ寮生達がとてもいい味を出しており、女子寮務めの賑やかさは彼女らが居てこそのものだったと言えるだろう。



〇まとめ

 共通は面白かったのだが、一方で個別は物足りないと感じた作品。キャラによっては魅力を存分に描き切れていないように見えることが全体的に勿体ないと感じた。共通で親交を深めるエピソードのあるキャラは比較的違和感が少ないが、どのキャラも個別に入って割とすぐに恋人同士の関係となってしまうため、先述の涼花などはプールデートしただけで恋愛感情まで進むように見えてしまう。SMEEお得意のバカップルも、キャラにもよるが今作は控えめであったようにも思う。
 総じて、もっと尺と丁寧な描写が足りていれば高い評価が得られただろう作品であるとは思う。しかし個人的には好みの絵柄と、充分とはいえなくとも魅力的なキャラクターのいる作品であるとも思うので、それなりの評価はしたい。



クリア前キャラ評価
涼花<美卯<綾子<たんぽぽ<珠祈<希未

クリア後キャラ評価
美卯≦涼花<希未<<<綾子≦たんぽぽ≦珠祈