不満がないわけではないが概ね満足。
以下思ったことを書く。
・戦争が題材だがダークファンタジーと呼べるほど殺伐とはしておらず、要所でギャグやらラブコメやらが展開される。良くも悪くもギャルゲー感はある。
・物語上仕方ないとはいえ登場人物に隠し事が多すぎる。大した隠し事がないのはミリィやレイリくらいで、あとは物語の要所要所で誰かしらの暴露大会が起きている印象。
・レイリルートは復讐の話がメインかと思いきや、そっちは濃い背景があったわけでもなく実は勘違いでしたーといった具合に軽く処理されてしまう。うーん肩透かし。
・ソフィアルートは題材が題材なのでサブキャラの死者数が多い多い。にも関わらず幕引きは非常にあっさりとしたもの。前線に立つ話がメインではないのだから仕方ないとはいえ、もうちょっと激戦であった様子とか苦労とか描いても良かったんじゃないの。あとソフィアの足が悪いのはフェイクでしたってのは読めすぎる。ストーリー中で足について触れている機会が少なすぎて伏線としてあまりにお粗末。
・ミリィルートは身分の違いから恋を諦めるかどうか迷う描写があったけど、何か起きるでもなくただ会話したらあっさりと迷いが晴れてしまう。もうちょっと苦悩してもよかったのでは。
・ミリィに主人公の血を飲ませて記憶を取り戻させるシーンは好き。記憶を取り戻したミリィがどうするのか、正直ここが一番読んでてワクワクした。まぁ主人公がミリィの母親を暗殺していたってのは先が読めてしまったのだが。
・雲については結局しっかりと描写されるでもなくディザスター含め放置。全てを解明しろとまでは言わないけどもやもやしたものは残る。
・最後で紗衣奈を生かす必要あっただろうか?憎しみの連鎖がどうとか言ってたけど紗衣奈の親族がいるわけでもないし、とどめを刺したほうが後腐れなく終わったような。他のルートでは死ぬ紗衣奈を生存させるのはこれしかなかったんだろうけど、他ルートとの差別化を図りたかっただけか、主人公の能力設定を使いたかっただけにも思えてしまう。
・紗衣奈についても同情しにくい。最後の最後で真実と苦悩を明かされるが、いかんせん紗衣奈目線の掘り下げが足りていないので人類の殺戮に至る理由としては描写不足。ついでに裏切るシーンの死体偽装についてもよくわからなかったし。
・ソフィアの耳と尻尾に触れろよ。耳については序盤でレイリが触らせてもらうというシーンがあるがそれだけ。せっかく他種族にはない器官なのに、エロシーンでもそれ以外でも全く触れないとか完全に飾りでしかないやん勿体ない。
・戦闘シーンはありきたりな「覚醒して形勢逆転」や「増援により窮地を脱する」みたいなものに殆ど頼っていなかったのは高評価。
・誤字脱字はそれなりに散見される。ボイスと異なる文字が入り込んでる部分がある他、ソフィアルートではスルツキーのことを「スルスキー」だの「ツルスキー」だのやたら間違えてる部分もある。人名を立て続けにミスるのはちょっとどうなの。
・絵は美麗。エロとの親和性が高くない世界観だがエロそのものの質は悪くない。ただソフィアとレイリはエロ1回目と2回目の間が短いのでちょっとテンポ悪く感じた。
・「アンラベル・トリガー」のタイトル回収はちょっと弱いか。大事なシーンで使われてたとはいえクライマックス手前であったのでやや印象が薄くなってしまっている。
・自分はハピエン厨ってわけではないけれど、(一応の)ハッピーエンドを迎えたことは個人的に評価したい。ダークファンタジーならビターエンドが似合うと思うけど、本作はそこまで暗くもないので。
まとめとしては、ストーリーは巧妙な伏線で驚かせるということもなく、涙するほどの感動を味わえるというものでもない。にも関わらず先が気になって一気に読み進めてしまったのは、世界観設定やキャラクターが丁寧かつ魅力的に描かれていたからだろうと感じる。
中だるみせずに読み切れるというのは個人的になかなか嬉しい。不満がないわけではないが、総じて概ね満足のいく作品であった。