文句一つ無い神作。
ヒロイン3人ごとに本校系、分校系と分け、ライターも別々と言う点が非常に上手く生きているPULLTOPの傑作である。非常に精巧で欠点を見つけられず、反面非常に多くの長所があることが、減点式でも加点式でも、100点を付けられる数少ない作品になっている根拠点である。
本校系では、修羅場も少なく、ゆったりと楽しめ、それでもって日常シーンを楽しませている。修羅場を作って楽しませるよりも、こちらの方が難易度は高いと思われ、ライターのレベルの高さを感じることが出来る。
一方、分校系は日常を主体に流れながらも、細やかな伏線が張られており、それらもしっかりと回収されていることから、よくできたミステリーのようでもある。物語に劇的な要素を求める方は、こちらの方が楽しめると思う。また、脇役を引き立てて、ストーリーに彩りを与えている点もとても良いと思う。
ただ、この作品に100点を付ける一番の理由は実は立絵だったりする、どのゲームにも1、2人失敗してるキャラがいるものだが、このゲームはそういった失敗が無い。その上、表情変化をとても細かく描いているため、ユーザーの感情移入に1役かっている。
何だかんだプレイ時間の9割がたは立絵と接しているわけで、ここのレベルの高さが他の要素全てを高めてくれると言うことを、改めて思い知った感じです。
以下、各々のルートについて
みやびルート
由が出てくるのはこのルートだけ。何気に良い味を出している名脇役なので、他ルートに出てこなかったのは残念。逆に彼が出ている分、他ルートよりワイドな味付けが出来ており、完成度は高く仕上がっていると言って良い。泣きゲー要素が最も入ったルートであるようにも思う。
殿子ルート
ヒロインそれ自体は中の人の遠山さんはすごく良い声を出しているし、絵、設定も良いのだが、ストーリー自体は残念。特に後半はご都合主義全開だったので、もうちょっとしっかり作ってもらいたいなと思ってしまった。
梓乃ルート
全編を通して起伏がしっかりあり、かなり楽しめた。喜怒哀楽のバランスが取れているとも言えるだろう。対人恐怖症という設定を生かしつつも、類似したキャラと差別化した、良シナリオである。
栖香ルート
自分的には最良のルート。他のゲームまで視野を広げても、このルートを超える物は今のところ見つかっていない。
一番の評価理由は、エロゲーであることを非常に上手く利用している点。ストーリーだけでなく、かといってエロだけでもなく、2つを上手く織り交ぜてストーリーを進めていく手法は非常に高く評価できる。
ヒロイン自体も中々良く作られた萌えで、ストーリーの形態に最も良くマッチングされていると言えよう。
美綺ルート
分校系は他2人のシナリオの出来が良いので、正直見劣りしてしまうが、ルートそれ自体は無難に作られているように思う。相棒と恋人と言う着眼点は良かったと思う。
邑那ルート
非常に良く出来ている。ただし一気に伏線が解消されていくので、最後にプレイしないと後悔する事になると思われる。
このルートも栖香ルートと同じく、エロとストーリーを上手く用い、物語を展開していく点について、高く評価できる。両ルートの差はヒロインの差ぐらいなものなので、そういう意味で残念だったと言えなくも無い。