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dragonsvictoryさんのカタハネの長文感想

ユーザー
dragonsvictory
ゲーム
カタハネ
ブランド
Tarte
得点
85
参照数
406

一言コメント

非常によく作られているが、ところどころ稚拙なのが本当に残念。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

ワカバ編、アンジェリナ編、ココ編と3つのルートがあるが、本当の歴史を暴くという点で1つのルートでは足りないため、3つで1つのルートと見るのが妥当なのではないかと思う。そういった意味で、他のレビューのように一つ一つのルートについて感想を述べるのではなく、1つのルートとして感想を述べたい。

この解釈だと、ワカバ編のクロハネが終わるまでで大方の世界観を理解させるという役割を持っているように思われるが、ここまでの流れは100点を付けるに足りる、素晴らしい出来であったように思う。クロハネは終始緊張感のある物語であるが、その中にシロハネで登場したココを持ってくることで、二つの物語を繋ぎながらかつシロハネのゆるりとした空気をスパイス的に持ち込んでいることは正直驚愕である。

ただ分からないのは、ワカバ編とアンジェリナ編の存在意義である。1つの劇を完成させるための旅という要素があるため共通ルートが長いのは分かるが、個別ルートがあまりに短く拙い。個々のルートとしての印象を上げるなら前者ならセロとワカバ、後者ならアンジェリナとベルの描写を増やして恋愛ゲーらしさを出すべきだし。このゲーム自体の完成度を高めるのであれば、伏線解消の場を3ルートにある程度は均一に割り振らなければならないと思われる。あとはクロハネとシロハネの登場人物の関係に関する設定をもう少し作り、それを各ルートに反映させてやるのも1案だと思う。

ココ編はクロハネのシークレットも含め高い完成度を誇るが、あまり意味を感じられない前2ルートがあるために、ほとんどが既読化されているのが本当に残念。

もう一つ言わせてもらえば、正直クロハネとシロハネの間にもう1つレインの若い頃のストーリーを設ければ、不明瞭な個所もしっかりと説明する場が設けられ、完成度が上がったのかなとも思う。

非難ばかりになってしまったが、それでもストーリーの完成度、CG、立絵の綺麗さ、音楽の良さなどは凡作とは1線を画す。百合がどうしても無理な方以外には、自信を持って薦められる良作だ。