もっと徹底的に、ライターの「らしさ」を味わいたかった
シナリオが「ている・ている」の中本穂積さんということで期待したが、ちょっと残念。
「ている・ている」は純和風の雰囲気に加え、物の怪という浮世離れした存在を徹底的に肯定することにより、
一見小難しそうな薀蓄や、ことばあそびに不自然さを与えず、独自の世界観の構築に成功していた。
シナリオも物の怪との穏やかな日常の中に、適度な刺激を加え、読んでいて面白みがあった。
本作も、高原の雰囲気や、ことばあそびの要素を取り入れてはいるものの、明らかに不自然さが際立つ。
日常も穏やかで心地よいというよりは、冗長でつまらなく感じ、主人公の言動などもあからさまに空回りといった感じ。
思うにこのライター、浮世離れした世界を描くのは上手いが、普通の日常を描くのは向いていない。
ウケを狙ったような箇所もあるが、無理しているような印象を受けるため、どうも寒い。
と、ここまでの不満は共通部分をプレイしての印象。
個別ルートはというと、正直、ダラダラ退屈な共通部からよく化けたなと感心せざるを得ない。
というのも、全ヒロインのシナリオ全部が、というわけではないが、ここにきてようやく
ライターの「らしさ」とも言うべき心地よい不思議世界に浸ることができる。
特にそれが顕著なのが一子シナリオ。
序盤不自然で仕方なかったキツネやことばあそびの類が自然と受け入れられる話になっている。
個別までの展開が面白みに欠けるため、途中で断念する人もいるかもしれないが、
ライターの過去作品が好きな人なら最後までプレイすることをお薦めする。
最後に、みる嬢のキツネ演技最高!