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dr.takさんの百合の花学園寮 ~早春のカノン~の長文感想

ユーザー
dr.tak
ゲーム
百合の花学園寮 ~早春のカノン~
ブランド
Shining Star Lily’s
得点
60
参照数
739

一言コメント

ヒロインたちの心理描写は上手いが、反面エロとの食い合わせとしてはイマイチ

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作『百合の花恋愛事情』の続編、といっても直接ストーリーに関係あるというわけではありませんが、
教員となった初実がヒロインの1人として登場します。
ヒロインは花音、真琴、初実の3人ですが、この作品でこれまでと違うのはストーリーの構成。
最初に花音シナリオをクリアすると、同じ話で続いて真琴シナリオ、次に初実シナリオという具合に、
ひとつの話が各ヒロインの視点でそれぞれ進行するものになっています。
そのため、ヒロインの心理や境遇などについては上手く描かれていますが、
その反面でシナリオ自体の面白味には欠けるような気がしました。

そのシナリオに関してですが、話の内容的にはいたって単純。
真琴のことを好きな花音、初実のことを好きな真琴、彼女らの相談を受けつつ板ばさみになる初実、
この3人の微妙な三角関係を描いたものになっています。
花音、真琴ルートでの選択肢によってエンディングが変わるというシステムになっており、
選んだ選択肢によってハッピー系×2、堕落系×1の3本のエンディングに分岐します。
あくまでヒロイン3人の関係についてのみ描いたシナリオなので、どのエンディングに進んだとしても、
3人の関係が変わるというだけで、前作のように話の展開自体がガラッと変わるということはありません。

次にエロに関して。
ボリュームについては、回想数14と前作よりはやや少なめ。
シナリオの構成上、同一シーンを各ヒロイン視点で見ることになるため、その分減っているのかと。
仕方ないといえば仕方ないのでしょうが、個人的には全く別のシーンを増やしてほしかったところです。

シチュは前作などと同様、拘束などといったSM系のプレイもありますが、数自体はそう多くありません。
まあ、かといって一見普通のシチュでも、純粋なラブラブエッチばかりというわけでもなく、
その時点でのヒロインの心理に合わせた背徳感を描いたエッチシーンが多いですね。
特にこの作品ではヒロインたちの切ない心理描写が多いので、正直エロさはあまり感じません。
百合モノとしては、このようなノリこそ王道なのかもしれませんが、エロ中心のシリーズとしては、
いまいち食い合わせが悪いような気もします。

また、キャラ的にはヒロイン3人ともそれぞれバランスが取れているとは思いますが、
花音や真琴の性癖については前作や前々作のヒロインほど特色がありません。
一応ルートによって多少責めたり責められたりというのはありますが、基本的にはノーマルっぽい。
まあ、前作では貧乳でドMっぷりを発揮していた初実が、今シリーズでは巨乳のSキャラになっていて、
些か驚きはしましたが、できればもう少しSっ気を活かしたシチュが欲しかったかなと……。

以上、多少の物足りなさは感じたものの、出来に関しては他作品同様悪くないと思います。
特に前作からの関連性という点では、いちばんシリーズ物らしい作品になっていますしね。
この作品のみに限らず、このシリーズ自体オススメなので、興味があればどうぞ。