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dr.takさんのさくらテイル -the tale of cherry blossoms septet-の長文感想

ユーザー
dr.tak
ゲーム
さくらテイル -the tale of cherry blossoms septet-
ブランド
Fizz
得点
61
参照数
2545

一言コメント

(笑)全てはこの一文字に集約される

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

さて、この(笑)ですが、パッと見てどういった意味に捉えるでしょうか。
素直に面白いという感情を表現するときにも使用されますし、
最近では皮肉の意味をこめて失笑的な意味合いでも使用されますよね。
恐らく、そのどちらか一方を想像する人がほとんどだと思いますが、
この作品の場合、良い意味でも悪い意味でも(笑)なんです。

まず、良い意味での(笑)が当てはまるのが、登場人物による掛け合いなど。
これに関しては、素直に面白いと思わせる部分が多かったですね。
パロディネタなども多用されていましたので、人によって合う合わない
というのはあるかもしれませんが、個人的には結構笑えたと思います。
またノリやテンポも良いため、あまりダラダラしなかったのは良かったですね。

次に、悪い意味での(笑)について。
こちらに関しては、シナリオの残念というしかない失笑物のオチのつけ方及び、
蛇足すぎるD.D.S(最初からヒロインがデレた状態での物語)の存在。
オチについては、攻略するヒロインの個別ルートにもよるのですが、
特に酷いのが、メインヒロインたるみかげルート。
個別ルートの感想でまた詳しく書きたいと思いますが、終盤の展開には唖然。
特に自分の場合、みかげルートを最後に攻略したため、ガッカリ感が強かったですね。

D.D.Sに関しては、ハーレムなどを含むエロシーンが複数追加されるため、
萌えゲによるエロ強化という意味では悪くないと思うのですが、
シナリオ的には一部のテキストが変更されるだけでスキップが非常に面倒。
また、エンディングについても、専用CGなどは存在しないテキストのみの結末で、
伏線回収をしたいのか何をしたいのかよくわからない、取って付けたような感じ。
正直エロシーンの強化目的なら、それだけでもよかったような気がします。


以下、個別シナリオ感想。


■みかげ…容姿、性格ともに地味なヒロインが突如華々しいデビューを飾るという、
サクセスストーリー的なシナリオになっていますが、終盤まではそこそこ面白いです。
ただ、このルートについては、伏線的な要素が完全に足を引っ張ってしまいましたね。
ミスコン終了時に素直に終わらせていればよかったものを、下手にその後の展開を
匂わせてしまったばかりに、ナイトクラブ(笑)などというものを持ち出してきたり、
地下闘技場での師弟対決(笑)という意味不明の終幕をするハメになっています。

■リディ…リディと学生会長である兄との確執について描いたシナリオになっています。
ツンデレさんは好きなのですが、なんというか、全体的に盛り上がりに欠けましたね。
せめて最後の学生裁判でもう少し盛り上げれば、もっと面白かったように思われます。
良くもなく悪くもなくといった感じで、印象には残りづらいルートでした。

■朋乃…みかげルート同様、裏組織のナイトクラブ(笑)が出てくるのですが、
朋乃の場合、元々追われているという設定のため不自然ではない展開でした。
シナリオも全ヒロイン中もっともシリアス度が高く、闇カジノでのルーレット勝負は、
某超能力麻雀のような荒技に目を瞑れば、なかなかの見ものだったと思います。
ほとんど空気の主人公も、ラストにかけてはそれなりに活躍していましたしね。
ただ、母親の存在などは、ちゃんとルート中に明らかにしてほしかったですね。

■凛子…なんといっても主人公の空気っぷりが目立つルートでした。
学園の地下探索など、グーニーズやインディジョーンズを思わせるような、
冒険映画の要素を含むストーリー展開自体は悪くなかったんですけどね。
主人公がヒロインを手伝うなら手伝うで、もう少し目立たせた方が良かったかと。
あと、ハインツ先生が悪役になっていましたが、悪いことしてないですよね……。

■郁子…他ヒロインに比べて、あっという間に終わってしまった印象。
個人的にはいちばん好きなヒロインだったのですが、シナリオは弱いですね。
王族の試練というのも、全てが試練というにしては微妙でしたしね。
最後の試練なんて、死ぬか生きるかという割に、ラストがあっさりすぎ。
しかも、殺されかかったにも関わらず和みすぎで白けてしまいました。

■文月…美香が可愛かった、ただその一言に尽きますね。
文月には全く魅力を感じませんでしたが、美香が可愛かったので好印象。
ちょっとファンタジー風な世界観の中で唯一ごく普通のシナリオでした。
超展開などがあまり好きじゃないという人には合うかもしれません。
ただ、個人的には他のヒロインとのシナリオの違いに違和感がありましたが。

というわけで、共通ルート→個別ルート→エンディング……という具合に、
後半にいけばいくほど、お粗末で失笑物の展開が多かったような気がします。
最初にも書いたように、キャラ同士の掛け合いなどは非常に楽しかったため、
個別ルートをグダグダ感の強い展開にしてしまったのは残念です。
せっかく良い意味での(笑)要素が、皮肉としての(笑)に押されていますしね。
光る部分もあっただけに、色々と勿体ない作品だったと思います。


あと最後に、学園地下……どんだけ複雑な構造なんだよ(笑)ということで〆。