ErogameScape -エロゲー批評空間-

dr.takさんの四季の詩 -Poetry of the four seasons-の長文感想

ユーザー
dr.tak
ゲーム
四季の詩 -Poetry of the four seasons-
ブランド
れいんどっぐ
得点
79
参照数
464

一言コメント

前作の『僕キミ』と比較しなければ、同人作品としては出来の良い部類に入ると思いますが、比較しない人なんていませんよね……?あんな爽快感、並みの商業作品でもなかなか味わえませんからね。そういう意味では前作と異なり、個別ルートを設けたことでストーリーの掘り下げ方が中途半端になっており、爽快感より残尿感が残る結果になってしまったのが非常に惜しまれます

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

前作の『僕はキミだけを見つめる』が、かなり面白かったので結構期待していました。
『僕キミ』ではサーベルタイガーという、元愚連隊のリーダーが主人公でしたが、
本作での主人公は、なんと白鷹組という暴力団組織の準構成員。
バイオレンスと純愛という、ある種対極に位置する要素を絡めた作品という意味では、
『僕キミ』を作ったれいんどっぐさんらしい内容になっていたと思います。

さて、この『四季の詩』ですが、シナリオの構成は前作のような一本道タイプではなく、
オーソドックスな、ヒロインごとにストーリーが分岐するという構成になっています。
タイトルからもわかるように、ヒロインの名前は「春夜」「菜夏」「秋心」「真冬」と、
四季がイメージされており、攻略順も春夏秋冬の順に固定されています。
つまり、春をクリアしたら夏のルートが開放されるというわけですね。

この仕様自体は別に悪くないと思うのですが、シナリオ的に言うとちょっと微妙でした。
というのも、各ルート間でのストーリー展開にほとんど差がないんですよね……。
どのルートに進んでも、発生するイベントや結末に大きな変化がないというか。
前作の場合、物語の構成上、ビシッと一本筋が通ったシナリオになっていたので、
読後感も非常に良く、読み物としての爽快感がありました。

しかし、本作の場合、全てのルートに共通してラストまで何度も既読テキストが出てくるので、
攻略対象こそ違えど、スキップしては未読部分を読み、またスキップしては未読を読み……
の繰り返しになってしまい、前作ほど集中して最後まで読むことが出来ませんでした。
キャラの魅力的にはどのヒロインも悪くないので、攻略できるということ自体はいいんですが、
それならそれで、展開自体をガラッと変えてほしかったような気はしましたね。


以下、個別シナリオ及びヒロインについての感想。

■春夜…五代目白鷹組組長。
才色兼備、文武両道を地で行くヒロインですね。
主人公の両親が借金を残して自殺したとき、助けの手を差し出したのが彼女なので、
主人公は彼女に対して、恩義や憧れという想いを抱いています。
シナリオは全ヒロイン中、唯一バッドエンドとハッピーエンドへの分岐がありますが、
個人的にはどちらも悪くなかったように思いました。
バッドエンドはバッドエンドですっきりしましたし、ハッピーエンドでは存在しなかった
七代目を襲名するお嬢が見られたのも、IF的な意味で得した気分になれましたからね。

■菜夏…焼き鳥屋「虎の子」の次女。
表情のころころ変わる、野球好きの普通に可愛い女の子ですが、
この夏ルートでは彼女の出生に関わる秘密というのが話のキー。
どういう内容かまでは、実際にプレイして確認してもらえればと思いますが、
テーマとしては「家族愛」などに重きが置かれた話になっています。
主人公が菜夏の部屋の前で、ずっと語りかけるシーンは印象的でしたね。

■秋心…中学、高校時代の主人公の同級生。
現役女子大生ですが、たまたま駅前でチラシ配りをしていた主人公を見かけたことで、
主人公が債権回収のために住み込む「虎の子」に通うようになります。
おおまかなストーリー展開、それ自体は他のルートと変わらないんですが、
この「秋」ルートのみ、ラストの展開が他ルートとはガラッと異なります。
一見幸せそうな結末ですが、サブキャラの女の子たちが可哀想なルートでもありました。

■真冬…焼き鳥屋「虎の子」の長女。
俗にいうツンデレさんとはまたちょっと違うような気もしますが、属性的には該当。
序盤は極道という存在を毛嫌いして、主人公にも冷たく当たりますが、
いくつかの事件をきっかけに惹かれていくようになるという内容です。
まあ、この辺りの気持ちの推移は嫉妬なども踏まえて可愛く見れるんですが、
ストーリー的には最後ということなので、出来ればもっと深い話にしてほしかった気も。


さて、各ヒロインのキャラやシナリオについては以上のような感想ですが、
本作においてヒロイン以上に良かったのが、サブキャラの存在ですね。
どのキャラもよかったのですが、中でも特にシブかったのが、叔父貴。
古き良き極道というか、任侠道を地で行く人で、言動がもうカッコよすぎです。
ただ、それだけにもうちょっと終盤活躍してほしかったというかなんというか……。

あと、中にはどういうキャラだったのか結局理解できないままストーリーが終わり、
その存在が投げっぱなしになっていた「死の天使」なんてキャラもいました。
そのおかげで前作ほどスッキリできなかったという部分も少なからずありましたが、
このあたりの決着というか、詳細はファンディスクでということなのでしょうか。
「冬」ルートの後にトゥルーエンド的なシナリオがあるかと思えば、ただのおまけシナリオでしたし……。

そういう意味で、本当にスッキリ読み終われた前作と比較すると物足りなさはありましたが、
全体的には悪い出来ではないですし、れいんどっぐさんらしさも味わえました。
同人作品で、且つ価格を考慮すれば十分じゃないかなという気はしましたね。
あまり大きく期待しすぎなければ、前作ほどではないにしろ楽しめると思います。
自分もなんだかんだと不満を書きつつ、次回作にはまた期待しちゃってますからね。