ErogameScape -エロゲー批評空間-

dozakomachiさんの殻ノ少女の長文感想

ユーザー
dozakomachi
ゲーム
殻ノ少女
ブランド
Innocent Grey
得点
90
参照数
797

一言コメント

個人的に推理系ミステリーモノとしては最高峰でいろんな意味で18禁

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

※警告※
著者はゲーム性とミステリーを絶賛しているが、ソレ目当てでプレイするとシナリオでとんでもないトラウマを食らう可能性が大。この作品の主題はあくまで、進〇の〇人を超えるレベルの絶望と狂気です。


昔の探偵系ADVを彷彿とさせるアドベンチャーゲーム
クリアするだけなら失敗を重ねてセーブ&ロードで事件の真相を推理できれば問題ないが
CG、シーンコンプを目指した場合の難易度は鬼畜レベル
「こんなんわかるか、ボケェ!!」
と言い放ってしまうポイントが2,3あり、それでシナリオが分岐するものだから性質が悪い。攻略サイトは充実しきっているのでコンプ目指す場合は参照推奨。
純粋に自身の推理力とミステリーと絶望を味わいたいなら、勿論見ないほうが良い。
以下、各種要素ごとに駄文+完全主観で評価に付き、若干のネタバレあり。

・システム
UIは基本的な部分は揃っている が、ボイスの音量調整が個人単位のみってどういうことよ?
オマケに該当キャラが登場して名前が判明するまでは「その他」のMobキャラボイスの音量で再生され
名前が判明したとたんに、その個人の音量(デフォルト)が適用されて再生される。
全員初登場のたびにコンフィグ開いて調整は唯一褒められない点。

また、昨今の1080p以上の解像度持ちのPCでプレイする場合、ウィンドウ表示だと探索パート時のマウス判定範囲が極めて狭くなる点も注意したい。
前述の「こんなん気づくか、ボケェ!!」はコレが原因でもあるが・・・

・ゲーム性
氾濫しているテキストを読んで、たまに出てくる選択肢を選んで・・・というアドベンチャーとはまったく別物。
ある程度勘や運が絡んでくる分、ファミコン時代に存在した理不尽系探偵モノにこそ近いかもしれない。

内容自体は、逆〇裁〇や〇転〇事のように証言と証拠を集めて、それらを推理や会話時につきつけ、犯人を追い詰める といったものであるが、その情報量がすさまじい。逆〇シリーズであれば基本1話ごとに証拠品等はリセットされるが、これは全部持ち越しである。
ただし、推理自体は比較的簡単で、法〇ファイルの代わりとなる手帳に収められた情報をしっかりチェックすれば自ずと答えはわかるようになっている。

だが

必ずしも正解を選ぶことが正解ではない というフザけ・・・もとい、意地悪というか、空気読んで真実暴くな!的な部分があったりもする。

ゲーム内は主に
シナリオ進行パート(会話がメインで読み進めるだけの部分だが、証拠品はたまっていくし、突き付ける場合も多々ある)
探偵パート(事件というか死体が見つかった時等にマウスポインタを動かして色々調べる)
移動パート(好きな場所へ移動して会話や証拠集めをする)
で構成されている。
この中でも最たるクセモノは移動パートである。
基本、1回の移動パートでは2箇所しか移動できないのだが、移動できる地点は5~8箇所ほどあるので取捨選択を迫られる。
更に・・・
特定の日にその場所へ行くと、事件の鍵になりえる証拠品や状況に遭遇 なんてものや
各地点にはヒロイン等の登場人物がおり、会話で好感度蓄積→ルートへのフラグ、Hへのフラグなど結構重要な要素を内包してくれてる。
地図から移動先を指定するのだが、どこに誰が居る 等の情報は一切こちらに伝わってこない為、攻略情報なしでコンプリート目指す場合はここでリアル手帳が必要になるかもしれない。

なんかネガティブっぽい評価に見えるが、それでも何とか真相へ到達できるようにバランス調整されており(とはいっても何回かはBADENDにぶつかるが)、理不尽ではないがやり応えがあるという見事なバランスにまとまっている。

・シナリオ
連続猟奇殺人犯を追うというタイプの探偵モノ。プレイヤーは勿論探偵の主人公となって犯人を捜すわけだが
珍しく主人公自身は標的にされない(とはいっても不用意に首突っ込んで殺されちゃうなんてシーンはあるが)
ザッピングを採用しており、たまに犯人の視点になったり、他人の視点に移ったりする。
テンポ良く進み、時間を忘れて読みふけれる

特筆すべき点として
犯人の最終目的は殺すことではない ということ
目的を達成する過程で殺しちゃった というすさまじい狂いっぷりが如何なく発揮されるテキストは凄いの一言。
また、主人公が標的とされないと記したが、主人公に近しい人物は標的になりえるという点。
いつ理不尽に友人や大切な人が奪われるかという恐怖と、奪われたときの絶望はもはやトラウマレベル。

物語の分岐は多岐に渡っており、プレイヤーの行動次第では助けられる人物もいたりいなかったり
いろんな場面でフラグ立てたりへし折ったりするのだが、それでも矛盾や破綻無くしっかり物語として結ばれているところはライターの腕。

ずーっと暗い展開なのかというとそうでもなく、いたるところに笑いが仕込まれてたりもする点も高評価

自分の推理がシナリオとつながったとき、鳥肌が立つほど感動したのは初めてかも。

・グラフィック
毎度毎度、背景もキャラクターも綺麗で丁寧な絵師さん。
書き込まれ具合がハンパじゃなく、作画崩壊もなし。
凄く綺麗なCGばかりだが、そのせいで犯行シーンや現場のCGなんかはヤバすぎることに

・Hシーン
ぶっちゃけ必要ないレベルだが・・・1シーンの尺とCGの量は標準以上。
ていうかコレ、Hシーン以外のとこで18禁じゃないか?
クリア後、CG閲覧やシーン回想ができるが・・・CG閲覧は怖い。

総評
頭おかしくなるレベルのイカレたシナリオではあるが内容もしっかりしており、推理とウィットに富んだ会話等の楽しませる要素があり、推理するゲーム性もありで、見事にゲーム性とシナリオを両立させた作品といえる。
プレイし始めると、なかなか止め時が見つからないほどの中毒性。
3部作品ということで次回作の「虚ノ少女」への続き物ではあるが、打ち切り作品のように謎をぶん投げて次回へ続く・・・ではなく、ちゃんと解決するべき事は解決しているので単体としても楽しめる。
勿論、虚ノ少女もプレイして初めてこの作品を十分楽しんだと言えるのだが。

プレイすればまず確実に時間を忘れて楽しめる。
が、
プレイする前に色んな覚悟を決める必要がある。

そういう名作だと評価する。