「俺ガ〇ル」を読んだ桜庭丸男が漂白剤に浸かりながら書いたお話 ※本製品に含まれる桜庭成分は全体の40%ほどですので用法・用量を守って正しくお使い下さい 【追記】りびどーそふとによる謝罪文と桜庭氏の見解が公開されましたがどうやらフルにゃん氏の独断でライター問題が起きたようです。また、観月ルートは完成していたそうです。本来の物語を楽しめなかったこと残念に思います。つけた点数は変えませんが次回作以降は買いません。
まず最初に言っておかなければならないのは、本作は『制作陣がやらかしてる』ゲームであるということだ。
既に情報は出ているし一言感想にて触れているが桜庭氏の担当部分は全体の40%程度。
その内訳は【共通ルート・雫ルート・唯ルート(Hシーンを除く)】となり、それ以外はぽっと出の新人ライターの担当である。
それによりシナリオに目に余る瑕疵が発生したわけでないことは後述するが、桜庭丸男100%と宣伝されたものが蓋を開けてみれば全体の半分も満たないというのは何とも納得しがたい。
これに対し私は以下の様に考える。
このような事象の一例として、衣服の品質表示では【衣料品等の装飾、補強又は縁取り等特定部分の効用を増すために使用された糸又は生地であって、その組成繊維の全体に対する混用率が5%以下のものについては、組成繊維から除いて混用率を算定することができる】というルールがある。
これをエロゲにあてはめて考えると、他ライターの存在の明示をしなくていいのはせいぜい元のシナリオの解釈を変えてしまわない範囲内での添削や校正くらいであり、それ故に今作のような大幅な相違はあってはならないことだ。
エロゲを1000本以上プレイされたというフルにゃん氏は、恐らくただの1度もそういった案件に遭遇したことのない幸福なエロゲーライフを送ってこれたのだろう。
だがユーザーとしての経験値がそのままクリエイターとしての経験値になるわけではない。クリエイターとしての心構えができていないうちはどうかユーザーのままでいてくれ。
安全で楽な立場からあれこれ文句を言ってばかりで申し訳ないが、ユーザーにはどうか誠実であってほしいと切に願う。
さて、外見への不満を吐き出し終えたところで内容への感想へ移ろう。
これも先に言っておくが、点数を見ればわかるようにトータルでは満足している。
本作は【ちょっと遊べる裏道青春学園ADV】ということで、よくあるエロゲにクイズやミニゲームがほんのりと入った意欲作である。
ゲームの意図を理解できない人にとっては開始1分で「そうかっ! 捻くれモノの学園青春物語、完!」しちゃうクソゲーと化す時間制限システムは最初しかなかったので勿体無いと感じた。
学力テストは試みとしては面白かった。
だが馬鹿真面目に勉強するのではなく、シナリオ上では普通の勉強をしている体でそれまでの話を振り返るようなクイズとかヒロインの情報とかを知れるようなクイズのほうが楽しめたと思う。
唯ちゃんの性感帯はどこ? という問題に正解して「なんで知ってんの!? キモっ!!」とか言われたり、雫の3サイズを正答したら雫が喜んだり、朔夜ルートでどうなるかの予想とかで何答えても朔夜が吐くとかそういったアソビがあったらもっと面白かったなあ、と感じた。
本編に収録されていないリア充ぼこぼこゲームは単純につまらなかった。おまけモードにあるけどクリックするだけだからわざわざやる価値もないしスルーで問題ない。
そういったゲーム要素にリソースを割くのはいいが、その弊害かシナリオのボリュームが薄くなってしまったのは残念だった。ただ別に怒ってはいない。
今作にやたら出てくるカーストピラミッド的な例えでいうなら
・ボリュームがあって面白い
・短いけど面白い←ココダヨ!
・つまらないが短いので耐えられる
・つまらんし長いそうそれは苦痛
なので損したって感じでもなかった。
CGに関しては良い。
特にRozea氏の担当した朔夜・観月は構図がとにかく巧い。
個人的best5(といいつつ各ヒロイン毎のbestCG)は
①朔夜のオナニー(朔夜の部屋)
②体育祭での観月×夷隅君
③雫告白シーン
④唯ちゃんプール
⑤さやか海辺
あとはオナニー自白ヒロインが2人いたのが良かったね。
やっぱり女の子には会わないときでもオナニーしてもらいたいよね。
音楽はもう少しがんばりましょう。
せめてBGMはタイトルくらいつけて。
ここからは攻略順に感想でも書いてみるとしよう。
感想の熱が露骨に違うところがあっても気にしないでほしい。それもまた青春だ(?)
共通ルート(★★★ )
青春倶楽部の発足から夏休みまでを早足で駆け抜けるパート。
ここでは夷隅君と雫の性悪っぷりが全開のため既に脱落者が出てしまいそうな雰囲気。球を拾いに来たソフトボール部への雫の辛辣さはプレイしたユーザーを一人残らずドン引きさせたことだろう。
やはり見どころは球技大会での屋上の一幕だ。
競技に参加しようともせず、させてももらえず、逃げの一手でヒロインたちの試合を見物した夷隅君。だが彼女たちはそれぞれ頑張っていて、自分だけが何も為しえていないと気付いたところへの観月の言葉が、彼の心に刺さった氷柱を溶かしていったのだ。
「何も出来ないのはつらいな。何もさせてもらえないのはつらいな。誰にも必要とされないのはーーつらいよな。
自分がいなくても、物事は成立する。誰も自分のことを気にかけず、声もかけず、思いやらず。無情にも世界は回ってる。
それを思い知ると……つらいよな。情けないよな。悔しいよな。それでも耐えて……人は大きくなるんだ。
必要とされていなくても。そこにいる意味がわからなくても。それでもーー居続けないといけないこともある。
その忍耐力が、人間の器量を大きくするんだ。今お前が感じてる疎外感が……今のお前の全てだ。でも今はそれでいいと、私は考えている。
これから必要とされていけばいい。そうなるまで、耐えるんだ。コミュニケーションってのはーーそういうものだ」
さやかルート(★★★ )
単純な話の内容という点ではもっと高評価でもいい。あらすじはそれくらい良かった。いかんせん短い故にもう一押しが足りなかった印象。
それでもさやかのひたむきさは充分なほどに伝わってきた。
会話の練習のためにさやかをスケッチブックから遠ざけてしまうのは幼子を母親から切り離すのと同じで。
だからこそ無責任なことはできないししてはならないから夷隅君は逃げてしまったが、それに関しては仕方ないと思う。
外側から見ているだけだと、逃げるなよヘタレ野郎とかいくらでも言えるけど、平凡に生きてきたいち学園生にはあまりにも重い問題なのは間違いないし。キャパシティを超えてしまっている問題には下手にかかわらないほうが賢明だから。
であるからこそ、一度は逃げ回りながらも最後にはきちんと向き合った夷隅君を称賛したい。
「俺椎名がすげーからビビってたんだよ。すげー過去持ってて。俺とは生きてきた環境が違いすぎて。
どうしていいかわかんなくて、怖かった。一緒にいると、自分のちっぽけさが身に染みすぎて。情けなくなってくるんだよ。
だから逃げてた。……ごめん」
そして、さやかの心根の強さも私の胸を揺さぶった。
「夷隅、君……私……孤独、です。家族いません。重い過去、アリです。でもーー
ーーこれから一緒に……楽しいこと、いっぱい、したい。幸せな思い出、いっぱい、作りたい……
私……そんな、絵で……このスケッチブックを埋めていきたいの……」
亡き母との思い出のスケッチブックに今度はあなたとの思い出を描きたいのだと、そう言った彼女はとても美しかった。
そういやさ、初Hシーンでさやかが「ぉ…………お、っぱ……ぃ……こんな、で……ごめん、なさい………」と謝るわけだが……やめろォ! ちっぱいの女の子を無理に泣かせるのはやめてくれぇ!! そもそもこの子のはそんな小さくない!
朔夜ルート(★★ )
夷隅君が女装家ISSUとなり朔夜ちゃんのトラウマを治していく。
安易なゲロ属性かと思いきや過去のトラウマに起因するものだったのはまあ良いのではないかと。
この子はティザームービーで「いい大人が街中で手ェ繋ぐなよ子供かよ恥ずかしくないのかよ」って言っているので、私は『この子と付き合ったら街中で手を繋いで嬉しそうにしたり甘々なイベントがたくさんあるんだろうな』と思っていたわけですよ。
実際付き合うまではそれに近い甘々な雰囲気を楽しめていた。
それが付き合いだしてからは友人のクレイジーサイコレズとのシリアスがメインになってしまい、こんな展開まぼろし~って感じだった。
だってあの友人「好きになった理由が『気がつけば好きになってた』なんて呆れた答えの人間に朔夜と付き合う権利なんてありません」とかほざくのよ? そんなんこっちからしたらじゃああんたの気持ちはいかほど~って思っちゃうし、そのごたごたで朔夜ちゃん笑わなくなっちゃうし夷隅君は「俺と朔夜が別れればいい」つって独善的な馬鹿になっちゃうしでマジ背負い投げ~!!
挙句の果てにエピローグで唐突に同棲始めてて笑い転げた。このシナリオどんだけ~!!!!
…いやほんと朔夜はかわいいんですよ? 惜しむらくはシナリオって一番言われてるから(自分の中で)
雫ルート(★★★★☆)
【捻くれモノの学園青春物語 ~俺と彼女の裏表~】というタイトルが最もぴったりなルート。特にサブタイトルに関しては=雫ルートといってもいいくらい。
個人的下馬評では『ハズレ幼なじみ』と思っていたため最下位の雫だったが話の内容でぶっちぎった。
そもそも萌えゲヒロインとしては致命的な性格の悪さと地味状態の絵で損してるし予想できなかった。まあその性格の悪さも過去のトラウマに起因するものだったわけだが。
そんな雫が夷隅君に好意を寄せるのは彼が本性を隠さずに生きる【捻くれ者】だから。
かつて親友に裏切られたことで人間不信になり、人間の裏の顔(本性)を暴くために攻撃的な性格になった雫にとって、それを隠さずに1人で生きていける夷隅君は憧れであり唯一信用できる人だったのだ。そして自分もそうありたいと願った。
だが彼は青春倶楽部の仲間と過ごすことで変わっていった。
「裏表を使い分けるってことは、人間が誰かと共存していくために必要なことなんだと思う。
逆に言えば、裏表を持ってる人間ってのは……誰かがいないと生きていけないんだ」
「そして……人間誰しも……裏表がある……私にも……祐一郎にも……」
「……そうだな。だから俺もお前も、例にもれず1人じゃ生きていけないんだよ」
恋心によって、自身に張ったバリケードが剥がれてしまった。幻想の強さに支えられていた彼女が弱さを受け入れる覚悟を持てたこの告白シーンは間違いなく本作の名シーンだった。
『俺達は、1人じゃ生きていけないんだ。
捻くれた生き方をし続けて……普通の連中のから大幅に後れを取った者同士ーー
馴れ合って、寄り添って、カッコ悪く生きていこうーー』
そうしてカッコ悪い生き方を肯定できるようになった雫はもう一つの過去【柏香織】に向き合うことを決めた。
それはとても簡単なことで。だけどそれさえも難しかった【捻くれ者】の雫であったが、10年来のすれ違いに無事決着をつけられたのだった。
「自分のことはちゃんと全て把握してると思ってた。でも違った。
宗像雫は私が考えているよりもずっと弱くて、寂しがり屋で……感情的だった。
あなたに好かれる喜びも知らなかった。あなたに好かれようと、髪をおろして……コンタクトにして、可愛い服を着る宗像雫なんて、私想像できなかったわ。
私の知ってる宗像雫は……もっと自分をしっかり持ってて、1人で生きていける自信があって、誰にも、何にも迎合せず……常に孤独で、何も恐れない圧倒的な自我に満ちていた。
実態は全く違ったわ。祐一郎に暴かれた宗像雫は……本当に……ただの、ただの1人の普通の少女だった。
それを知ったの。あなたに教えてもらったの。今は……昔より……自分を愛おしく思うわ」
ここで共通ルートと同じようにソフトボール部の流れ球が転がってくるわけだが、共通ルート時との対比が、このときの雫の笑顔がとても綺麗だった。それは長年抱いてきた胸のつかえをソフトボールとともに投げ飛ばしたような、そんな笑顔だった。
これは、結婚の約束も毎朝起こしに来たりもしない、捻くれた幼なじみが同じ未来を歩んでいけるようになる、そんな瞬間を切り取ったささやかな物語である。
観月ルート(★★★ )
おそらくtrue枠。EDクレジットにて他ライターであることを確認していたので順番を変えたがミスだったかもしれない。
タイトルは本当はここにかかっているのだろうけど私にとってあれは雫ルートのものだ。申し訳ない。
制作陣がやらかしたゲームは終盤あたりで可愛いサブヒロインを登場させなければならない縛りでもあるのか?
まあそんなこんなでラスボス【誉田正夜】が転校してきていろいろ引っ掻き回すよ。
エピローグで正夜が「もしかしたら追加パッチでルート追加されるかもしれないじゃん?」とか言うわけだが、言ったからにはやれよ。ただでさえ不誠実な販売したんだから。
唯ルート(★★★★ )
今作において唯一【捻くれていないヒロイン】であるところの唯ちゃん。
ショートケーキのいちごは取っておくタイプなのでこの子が最後になるのは必然だった。
この子はキャラデザもさることながら声がいいね。天真爛漫な唯ちゃんを演技で彩るcv花丸あすな…一体何者なんだ()
シナリオのほうは唯ちゃんの可愛さを引き立てつつもクソビッチ3人衆にイライラさせられ、それらを包括する小粋なエピローグで締めるというなかなか面白い構成だった。
これは本当に上手く作ってあるなあと感心した。初対面から「いっすー」と呼ぶことにもちゃんと意味があったんだな。
それ以外の要素でも唯ルートは今作において貴重なポジションである。それは【夷隅君自身がリア充と向き合う】シーンがあること。
これまでの4ルートではありそうでなかったのだが、ここではとうとうキングオブリア充【浦安慶介】と対峙する。
このシーンだけは君の眼で確かめてくれ(昔のゲームの攻略本的なアレ)
というか唯ちゃんルートも好きなシーンが多いし1番好きなヒロインなので何かしら引用したかったのだがルート丸ごとでワンセットみたいなとこあるからちょっとどうにもならない…
でもあれはいけるか。
「いいんだよ。好きとか嫌いとかは、理屈じゃないもん。勉強と違うもん。わけわかんなくたっていいんだよ。好きなんだから、それでいいの」
おい聞いてるか? クレイジーサイコレズ。