ちゃんとプロットの手続きを踏んでいるのが良かったと思います。
以下の描写が引っかかった。
>「ベリチュコフ艦隊、発見!」
> 雨音に負けぬよう見張り台の兵が大声で報告した。
> エルバートは前方を凝視する。
>「あれか」
> 水平線に小さな粒がぽつぽつと浮かんでいた。
言うまでもないけれど地球は球体なので、見張り台から船が見えた時点で甲板にいる主人公から船が見えるはずがない。
あるいは、
> 少数の側が多数の側を包囲しようとするとは……
> 普通ならまずそんな発想すら出てこないはずだ。
と包囲攻撃を評価しているが、史上最も有名な包囲戦であるカンネーの戦いは少数側が多数側を包囲殲滅したものであり、これは高校必修の世界史で習う内容である。
http://www.y-history.net/appendix/wh0103-027_0.html http://koukousekaishiyougo.seesaa.net/article/%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%82%A8%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84%EF%BC%88%E3%82%AB%E3%83%B3%E3%83%8D%E3%83%BC%E3%81%AE%E6%88%A6%E3%81%84%EF%BC%89.html
個人的に子供向け作品/大人向け作品の境界線は「高校生を騙せるか否か」だと思っているのだが、この作品は高校生でも引っかかるような記述が多く、子供向け作品の範疇を脱していないと思った。
しかし平明な記述で面白さのルールと手続きをきちんと守っている点がすばらしい。
例えばこの作品の2章でとあるキャラが死亡するのだが、私はこのキャラには絶対に死んで欲しいと思っていた。というのは何もこのキャラが嫌いだったからじゃなくて、このキャラが死ななければ物語が動かないと分かりきっていたからだ。そういうキャラをきちんと殺す、「物語を面白くするルール」に忠実であることが良かった。
ところで自分は、この作品をプレイしていて『セブンス』( http://ncode.syosetu.com/n3250cl/ )というライトノベルを連想した。こちらも美少女を引き連れ世界征服する物語で世界観もかなり似ているのだが、主人公の性格が『水の星、世界を手に入れる男』と裏表みたいに逆なのだ。『セブンス』は自分が知る限り最高のライトノベルなので、『水の星、世界を手に入れる男』も負けないような物語になって欲しいと思う。