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dovさんの桜ひとひら恋もようの長文感想

ユーザー
dov
ゲーム
桜ひとひら恋もよう
ブランド
Parasol
得点
75
参照数
2503

一言コメント

現実社会へ向かって静かに中指をおっ立てたゲーム

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

 完成度はせいぜい中の下でしょう。あらゆる面で最低限のクオリティは確保しているのに、どこかが微妙に足りません。
 例えばCG。致命的な崩れはありませんでしたが、ちょっとした乱れ(体型がちょっと変、など)はそこかしこに見つかります。構図もありきたり感が否めません。
 例えばシステム。一応必要な要素は揃っているものの細かいところで引っかかります。
 例えばシナリオ。幼馴染と妹を軸にした甘ったるいハーレムなんですが、それにしてはやけに政治に関する生々しい表記が目立ち、それでいながら解決は強引で、全体的に「ご都合主義的な」「甘ったるすぎる」展開が鼻に付きます。
 こうした点を私はあまり評価しません。――ですが、特にシナリオから滲み出る制作者達のこじらせた感じ・闇深さには感じ入るものがありました。



 このゲームはある現実に存在する政治勢力(特定の政党のことではありません)をクローズアップしています。その政治勢力はネット言論や表現の自由をひどく嫌っており、そのスケープゴートとして成人向け作品に圧力を加え続けています。また昭和初期の価値観を重視する傾向があり、近年では中学生の武道教育に銃剣道を追加しました( http://www.asahi.com/articles/ASK3063F4K30UTIL058.html )。
 こうした思想を持つ方々は一体どういう生活を送っているのでしょう? 一例となりますが、2017年8月7日まで文部科学副大臣を務めていた方の発言から引用してみましょう。

> 確かに妻は俺の教え子です。そして、北星余市高校の中退生です。
(中略)
> 俺は朝六時半に彼女を迎えに行き、海に連れて行きました。そして車の中で彼女に謝った。
>「今まで、ほんとうにゴメン。俺はおまえのことを何もわかってやろうとしていなかった。結局、いろんなことを考えて一睡もできなかったよ。
> 時間数が切れたら別れ、そう考えながら、今まで俺がおまえに対して投げかけてきた言葉の一つひとつを思い返してみたよ。そして気がついたんだ。俺の言ってきたことって、実はおまえ自身が一番わかってたことだったんだよな。でも、それでも学校に来られなかったんだもんな。それさえ気づかなかった俺は、ほんとうにダメな担任だよ。
> もし、まだ、おまえの中で学校をやめるか、続けるかの答えが出ていないなら、俺のために続けてくれないか。俺はもう誰もクラスの人間を失いたくない。それは俺のエゴだよ。でも、本音なんだ。まだ時間数は切れていない。答えが出ていないなら、俺のために続けてほしいんだ」
(中略)
> そんな俺の言葉に、彼女は黙ってうなずいてくれました。
> それからは毎日、彼女を寮に迎えに行ったんです。半ば強引に車に乗せ、教室に運びました。
(中略)
> 忘れもしない二○○一年の秋に、本校生七十九名が大麻の吸引に関わったという、いわゆる大麻事件が起きたんです。
> 彼女はその事実を受け止めることができませんでした。彼女の心は壊れる寸前だったんです。事件の説明をしたホームルームで、彼女はただただ泣いていました。
>「もう俺のために続けなくてもいい」
> 俺にはそれしか言ってあげることができなかったんです。そして、彼女は学校を去りました。
(中略)
> それからも、俺たちは連絡を取り合ったんです。たとえ目の前にいなくなってしまっても、彼女が俺の大切な存在であることにかわりはないわけですから。
> それで、ある日、これからの人生の不安を吐露する彼女に俺は言ったんです。
>「俺が一生、おまえを守ってやる」って。
> 彼女は、俺に人生を賭けると言ってくれました。
(中略)
> こうして二○○一年の冬に、俺たちは結婚しました。
(『私の夢 俺の希望』P191~P195より一部を引用)

 この方の発言をどこまで真実として受け止めるか、どのように評価するか、様々な意見があるでしょう。ネットにはこの方に対する言論が色々と転がっています。
 しかしこの方が文部科学行政の重責を担い、あるいは横浜市教育委員を務めていたことは紛れもない事実。ゲーム中で描かれる「テーブルの上に金の延べ棒を置く」「公共の場での現金受渡」「北条学園の教育方針」といった表現もあながち荒唐無稽な話とはいえません。
 テーブルの上に金の延べ棒を置くと金運に良い、という考えが世には存在しますし( https://www.fsmegamall.jp/products/detail.php?product_id=1351 )、国会議員秘書による飲食店での現金受渡が録音された事件は記憶に新しいところです。また北条学園に似た教育現場は現存しています( http://www.totsuka-school.jp/ , https://matome.naver.jp/odai/2136387609507239801 )。
 つまり、このゲームのシナリオは非常に嘘っぽいのですが、その実「嘘みたいな本当の話」を描いてもいるのです。教え子を孕ませた政治家、東南アジアで少女を買ったことを自慢する政治家……そういった方々から"何故か"敵視されて規制を強化されつづけるエロゲ制作者としてはやさぐれて「どうせ世の中なんでもアリなんだ! だったら毎朝幼馴染に起こされて実妹とセックスするご都合主義的ハーレムがあってもいいじゃないか! 全国の兄を愛する妹達の同好会『シスッター』があってもいいじゃないか! 小○生同然の子とセックスしてもいいじゃないか! 野外や教室や球場でセックスしてもいいじゃないか!」とでも言いたくなってしまうのかもしれません。
 そしてその絶望を、私も僅かながら共有出来るような気がするのです。







 いいぞベイベ-! エロゲをやるヤツは皆ロリコンだ! エロゲをやらないヤツはよく訓練されたロリコンだ! ホント現実社会は地獄だぜ!