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dovさんのスイートロビンガール -Sweet Robin Girl-の長文感想

ユーザー
dov
ゲーム
スイートロビンガール -Sweet Robin Girl-
ブランド
Chuablesoft
得点
81
参照数
534

一言コメント

いいオッサンが少女……というか女児と恋愛する違和感に『これは童話(のようなもの)』というエクスキューズが利いています。ただし恋愛の機微の描写は童話らしくほぼ皆無。世界名作劇場のヒロインによからぬ妄想をした人(レミ@家なき子とかエポニーヌ@レ・ミゼラブル辺りが好みです。ゲヘヘヘ)に向いているかもしれません。雰囲気とBGM、プロットは完璧なのですが、ライターさんの力量により出来上がったお話は月並みくらい。関谷さんの絵も好みが分かれるかも(私は大好きです)。中○○くらいに見えるフィオナ・エレンは大人より優秀なので、思春期少女に包まれる幸せがあります。高学年くらいに見えるメグはその通りの精神年齢なので、そんな子と同じ目線になって心も下半身もぶつかり合う感じ。スモッグを着ててもおかしくないプリスには、ご近所の幼女を騙してヤっちゃうような背徳感が。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

【フィオナ】
 女の子4人で旅をしてたっていうトンデモ設定も、この子とエレンの優秀っぷりでなんだか納得してしまえます。特にフィオナは、その辺の職場で仕事を丸投げされても形にしてくるんじゃないかと思えるくらい優秀。かのじょひとりでしどもふくめたぜんいんやしなえるんじゃないかな。
 そんな優秀さを感じたフィオナなので、実は後半の展開にあまりハラハラしませんでした。伯爵の跡取りだろうとシドとの恋愛だろうと、あるいはその両立だろうと、彼女は望む物を手に入れられる充分な力があると思えたんですよね。クローディアの陰謀(という誤解)を伝えられた時、フィオナは「自分で何とかします」と答えるんですが、実際彼女なら何とかできると思えてしまった。シドが足手まとい・フィオナの弱点にしか見えなかった(笑)。そんな素敵に無敵な女の子と静かにイチャイチャ時を刻めるルート前半がこのゲームで1番好みでした。
 地味に懐いてくれるのが一番遅い子だったりします。
 仮面の男はおそらくフィオナの兄ですが、どう考えてもシスコンですね。

【エレン】
 フィオナが「甘い」少女とすれば、この子は「甘酸っぱい」少女。フィオナの影に隠れてますが、エレンも気を回したりなんだりと凄くデキる子。しかも茶目っ気があって前向き。生活に仕事に大車輪の料理スキルもあります。そしてプリスに次いでチョロ(懐くのが早)かったりもする(笑)。
 この子からはガンスリンガーガールのトリエラを連想したんですが(フィオナも弦楽器を持ってますね)、明かされる過去もトリエラっぽかったです。見た目の華やかさに応じてエロは狙ったものが多い。ツンデレ美少女を四つん這いにさせてアヌス挿入とか。「奴隷だった」「両親とも既に亡くなってた」という過酷な過去に弱る姿も可愛かったし、そこからあまり腐らずに立ち直ったのもシナリオに安定感を与えました。さすがの彼女(とシド)も犯罪組織相手には手も足も出ませんでしたが、警察が動いて助かった件にはフィオナの暗躍も察せられたり。
 絵が良かったです。ドレスがつるっと落ちるシーンにはスレンダーの魅力が詰まっていました。朝チュンシーンも妙に色っぽく、エレンの成長を物語る最後の一枚として相応しい感じ。主人公やプリスと木陰で休むシーンはその美しい構図に水月やその後の作品( https://youtu.be/D1YGeQLjdiw )が想起させられ、打ち震えるような思いに襲われました。
 フィオナとエレンはキャラとしても安定感がありましたが、シナリオもミステリー(フィオナと伯爵家の関わり、エレンの過去)やビュルス病といった要素が上手く絡んでいて読ませるものに仕上がっていました。

【メグ】
 安定した長女・次女に支えられつつ、挑戦的なシナリオに挑戦したのが三女・四女という感じですね。フィオナ・エレンほどではないにしても、メグも1人で生きてゆくなら充分やっていけるだけの如才なさがあります(プリスと二人旅に出てゆくルートもありましたが)。それでいて彼女は市井での生活に馴染めず、何事にもどこか他人面。なので突然フラっと出て行ってしまいそうな危うさが実感できます。そんな彼女に社会性が芽生えるというテーマは4人の中でもとりわけ興味深く、スタッフの意気込みが溢れるようでした。
 が、挑戦的な話だったが故に、このゲームの特徴が悪い方向に作用してしまった感じです。このゲームは童話的――つまり内面にあまり立ち入らずに話を進めてゆく様式なので、メグの内面的変化が感じづらかったんです。メグが可愛く柔らかくなったのはもちろん分かりましたが、それはあくまでシドへの愛情を示すものでしかなく、彼女がより文化的で複雑な感情に晒されるルート後半の描写としては不十分。これがアニメならちょっとした仕草なり微妙な表情なりで示すこともできたんでしょうが、エロゲである以上やはり文章で描写して欲しかった。コマドリの暗喩はメグの変化を示すには漠然としすぎており、台詞やエピソードからも明確なメグの変化が描かれずライターさんの力不足を感じる結果となりました。
 またルート毎にライターさんが違うのか、メグとプリスのシナリオは脇役の扱いに難を感じることが多かったです。他のプレイヤーさんがジョナサンとプリスの違和感について指摘されていましたが、私はそれ以上にステフに違和感を覚えました。彼女は少なくともフィオナやエレンルートでは、突然ヒステリーを起こすタイプではなかったはず。
 メグもCGが良かったですね。何と言っても立ち絵が彼女のロンリーウルフっぷりを絶妙に表現していました。クリスマスツリーの下でのキスシーンの対比も印象的で、しかもちょっとえっちでした。

【プリス】
 童話的な嘘っぽさ(とても生活が成り立つとは思えない仕事っぷり)とシドのダメ人間っぷりに上手く誤魔化され、メグまでの3人は辛うじて恋愛に納得できましたが、プリスはさすがに幼すぎると私には感じられました。有り体に言って、プリスは女として見ることができず、こんな子とオッサンが「対等に恋愛」しようとするのは生理的にムリでした。
 ――という、おそらく他のプレイヤーさんから見てもなかなか困難な要素に加えて、この子のお話には毒親というこれまた難しい要素が絡んできます。そしてこれらの難物を扱うにはライターさんがあまりにも拙かった。お話の都合の為にシドは他ルートでも見られない非常識な言動を繰り返し、童話としても強引な展開が続き、文章には突然説教めいた言葉が並びます。フィオナはなぜか腹黒キャラに位置づけられ、素人ライターらしい「1シーンにつきヒロイン達が一言ずつありきたりの台詞を喋る」が繰り返されます。またこのゲーム恒例の「最後の選択肢」はこのルートのみ正解/不正解の二分法となっていて(メグルートでも彼女を迎えるエンドとは別に皆でメグを待つエンドがあって、『正解』は1つではありません)物語の奥行きを損なっています。
 テーマや細かい要素には目を惹くものもあって、決していい加減に作られたのではないと思います。しかし以上で述べた点に加えて、プリスの父の声が不快だった(狙ったものだとは思いますが、それにしても演技がわざとらしすぎました)こともあって、私にとって唯一「進めるのが苦痛」だったルートになってしまいました。

【最後の】
 こういう暖かい物語で最後にちょっとしたエピソードが加わるのはいいですね。『遙かに仰ぎ、麗しの』なんかを思い出します。しかしここでもフィオナが腹黒キャラにされたのは納得がいかない。排尿シーンを見られながら気遣ってくれる子なのに! 頼まれると嫌と言えずにおっぱい見せちゃうような子なのに! エレンルート、あるいはメグルートでメグを待つ方のエンドを見ると、フィオナはシド達の幸せを最優先に自分の身の振り方を決めています。「誰かの為に」が生きる原動力のような子なんですよね。