体験版をプレイして、『タイムリープゲー』なのか『ゾンビゲー』なのか悩みつつ購入しましたが、『タイムリープ含みのホラーなシナリオゲー』でした。ホラーと言っても、ゾンビだけでなく、ややグロな映像や音声、シナリオ面からもホラー要素のある、面白いゲームに仕上がっています。
【グラフィック:90点】
ゾンビ等のホラー系グラフィックの力の入り具合がすさまじく
過去プレイしてきたゲームの中でも最高クラスで、夢に出てくる勢いです。
ヒロイン等の人物のCGは、ぱっと見では、やや地味な印象を受けますが
ゲームをプレイすると、原画も塗りもこの作品にばっちり合っています。
ほぼ文句ないです。
【システム:70点】
最低限のシステムは揃っています。
選択肢スキップは、既プレイルートの選択肢を選んだ直後だけ
選択肢スキップをするかどうかというダイアログが出てきます。
自由に選択肢スキップが出来ない点は不便です。
また、クイックジャンプ機能がありません。
理解するためにじっくり読む必要のある箇所が多数ある呉氏の作品なので
クイックジャンプ機能はぜひ実装して欲しいです。
【音楽:75点】
作品の雰囲気にあった曲が揃っています。
【テキスト:90点】
理解しづらい内容にも関わらず、読みやすく、キャラクターの個性も活かしているテキスト。
ウザくならない程度に散りばめられた、それっぽい意味深なセリフも良いですね。
個人的にかなり好きです。
【声:82点】
全体的に良い配役だったと思います。
個人的に最も良かったのは、杏子役の白月かなめさんでした。
かわいい感じではなく、落ち着いたトーンが良かったですね。
杏子の素性が本人の口から淡々語られるシーンでは、底冷えするような恐怖を感じました。
【シナリオ:85点】
このゲームは様々な要素が含まれているので
『シナリオ』と一括りにして点数化することが非常に難しいです。
勝手に区分したパートごとに詳しく書きたいと思います。
『プロローグ:85点』(体験版部分)
一言で言うとゾンビ感染パニックパート。
グールに襲われて「これからいったいどうなるんだ…?」と思っていたところに
突如ソンビが大量発生して、いともたやすく殺される主人公やヒロインの家族達。
ゾンビを掻い潜ってゴールにたどり着いたと思ったら
ヒロインは死に、主人公も…と、とにかく展開速度が凄まじい。
1ルート終わった気分でタイトル画面に戻ると
「あ、これプロローグだったんだ」という感じでした。
実は、全ルートクリア後に見て初めて理解できるセリフがあったりと
2周目も楽しめるようになっています。
『探偵パート(共通前半):80点』
遊馬邦和の依頼を受けて、坪井愛実を探すパート。
捜索開始時はややゆっくりとした展開ですが
拷問シーンを交えて飽きにくい構成になっています。
また、殺人犯や坪井愛実の正体が発覚してからの
怒涛の(超)展開は驚きと気持ち良さとが合わさった不思議な感覚でした。
超展開過ぎて手放しに肯定はできませんが、見せ方や勢いはすごく良いと思います。
『杏子パート(共通後半+恵理・駒子ルート):90点』
個人的に、恵理・駒子ルートは、実質的に杏子の動向を知るためのルートと理解しているので
このような括りにしています。
5年前の主人公と杏子が対面するシーンで明かされる、杏子に纏わる真実。
『声』の項目にも書きましたが、底冷えするような恐怖を感じて夢にまで出ました。
恵理ルート2つ・駒子ルート2つの、計4つの結末がありますが
個人的に最も好きなのは、駒子ルートの『殺さないEND』です。
その理由は、杏子の欲望に最も適った結末であり、最も『杏子らしい』と感じられるからです。
この結末は杏子の母の『いにしえのもの』ではありえないですから。
これら裏で、由乃の謎が更に深まってる点も面白かったです。
『由乃パート(由乃ルート):80点』
由乃の正体が語られるルート。
これまで超展開を散々見てきたのに
更に驚愕の超展開を出してくるまさかの展開に驚かされました。
・主人公と由乃が同じ卵を元にした存在であること
・由乃が異能所持者で、本来なら同時に存在し得ない康一を探すために世界を渡り歩いたこと
・由乃の元の世界と康一がいる世界を重ねることで、永遠に時間をループすることになり
その中で由乃と康一の絆が意識の奥底で強くなっていくこと
このあたりの設定は、『何処あの』を彷彿とさせる展開で良かったと思います。
しかし、最後に由乃の正体が『 い寄 沌』という言葉で語られてしまった瞬間
私の中で、同一の卵から発生した存在であるという、切っても切れない絆よりも
『 い寄 沌』という存在の方が大きくなってしまい
由乃の行動全てが極めて押し付けがましいものに感じられてしまったのが残念でした。
(杏子に言わせれば、この由乃には愛なんてものは存在しないということなので
実際その通りなのかもしれませんが)
結局のところ、由乃が自らの興味から、一方的に世界を重ねるという行為をしたことで
初めて主人公が由乃に好意を抱く結果に結びついたと考えると
自然と惹かれ合った主人公と杏子の組み合わせとは全く異なるもの(あまり良くない意味で)
という考えに落ち着きました。
シナリオとしては面白いですが、由乃というヒロインを絶賛はできないですね。
『シナリオ総評』
シナリオ全体を通して言えるのは
常にユーザーを退屈させない構成になっている点が非常に好印象でした。
それは、わかりやすいホラーの演出やシナリオ展開だけでなく
明らかに知りたいけれども、まだ明かされていない事実であったり
当分先まで本当の意味は明かされない意味深なセリフであったり
様々な形で存在しています。
ライターさんを中心に、かなり考えて構成されているのだと感じました。
私の中の一般的なエロゲのマイナスイメージとして
『とにかく退屈な時間が長い』という印象があるので
それとは全く対極にあるゲームと言う点で、とても好感触でした。
【キャラクター:85点】
これまで書いてきた通り
ヒロインと言う意味では、個人的には、ほぼ杏子ゲーでした。
他のキャラクターもシナリオ上はとても重要ですし、良い働きをしていると思います。
【総評】
夢見が悪くなるほど印象的で、とにかく退屈しないゲームでした。
7,800円と少しお安い価格でこれだけ楽しめるのですから
買わない手はない…と他の方に勧めたい気持ちはあるのですが
このゲームを短い言葉で『~ゲー』だったり『~が面白い』と語ることが難しく
あまりオススメできていないのが実情です。
MooneStoneさん、何か良い売り文句、ありませんか?w
【最後に】
由乃がガリガリに痩せていると聞いて密かに期待していたのですが
4/6シーンが着衣、1/6が背面騎乗位で
5/6シーンのおなか周りが見えないとか、いったいどういうことだよ!!!
……極めて個人的な内容で、失礼しました。