シリーズ3部作の完結編。3部作と言えば最後はコケるのが定石ですが、今作は、前作の勢いをそのままに最後まで駆け抜けた、稀有な作品です。以下、項目ごとの感想(※致命的な本編のネタバレ、小説版のネタバレを含みます)
【グラフィック:95点】
相変わらずの高品質。
キャラだけでなく、背景やエフェクト等々にもこだわっています。
【システム:80点】
全く問題ありません。
【音楽:90点】
OP曲、ED曲、BGMの『Ley-Line』等々、魅力的な曲が満載です。
【テキスト:80点】
全く問題ありません。
【キャラクター:95点】
このレイラインシリーズ。捨てキャラが一人もいないんですよね。
全てのキャラクターが強烈な個性を持っていて
みんな好き過ぎます。
【声:95点】
何一つ文句のない配役でした。
キャスティングした人は天才ですか?
個人的には、最も演じるのが難しいであろうルイ役の有村祥さんが最も印象的でした。
ドSっぷりを存分に出しつつ、ハイジを涙目にさせるところで留める力加減。
肝心なシーンではハイジを思いやる優しさがほんの少し垣間見えるトーン。
本当に上手かったです。
また、ハイジを演じられている白月かなめさんの狼狽えているハスキーボイスも
本能的にとても好きでした。
もちろん、モー子・おまる・睦月・リト・学園長・舞砂・アンデル・雛・眠子等々
その他のキャラクターの声も良かったです。
【シナリオ:95点】
1・2作目&小説版の伏線を十二分に活かした展開。
事実だけ箇条書きで見れば、若干のご都合主義を感じなくもないですが
各キャラクターの全ての行動から『想い』が伝わってくるので
プレイに熱中している間は、そんなことは感じさせません。
シリーズファンが欲しいものだけを見事に抽出して作ったかのような展開であることで
更に加点されました。
本当に『これしかない!』と言う展開だったのが素晴らしい。
舞砂の遺品を利用して黒谷になりすましていたモー子のくだりは
本当にやられましたね。
全体を振り返ってみれば
クラール・ラズリットとして天秤瑠璃学園を創設、魔女達の育成の務めた舞砂。
生前は、娘として引き取ったアンデルの力の暴走の被害を食い止めるために命を落とすと言う
悲しい結果しか生みませんでした。
しかしながら、三厳達の時代になっても、彼女が信念を持って創設した天秤瑠璃学園は続いており
学園を通じて知り合った魔女や、魔術・遺品に精通した仲間達と力を合わせることで
夜の生徒たちを救う事ができたのです。
舞砂の今までの尽力が無駄に終わらないどころか、時を超えて実を結んだことが
心から嬉しかったです。
【総評】
作品の全てが私好みで、私のために作られたかのようなレイラインシリーズ。
『今までエロゲをプレイしていて良かった』と思える程のお気に入りです。
1作目・2作目は発売後にDL購入してプレイしたので
流れに乗り遅れてしまいましたが、遅ればせながらLTBを購入することで
レイラインユーザーとしての体裁は一応整えられたかなと思っています。
今後もユニゾンシフト ブロッサムの作品からは目が離せませんね!
エロゲブランドで最も好きなブランドと自信を持って言えます。
(※以下、作品内の文章を引用しつつ、ちょっとした感想など)
【感動のシーン抜粋とその感想】
今作には、シリーズファンの涙腺崩壊ポイントも多数設置されています。
ここからは個人的に涙腺が刺激されたシーンを抜き出したいと思います。
『これから私はクラール・ラズリットと名乗ろうと思う』
羽ペンとインク壺の遺品「アンブリエル」を初めて使った時の、舞砂の記憶より。
本作プレイ直前に小説版を読んだこともあり、輪子との別れを経て
大きな悲しみと両の赤い目を背負った舞砂の、成長と決意を孕んだこの一文だけで
思わず涙腺が刺激されてしまいました。
『この子が笑うのは、わたしが笑って、と言ったからだってわかってしまった』
遺品「アンブリエル」を使用した時の、セディこと七番雛の記憶より、学園長について。
あの印象的な高笑いの裏に、セディが心をすり減らしていく過程が隠されていようとは…。
『わたしが、つくったの』
遺品「アンブリエル」を使用した時の、舞砂の記憶より。
アンデルが魂を持ったホムンクルスであるセディを作ってしまったことが発覚したシーン。
長い間、強大な力を持つ魔女達が忌み嫌われず過ごせるよう
信念をもって尽力してきた舞砂の失望感を想うと
居た堪れない気持ちになりました。
『ああ、だったら--彼女たちにせめて、私に残された霧の一粒のような微かな力を……。--残して。私の、遺品を。』
『あなたの望みは何ですか?』
遺品「アンブリエル」を使用した時の、舞砂の記憶より、
20年前の火事の真実が全て明らかになると共に、舞砂が消滅し遺品となるシーン。
そして現世で宝物庫に閉じ込められた憂緒の前に、その遺品が現れたシーン。
個人的に本作屈指の涙腺崩壊ポイントでした。
舞砂に対する様々な感情が吹き出してわけが分からなくなってました。
私は舞砂が好き過ぎるのかもしれません。
『……………やっと会えたな』
三厳が災厄の魔女の力を取り戻し、夜の生徒たちの魂を癒やして、
おまると再開するシーン。
話の流れから、おまるが出てくることは分かっていたんですが
残影で衝撃的な別れのシーンが脳内で自動再生されつつ
そのおまるが、実態を伴った形で帰ってきてくれたとなると
もう抗えませんよね。
今作は『シリーズ3作+小説版』と言う、作品としての積み重ねはもちろん、
ゲーム内世界での時間も長く費やしている本作は
本当に感動的なシーンが多いです。
【本作で最も印象に残ったシーン】
『とっくに失態が服着て歩いている状態だったくせに』
本家と跡継ぎを作ると言う約束をしてしまったルイ。
本作のエピローグで、災厄の魔女である三厳の力を使っても男に戻れないことが確定し
本家との約束を後悔しつつ、腹いせにアーリックに罵詈雑言を浴びせかけるシーン。
その中でもこの一言には爆笑しました。
EDで感動した直後にこのシーンだったので、泣きながらお腹を抱えて笑うと言う
酷い有様でしたね。
ところで、過去類を見ない程赤い眼の適性があるルイ、
そのスペアとして候補に上がっているアーリック。
本家の意向としては、より適性の強い子孫を残したいはず…、アッー!
【蛇足】
おむつこと睦月だけ、本シリーズを通して唯一
アナルにモザイクがないという高度なギャグも個人的には見逃せません。