コミュ障の主人公が、電脳世界と現実世界それぞれで、ラウンダー(電脳世界上の自我を持ったキャラクター)や人間との関わりを通じてコミュ障を改善、好きなヒロインと結ばれるまでの過程を描いた作品。自然かつ無駄に長くない、一言一言をとても大事にした日常会話が印象的。特に派手さのない日常会話の中で、キャラクター達の感情の移り変わりを見事に描いています。このような丁寧な日常会話の積み重ねにより、どの登場人物も、キャラクターではなく人間としか思えず、とても愛着が湧いてしまいます。以下、前半はネタバレなしの項目ごとの感想(2,000字未満)、後半はネタバレありの詳細な感想等です。ちなみにこの作品は2003年発売の『こころナビ』の続編となっていますが、本作を楽しむと言う意味では前作のプレイは不要です。一部の世界観や登場人物が重なっているので、前作を既プレイであれば、少し楽しめる部分が増える程度です。
【グラフィック:85点】
ぱっと見は独特でキャッチーな絵とは言えないのですが
2人で制作されているメリットなのか
実際にプレイするとテキストと上手くリンクしているのが
とても好印象。
立ち絵・イベントCGともに、様々なアングルを描き分けられていますし
イベントCGでは、主人公の一人称視点と三人称視点の使い分けや
丁寧な表情差分の切り替えもあり
最終的な満足度はかなり高いと思います。
【システム:70点】
必要最低限は揃っているのですが、テキストを読み返したい場面が多いので
バックログからのクイックジャンプ機能が欲しかったです。
後述しますが、このゲームはテキストがよく出来ているので
『このシーンの、このキャラの、このセリフがたまらなく好き!』と言うパターンが多く
シーン毎にセーブデータを作ろうとして苦労しました。
また、同様の理由で、データロード後にバックログを見られない点も
少しだけ気になりました。
【音楽:75点】
派手さはないですが、世界観に合った良い音楽が揃っています。
前作既プレイの人には懐かしい曲も。
【テキスト:100点】
(私は基本的に上限を95点に設定しており、100点は付けない方針なのですが、敢えて100点を付けます)
このゲームの最大の特徴がテキストです。
『会話の流れが現実に則していてすごく自然』
『日常会話の中でキャラクターの個性が自然と感じられる』
これはテンプレ的な属性ではなく、オリジナルの人間としての個性です。
一言感想にも書きましたが、キャラクターではなくて一人の人間と感じられるんですよね。
『基本的に会話と主人公の主観のみで語られ、ヒロイン視点の心理描写はない』
これにより、ヒロインの心理を読み取ることはできず
ヒロイン自身から語られるか、想像するしか無いという面白さがあります。
主人公がコミュ障を克服していくと言うコンセプトともマッチしています。
これらのおかげで日常会話を見ているだけでもたまらなく楽しいです。
特に主人公・星歌・雪音の兄妹の会話はいつまで見ていても飽きないですね。
また、会話の随所にキャラクターを印象付ける要素が上手く盛り込まれています。
例えば、主人公には「会話の途中で考えこんで黙ってしまう」と言う癖があり
本作でもこの表現は多数出てきます。
この癖が現れたシーンでは、キャラクターごとに反応が違っているのが面白いです。
家族の面倒を見たがる雪音にとっては、癖を直して欲しくて注意しており
星歌にとっては、軽口を叩ける兄妹の関係を表現しています。
その他のヒロインは他人ですし、親密になる前は怪訝な反応をしますが
親密になるに連れて、主人公の気分を害したのではないかと
不安になった表情を見せたりします。
このような表現が、極めて自然な形で会話の中に溶け込んでいるんですよね。
テキストの良さについては、ここで言葉で語っても伝わりませんし
実際に体験版等をプレイして感じてもらう他ないと思います。
心地よい日常パートにこだわりがある方は、是非プレイしていただきたいです。
【キャラクター:90点】
一部の例外キャラクターを除き、皆内面はとても普通の人間です。
だからこそ、本当の意味で等身大の人間関係が描かれており
感情移入してしまうというものです。
これほどまでに等身大のキャラクターで楽しませてくれるゲームを
私は他に知りません。
【シナリオ:90点】
本作は、シナリオと言う項目を数値化することが非常に難しいんですよね。
単純にシナリオ展開のみを評価するのであれば
超展開にご都合主義だらけなので、あまり評価は良くないと思います。
しかしながら、このゲームは良質なキャラクター描写を土台に
これらのキャラが、ある状況に直面した時に
『何を感じて』『どのように行動したのか?』が重要なのであって
シナリオ展開自体は論点ではないんですよね。
これらの、キャラクターの考え方や行動を上手く引き出していると言う意味では
高評価になると思います。
私は後者の方法で評価しています。
本作で特徴的な設定である、人間とほぼ変わりない自我を持つセルフのラウンダー達も
上手くシナリオに組み込まれていました。
ちなみに、本作では共通パートが個別の一部のような印象で
主人公とヒロインが結ばれるまでの過程を重視して描かれているので
ルート分岐後の個別ルートは割とさくっと終わります。
その短い中にも、主人公とヒロインの感情の動きがしっかり描かれているので
「無駄に長くなくて逆に良いな」と言うのが私の率直な感想でした。
ちなみに、1ルートだけ明確に面白くないルートがあるのでご注意ください。
【声:90点】
CVはとても豪華な顔ぶれで
彼女達の過去の出演作の中でもトップクラスに魅力的に演じられています。
しかしながら、本作では、豪華声優陣の演技に負けないキャラクターが描かれているので
声優さんの印象がキャラクターよりも前面に出るようなことはありません。
逆に言うと、台本で描かれたキャラクターが魅力的だからこそ
より良い声優さんの演技を引き出しているのかもしれませんね。
【総評】
等身大のキャラクター達の、等身大の恋愛を描いた唯一無二のゲームだと感じました。
過去に等身大の恋愛を謳ったゲームはいくつもありましたが
不自然に作りこまれた雰囲気があったり、キャラクターがあまりにも現実離れしていたり
どれも私には等身大の恋愛と感じられないものでした。
その中で、比較的短いテキストに凝縮された、ユーザーを退屈させない、丁寧なキャラクター描写によって
心から満足できる本作は、私のエロゲプレイ史上最高の作品の一つと言えるでしょう。
願わくば、またこのような作品に出会えると嬉しいのですが
制作ブランドのQ-Xさんはなかなか厳しい状態のようで
今後、このような大作を制作できる感じではないようなのが、何よりも残念です。
そしてもう一つ悲しいのが、このような素晴らしい作品が
あまりユーザーさんの目に止まっていないと言うことです。
販促や広報等、色々問題はあるのだと思いますが
この作品の良さは実際にテキストを読まなければ、絶対に感じ取ることができません。
テキストが広く読まれた上で、他の方々が興味を持たれないのであれば
それは仕方ないのかもしれませんが
その機会すらないまま消えゆくには、あまりにも勿体無い作品です。
もし、私の感想を読まれてほんの少しでも興味が湧いた方がいらっしゃったら
是非とも体験版を手にとって頂きたいです。
----------------以下、ネタバレ感想----------------
----------------以下、ネタバレ感想----------------
ネタバレなしでは書けなかった詳細な感想等です。
【キャラクターごとの評価】
『アルファ:85点』
本作シナリオの核となるラウンダー。
感情を理解できない初期の状態から徐々に感情を身につけていく過程は
まさにラウンダーが人間へと変化していく光景そのものでした。
特に、ほぼ人間になった瞬間のギャップは可愛すぎますね。
終盤のイベントCGの表情がまた、人間よりも人間らしいと言えるほど
感情に溢れていて魅力的でした。
『長沢 星歌:95点』
妹ヒロインです。
本作における最強のコミュ障で、日常会話では自分の声を出さずに
uプレートを使った合成音声で会話する徹底っぷり。
身内には砕けた口調で(合成音声で)会話し、シモネタも垂れ流しの小憎たらしい妹です。
その反動か、要所要所で咄嗟の反応で生声を聞けた時のギャップや
色々主人公をからかいつつも、嫌っているわけではないという、
何とも言えない態度がたまらなく可愛く見えました。
主人公と感性が近いことや
こころリスタを使ったシナリオ展開のおかげで
兄妹にも関わらず結ばれる流れに不思議と説得力がありましたね。
キャラクターの可愛さと、妹としての背徳感を感じつつ
自然とやるべきことはやる流れとなっており
気持ち良く妹ヒロインを堪能できる良いキャラクターでした。
結ばれてからも星歌らしい小憎たらしいところが損なわれないのも
なんとも可愛くて良かったですね。
『長沢 雪音:100点』
本作の屋台骨とも言える、もう一人の世話焼き妹です。
雪音は本作において「妹」「姉」「母」「異性」の役を兼ねており、
「家族」を表現する柱となっています。
そんな雪音だからこそ映える、家族と恋人と言う関係の取捨選択で悩む
絶妙な心理描写が良かったですね。
小学生の頃から主人公に対して異性としての好意を持っており
それを密かに心の中に隠し持っているところ。
家出の後、小学校時代の主人公とのデートについての会話で
主人公にキスされたことは決して言わないところ。
お互いに好意を持っている事が分かっても
それでも尚、男女の関係よりも家族を大事にしようとするところ。
「家族」であるが故に、お互いの好意を信用しきれず
完全な「異性」としてだけの関係を求めてしまうところ。
このような場面に代表される、雪音の悩む姿がとても魅力的でした。
この雪音と言う子は、本当の意味で主人公の幸せを願ってるんですよね。
だからこそ、主人公と自分の関係が迫害されることを心から恐れていて
本気で、主人公のそばで、妹として主人公の世話をできればそれで良いと信じている。
そこから脱却して、主人公との恋人関係を受け入れることは
雪音にとって並大抵のことではないのでしょう。
このあたりは雪音ルートのシナリオ構成からなんとなく想像できます。
家族としても、恋人としても、誰よりも主人公のことを深く愛している
そんな雪音の一途な姿に心を打たれました。
どんな形であれ、こんな子と一生連れ添って居られたら
きっと幸せになれるんだろうなと感じられました。
それだけに当初は、個別ルートの終わり方には納得のいかない部分もあったのですが
よくよく考えると、これはこれでありなのかなと今は思っています。
(このあたりはシナリオ欄にて後述します)
『神波 さち:60点』
一応、幼なじみと言う設定のさちですが
一般的に言うところの幼なじみキャラクターとは全く異なります。
そして、さちは本作におけて唯一の、例外的なキャラクターだと思うんですよね。
正義感が暴走してる幼なじみと言う設定なんですが
正義感の暴走っぷりがあまりにも非現実的で
どう考えても本作のコンセプトから逸脱しているようにしか思えません。
悪い言い方になってしまいますが
さちと言うキャラクターは、「メガミハート・ペンペ」と言う
シナリオを展開させるための駒から逆算されたキャラクターにしか見えないのです。
そこに、主人公・星歌・雪音たち兄妹との対比が欲しかったので
幼なじみ、かつ、兄妹の仲が良すぎる、「仁兄」と「さち」と言う兄妹を組み合わせた。
そんな風に感じてしまいました。
もちろん、キャラクター自体は可愛く描かれているのですが
あまり魅力的には感じられませんでした。
ラウンダーも含めて、全てのキャラクターの中で最も「人間」を感じられないキャラでしたね。
Twitterによると、さちルートのみ別のライターさんに外注したものを
本来のライターさんが手直しする形で作られているようです。
シナリオ上、多くの役割をになっているさちと言うキャラクターは
魅力的に描くのが最も難しいキャラだと私は思っています。
そのルートを本来のライターさんが描かなかったのであれば
このような結果になるのは必然なのかなと思います。
『真名井 真理歩:85点』
本作の意外な(?)良キャラであるマリポ先輩。
女性版主人公とも言うべき見事なコミュ障っぷりで
主人公との、コミュ障同士のお互いに空回りしている会話が
なんとも微笑ましかったですね。
マリポ先輩は2次コンにありがちなコンプレックスの塊でもあり
成長した主人公がグイグイ押して来るシーンで
好意を素直に受け入れられず戸惑うマリポ先輩を見ていると
ニヤニヤが止まりませんでした。
作られた感じのしない、リアルなコミュ障ヒロインが可愛く見えるなんて
本作をプレイするまでは想像すらしませんでしたよ。
『メルセデス・ハポン・ウレニャ:70点』
半分家出のような状態で日本の凛子の家にホームステイすることになった
褐色巨乳のスペイン人キャラ。
CVの有栖川みや美さんが似非外人キャラを
とろけるような可愛い声で上手く演じられていて
とても可愛いキャラでした。
エロ方面が充実しているのも良かったですね。
素直に可愛いと思える良いキャラだと思います。
『主人公:85点』
本作は、重度のコミュ障である主人公の成長物語と言う側面もあります。
本作のライターさんのコミュ障の描き方がまた上手いんですよね。
初めは簡単には他人を受け入れようとしないところや
聞いてないのに勝手に自分語りを始めたり
不必要なまでに相手に対して筋を通そうとしたり。
そんな主人公が、セルフのラウンダーや知り合いとの会話を通して
少しずつ前向きになっていく流れは見ていて気持ち良いです。
前作よりも卑屈な主人公なので、すっきり爽快とまではいきませんでしたが
だからこその良さもありました。
【シナリオ:85点】
『アルファルート:90点』
シナリオ展開自体は超展開とご都合主義の塊ですが
主人公の真っ直ぐな想いとアルファの感情の芽生えが絡みあった時の
絶妙な心理描写が良かったです。
アルファがほぼ人間に近い状態になった時のギャップも良かったですね。
共通ルートでの、よりしっかりした自我を持ったラウンダー達とのふれあいも含めて
前作で著しく消化不良だった主人公とラウンダーとの恋愛を
見事に描き切ったのルートでもありますし
"あの"キャラが登場することもあって、前作既プレイの方には感涙ものですね。
ちなみに、前作未プレイの方でも全く問題なく楽しめますのでご安心を。
個人的にお気に入りのシーンが1つありまして
主人公とアルファが2人で1つのこころリスタを使い
もう現実世界に戻ってこれないかもしれないとなったシーンの
一瞬、主人公が雪音達(家族)を気遣う描写が「これしかない」と言う
絶妙な塩梅で大好きです。
ただ向こう見ずにデジタルの世界に飛び込むのでもなく
かと言って家族に引きずられ過ぎず、あくまで真っ直ぐにアルファのことを想っている。
そんな主人公の想いが伝わってくるかのようでした。
『長沢 星歌ルート:95点』
シナリオ展開の上手さが光ったのが星歌の描き方ですね。
(キャラクターの感想の繰り返しとなる部分もありますが)
まず、通常の会話を合成音声でさせることにより
生声を聞けた時に感情の大きな揺らぎを感じられるとともに、そのギャップにより魅力を増幅させています。
また、普段からシモネタ全快で小憎たらしいセリフで主人公を煽りつつも
好意を出し過ぎない程度に、主人公を嫌っていないように見せる絶妙なバランスが良いですね。
更に、兄妹の恋愛に対して背徳感は感じさせつつも
「アルファの後押し」「こころリスタの副作用」
「こころリスタを使って事前に赤の他人だった場合のお互いを印象付ける」
「問題を世間体への抵抗から、雪音に対する申し訳なさへと自然にスライドさせる流れ」等々
主人公と星歌が結ばれるのが自然に感じられるような演出が、上手く散りばめられています。
個人的に、これだけキャラクターでなく人間と認識させられるほど
上手く「妹」を描かれると、結ばれることへの抵抗感が強くなりすぎて
普通に書いてしまっては「ああ、ここは良くあるエロゲー的展開なんだな」と思わされると思うんですよね。
この最大の課題を自然な形で解消されているところがお見事でした。
最後に、クライマックスの
主人公と星歌が付き合い始めたことを、雪音に告白するシーンは感動ものでした。
個人的に、三角関係の結末として「選ばれなかった側が大人しく引き下がる」と言う展開は
「その程度の好意しかなかったのか…」と感じさせられることが多く
醜かろうが泥臭かろうか、最後まで食らいついて欲しいと考えています。
ですが、このルートで引き下がる立場となった雪音は
それまでの展開において、家族として
心から主人公と星歌のことを大事に思っていることが表現されており
決して主人公に対する好意が少ないのではなく、それよりも更に家族のことを大事にしていて
それでも尚、主人公への好意を抑えきれずに涙が溢れてしまったとしか思えないんですよね。
このシーンは、星歌ルートのクライマックスであるにも関わらず
同時に雪音と言う人間の魅力を最大限に表現したシーンでもあると言えます。
といいますか、私はこのシーンの雪音に完全にやられました。
『長沢 雪音ルート:95点』
星歌ルートを、気持ち良く妹との恋愛へと導入させてくれるルートとするのであれば
雪音ルートは対照的に、とことん妹との恋愛の敷居を描いたルートです。
主人公は猪突猛進する勢いで雪音との恋愛を望む一方
雪音は心の中では恋愛を望みつつも、現実を踏まえ、大人な態度で拒絶し続ける展開。
そういう意味で、このルートの主人公は、主人公(悠斗)ではなく雪音なのかもしれません。
ルート分岐前の雪音が家出から連れ戻されたシーンから始まり
主人公が雪音の本当の気持ちを知り暴走するシーン。
この過程で気持ちが最高に盛り上がったかと思いきや
あくまで主人公を拒絶する姿勢を崩さない雪音。
お互いの本当の意味での幸せを考えているのか、
家族全体の幸せを考えているのか、
兄妹と言う関係上、主人公の好意を信頼しきれないことによる恐れなのか、
恐らく、これらの感情が入り混じった複雑な心境だったと思うのですが
本心を更に超える自制心が働くところが、また雪音らしくて良かったです。
その後、色々あって、雪音とラウンダーのミューティが融合するENDとなるわけですが
私が初めて雪音ルートをプレイした日、このENDが物凄く不満だったんですよね。
その理由は、私の中で
雪音と主人公が、男女の関係になるにしろ、兄妹の関係に留まるにしろ、慎ましやかな生活で構わないので
現実的な内容で、雪音と主人公が一緒に暮らしていく終わり方を望んで止まなかったんです。
にも関わらず、本作のENDでは雪音とミューティの融合というだけでなく
感情が高ぶると耳と尻尾が生えてくると言う、明確に非現実的な形となったからです。
この日以降、最後に残ったアルファルートをプレイしながら、
また、本作コンプリート後も1週間程、なぜこのような形になってしまったのか
ずーーーーーーーーーーーーーーーーっと考えて生活していたのですが
私の中で一つの結論に至りました。
雪音の意志に基いて、雪音ルートを一から見直した時
実は、雪音が完全に正気の状態で主人公との体の関係を許したシーンは
一度足りともないんですよね。
初体験は主人公からの一方的なものでしたし
それ以降は、既に雪音が「妹」を捨て始めた後のシーンになります。
つまり、こころリスタやミューティの力を借りなかった場合
雪音が主人公と結ばれる未来は存在し得なかったのではないかなと。
そう考えた場合、ミューティとの融合と言う非現実的な形であったとしても
雪音と主人公が結ばれる一つの可能性を示してくれたと言う点で
この終わり方にも意味はあった、そう考えるようになりました。
この考えは完全に私の妄想なので、ライターさんの意図したことは分かりませんが
私はそう納得することにしました。
この納得がなければ、このルートの点数は感情的に減点していたと思います。
こうして共通も含めルート全体を何度も見返してみると
あらゆる部分に「雪音らしさ」が溢れていて、微笑ましい気分になれますね。
仮に、どのヒロインのルートに入ったとしても、
もしくは、本作で描かれなかったルートに分岐したとしても
「雪音は雪音のままなんだろうなー」と考えてしまい、勝手にほっこりしてしまいます。
過去160本以上のエロゲをプレイしてきましたが
ここまで、心から人間として好ましく思えたキャラクターは他に居ないですね。
本作で雪音に出会えて本当に良かったと思います。
『神波 さちルート:65点』
シナリオ展開自体は普通ですが、キャラクターに魅力を感じられなかったので
あまり楽しめませんでした。
GCの出来はとても良かったですし、物理的にはとても可愛いんですけどね。
『真名井 真理歩ルート:85点』
共通ルートを含め、主人公同等重度のコミュ障であるマリポ先輩。
主人公が痴漢と間違われると言う衝撃的な出会いから始まり
着実に段階を踏んで主人公と結ばれる過程が絶妙に上手く描写されており
とても面白かったです。
1つ段階を踏む度に、主人公もしくはマリポ先輩が勇気を出して
一歩前に踏み出しているのを感じられるほど、丁寧に描かれていました。
『メルセデス・ハポン・ウレニャ ルート:65点』
一言で言うととても普通ですが
メルチェが可愛いのでそれで良かったと思います。
【キャラクターごとの声の感想】
『アルファ役:小鳥居夕花さん』
感情を理解できない冷静な声をベースに
初めてクレープを食べたシーンをはじめ、徐々に感情を身につけていく過程。
更には個別でほぼ人間と変わらないまでに感情を身につけて、感情を爆発させるシーン。
これらを見事に演じられていて感動しました。
以前から好きな声優さんだったのですが、もっと好きになりました。
『長沢 星歌役:遠野そよぎさん』
白々しい程棒読みなのに、感情の起伏はしっかりと表現してるという
なんとも不思議な合成音声と見事にマッチしていましたね。
私がプレイする作品に度々出演されており
(別ブランドになりますが)『ハピメア』で個人的に再ブレイクしたのですが
今作でまたハマりました。
『長沢 雪音役:上原あおいさん』
私がこの世界で最も好きな声優さんです。
今までは比較的萌え萌えしいキャラクターが多かったのですが
今作ではそれらとは全く違う、非常に難しい役でした。
雪音は本作の世界観を構築するための最重要キャラクターで
「妹」「姉」「母」「異性」の役を兼ねており、
今作における「家族」を表現する柱となっています。
シーンごとに切り替わる、また、会話の中で一瞬垣間見えるこれらの役を
見事に演じ分けられており、雪音と言う人間をとても好きになれました。
『神波 さち役:都代田衣那さん』
幼なじみキャラ…のはずなのですが、正義感が先に立ってしまい
なんだか不思議なキャラでしたが
主人公を異性として認識した時の感情の変化等を
上手く演じられていたと思います。
『真名井 真理歩役:卯衣さん』
女性版コミュ障キャラの真理歩ですが、コミュ障っぷりを良い感じに演じられてました。
ちょっとオドオドしてしまったり、急に声を荒げてしまったり。
テキストだけでは表現しきれない部分まで
上手く表現されていたと思います。
『メルセデス・ハポン・ウレニャ役:有栖川みや美さん』
声の作り方で一番難しかったであろう、いわゆる似非外人キャラのメルチェ。
個人的にサンブルボイスを聞く前は全く期待していなかったのですが
日本語が分からない故に疑問形で話しかけるイントネーションや
何よりも語尾の「やのん?」が反則級に可愛いかったです。
【Hシーンの感想】
本ライターさんはHシーンにおいても生々しいのが魅力です。
特に前作『こころナビ』の幼なじみである「小春」との初体験シーンでは
雰囲気もあったものじゃないHシーンで、
ヒロインもただ痛がるばかりにもかかわらず、お互いの心の結びつきを感じられる。
そんなHシーンが良かったです。
本作では、エロの強化の弊害か
そのようなシーンが若干少なめになっていたのが少し残念でした。
しかしながら、基本的にヒロインとの初体験シーンについては同様の雰囲気は健在で
心から没頭できるHシーンが多いのは良かったですね。
また、Hシーンにおいても絶妙な表情差分の描き分けと切り替えが見事なので
普段Hシーンをあまり見ない方も、しっかり見て頂きたいです。
私のお気に入りのシーンを2つ抜粋してみようと思います。
『星歌・初体験直前のオナニーを手伝うシーン』
このCGは、主人公でなければあり得ないアングルなのが、とても好きなんですよね。
更に合成音声と生声の使い分けによって星歌のリアクションが
より生々しく感じられるのが最高です。
その後の初体験シーンも、雰囲気ぶち壊しな辺りが星歌らしくていいですね。
『雪音・初体験シーン』
身も蓋もない言い方をしてしまうと
主人公が寝ぼけて夢だと思っている雪音を犯すシーンなのですが
このCGでは、雪音の右足首を掴んだ主人公の左手が、雪音を求める主人公の激情を表し
雪音の左手と指を絡め合ってしっかり握っている主人公の右手が、雪音への強い愛情を表しています。
この構図が、主人公と寝ぼけた(本心だけで行動している)雪音の関係を上手く表現していて
最高に良いです。
このCGを基本として、寝ぼけた状態から徐々に覚醒していく雪音の心情の変化を想像しながら
シーンを読み進めていくと、胸がキュッと締め付けられるような気分になってしまいます。
【蛇足】
『前作や本作を指して「妹ゲー」と呼ぶことの違和感』
相対的に「妹キャラ」の描写が良く出来ていることは事実なのですが
本作のキャラクターを指す表現として
「妹」等の単なる主人公との人間関係を指す言葉を用いることに対して
個人的にすごく違和感があります。
これらの表現は「妹」と言う人間関係のみに注目しているように思えて
「星歌」や「雪音」を軽視しているような被害妄想を感じるんですよね。
そんな悪意を持って使われているのでないことは分かりきっているのですが
本作に対して使う言葉としては、なんとなく嫌いです。
『本作における「凛子」への過剰な注目』
前作ヒロインの凛子が本作にサブキャラクターとして登場しているのですが
本作においても「凛子」に過剰に注目する雰囲気が感じられます。
私も前作既プレイ者の一人として
「凛子」と言うキャラクターに注目したくなる気持ちは分かるつもりですが
本作ヒロインを差し置いて「凛子」ばかりに目を向けるのは
何か違うんじゃないかなーと個人的には思ってしまいます。
もちろん、そのような見方も楽しみ方の一つだと思いますので
否定する訳ではないのですが、私個人としては違和感があるというだけの話です。
【プレイ後の感想】
本作をプレイ後、本作の日常パートや人物描写ががあまりにも好み過ぎて
その他のゲームに全く手が付けられない状態が続いています。
私は元々日常パートや普段の会話を重視する傾向があるのですが
それが更に加速してしまって手がつけられなくなっています。
嬉しい悲鳴というものでしょうか。
また満足できるQ-X作品と出会うことがあると良いのですが…。
【締め】
一通り書いた後、ネタバレ部分を強引に後半に切り出すと言う形になったため
非常に読みづらくなっているかもしれませんが、ご容赦ください。
もし、最後まで読んでくださった方がいらっしゃったら、お礼申し上げます。