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dontiさんの夏の終わりのニルヴァーナの長文感想

ユーザー
donti
ゲーム
夏の終わりのニルヴァーナ
ブランド
ぱじゃまソフト
得点
90
参照数
652

一言コメント

いわゆる泣きゲーです。生と死の狭間である彼岸の世界にいる、記憶を失った4人の少女達が、徐々に記憶を取り戻していくとともに、此岸(生前の世界)での事実と向き合います。絶望的につまらない日常シーンを耐えた先には、昨今ではなかなか巡り会えない涙腺を刺激する展開があります。以下、項目ごとの感想等。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


【グラフィック:65点】
端的に言って絵柄が古いのは否めないと思いますが
終盤のイベントCG等の描き方は上手いのでこの点数にしました。


【システム:65点】
解像度が低いのが気になりますが、その他は問題ありません。


【音楽:60点】
クラシックばかりで合ってるような合ってないような微妙な印象です。


【テキスト:70点】(日常パート50点・その他90点)
日常パートが絶望的に面白くない割に微妙に伏線が張られていて
気持ち良くスキップできないのがかなり辛いです。
各ヒロインの生い立ちの不幸さとの対比として
(慈悲で)記憶を奪われて平穏に暮らすヒロイン達ののんびりとした一時を
コミカルに描こうとしたのだと思うのですが、あまりにもつまらないので
ただの滑ってるギャグパートになってしまっているのがとても残念。

逆に、真面目なシーンはよく出来ており
不幸なヒロイン達がネガティブな思考に囚われている描写は秀逸です。
個人的には、特にミハヤルートの丘(崖)での、ミハヤの独白シーンが最高でしたね。


【シナリオ:90点】
事実だけを淡々と並べてしまうと
ただ、ご都合主義ありありで不幸な話を詰め込んだだけ…とも言えなくもないですが
不幸なシーンの見せ方と、積み重ね方がとても上手いですね。

特に、レイア・ノノ・ナユ・ミハヤルートで
大きな絶望の中に一筋の希望を見せておいてからの
クオンルートでの彼女らに対する壮絶な死体蹴りには心が踊りました。
(左衛門尉が奈津を見つけるシーンからの流れは最高でしたね)
そしてクオンやカルマも…。

カルマの最後の選択も良かったですね。
ユーザー受けを狙ってなのか、生ぬるい展開のゲームが多い昨今ですが
最後まで走りきってくれたことに対する達成感は
なかなか味わうことが出来ないものでした。

また、カルマの、天人にあるまじき未熟さや人間臭さは
賛否両論あると思われますが
ただ圧倒的な力を持ってヒロインの問題を解決していくのではなく
カルマ自身も例外では無かったと言う構成は
個人的にとても好みでしたし、よく出来ていたと思います。


【声:90点】
シナリオの項目にも書きましたが、各ヒロインの独白シーンが最高です。
それらを見事に演じられた実力のある声優さん達は素晴らしかったですね。
もし声がダメだったら、このシーンも台無しになっていたことでしょう。


【総評】
悪い点も山ほどある作品ではありますが
『この作品でなければ味わえないもの』もたくさんある作品です。
この『この作品でなければ味わえないもの』が私が最高に好きだったので
良い所に注目した形で作品の点数を付けています。
ここが合うかどうかで、この作品に対する印象が180度変わることでしょう。