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dmshさんのアマカノ2の長文感想

ユーザー
dmsh
ゲーム
アマカノ2
ブランド
あざらしそふと
得点
95
参照数
631

一言コメント

美麗なグラフィックと魅力的なキャラクターが織りなす過程を重視した激甘な純愛モノ。丁寧な心理描写と恋愛描写によってゆっくりと愛を育みながらステップアップする恋愛が楽しめる。キャラクターへの愛着が湧きやすいシナリオのせいか攻略順には注意が必要かもしれない。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想

●はじめに
純愛エロゲの名作と聞いてプレイ。
ざっくりした前評判以外は見てません。
シリーズはコンシューマ含めすべて未プレイ、本作からプレイしました。
令和のフルプラエロゲはノータッチでしたので、クオリティの高さに驚きました。


●評価点
・恋愛の過程を重視したシナリオ
恋愛重視純愛イチャラブ好きの私としては、過程重視の本作のキャラクターやシナリオがブッ刺さりました。
飽和砂糖水を止めどなく胃に流し込まれるような激甘展開の連続に顔はニヤケが止まらなくなりましたし、見ているこっちが恥ずかしくなるようなイチャイチャっぷりには何度も叫び画面を直視できなかったです。
特に告白シーンは必見です。
告白することも、告白されることも楽しめるのは恋愛に焦点を置いた本作の特徴だと思います。
告白してもすぐにHするのではなく、お互いにもっと気持ちを伝えたいという感情を全面に出しながら、手を繋いで、キスをして、ハグをしてと、ゆっくり歩みを進める様子が最高でした。

・黒姫結灯というキャラクターが大変に魅力的
本作の評価点のうち90点はこの子に関連してます。
第一印象や表面上の付き合いでは、清楚でお上品で少しお茶目で誰にでも敬語で話す優等生タイプでしたが……。
本当の姿は、人のためになることだけを考え、自分を殺し、本当の自分が何者なのかもわからず、実家から逃げ出してきた少女でした。
自分に干渉してくる主人公に対して、髪留めを外して感情をむき出しにしながら拒絶し「あんた」呼ばわりしてきたときは中々衝撃的でした。
私自身も彼女の作っていた壁に気づかなったので、「Luna nueva」のBGMと共に豹変する姿には物語に一気に引き込まれました。
あのギャップから最初はどうなるかとハラハラしましたが、ここから打ち解けて素の黒姫さんの姿に触れていくシナリオ展開は実に美味しかったです。
表情がコロコロ変わったり、どんどん素直になっていく姿がとても可愛く、本作のヒロインで最も魅力的でした。
黒姫さんに会いに行き親密になったと思うほどに、実はアマカノグラフが下がる様は、後のシナリオを見ると「なるほど」って感じです。
アマカノグラフやザッピングというシステムやシナリオ構成をフルに利用したキャラクターとなっておりとても魅力的なキャラクターでした。
黒姫結灯については各√の感想でも書きます。

・テキスト
日常シーンとHシーンの純愛描写がこれでもかと詰め込まれており、かなり楽しめました。
細かな心情の変化や何気ない会話や仕草から相手への愛情が伝わり、終始ニヤケっぱなしでだれることもなかったです。

・グラフィック
ピロ水さんの実力が遺憾なく発揮されており、キャラクターから背景に至るまで美麗で可愛いCGばかりです。
告白シーンやキスシーンやピロートークのCGもあり、純愛エロゲとして必要な要素は全て揃っています、もちろんHCGもすごく良かったです。
この価格帯ですとCG枚数がやや少ないという意見も聞きましたが、一枚一枚のクオリティはトップクラスだと思います。
CGも効果的に使用されているのでプレイ中は気になることもありませんでした。
SD絵も本作にラブコメっぽい雰囲気を与えてくれており、ちょっと違った視点での恋模様を楽しめました。

・挿入歌とBGM
耳に残る挿入歌とBGMばかりです。
テキストとグラフィックも合わさり、コミカルなシーンから繊細な心の揺れ動きまで様々なシチュエーションをより引き立ててくれます。
ゆったりとしたBGMは等身大の恋愛模様を描きながら、二人にとっては大切な時間という雰囲気を与えています。
特に好きな曲は以下の通りです。
挿入歌は「ずっとそばで…」「coincidence」
BGMは「Luna nueva」「大好きなキモチ」「そしていつか」

音楽関係ですと、個人的にはBGVがあった方が嬉しいですが、HシーンのBGMが素晴らしいので気になりませんでした。

・Hシーン
純愛モノのエロゲはHシーンが薄そうなイメージがあったんですけど、シーンが濃厚で意外でした。
内容も日常シーンの延長みたいなイチャイチャH。
Hをする理由も単純な快楽目的ではなく、お互いのことをより深く知りたい求め合いたいという気持ちが溢れる愛のあるセックス。
純愛好きなので、めちゃくちゃHに感じました。
特にお気に入りシーンは黒姫さんが実家に帰って親に主人公との関係を伝える前日に、主人公の精液が身体にあると温かくて気持ちいいからお腹の中に入れておきたいとか言い出した時です。
黒姫さんが実家に帰るときには、お腹には主人公のアレが……と考えると日常シーンもラブラブHの延長みたいで、ニヤケすぎて気が狂うかと思いました。
日常シーンを見ているからこそより楽しめるHシーンと、Hシーンでより2人が親密になれたからこそ描ける日常シーンには、日常描写もHシーンも楽しみたい私にはとても刺さりました。

・システム
アマカノグラフというヒロインの好感度を可視化するシステムが面白かったです。
特に黒姫√では黒姫さんに会って話をすればするほど好感度が下がるという、一般的な恋愛ゲームと真逆のことが起きることが、後の展開の伏線になっており、印象的でした。
出会ったときには99パーセントであと少しで、恋に落ちるのかと思ってからの好感度が落ちる展開はシナリオの大きな特徴だと思います。
付き合い始めたら100パーセント越えの数値にどんどん更新されていくのはちょっと笑いました。


●各√の感想
・黒姫√
1番目にプレイ。(後のことを考えると最後に回すべきでした)
このヒロインの恋愛模様がとても良いという評判を聞きましたし、メインヒロイン(だと思います)でシナリオでも序盤に目立っていてストーリーが気になったので最初にプレイしました。
「本当の自分を出すと嫌われる」、「人の役に立たないといけない」、「良い子じゃないといけない」という彼女の固定観念を主人公が優しく丁寧に包容力を持って解きほぐしていくシナリオが最高でした。
自己評価が低くすぐにネガティブな気持ちになってしまう黒姫さんが、どんどん素直な甘え上手になっていろいろな表情を見せてくれるところは可愛らしかったです。
主人公との交際を通じてクラスメイトとも打ち解け自分らしさを出していけるようになった姿は見ていて心地よく、クラスメイトや両親に交際していることを認めてもらって、周りからカップルであることを祝福される過程も丁寧に描かれていて非常に良かったです。
二人だけの世界で完結しないで、付き合ったことによって黒姫さんの交友関係が広がったりどんどん幸せになっていく感じがたまりません。

告白する・されるときに自分の言葉は信頼されないかもと、心音で自分が恋心を抱いてることを伝えるシーンや、
お互いの唇を意識し始めた後に初めてキスをするシーンは、「良かったね」「幸せだね」という温かい気持ちになり目頭が熱くなりました。
また、キスシーンが非常に多くこういう作風なのかとそれほど気にせずプレイしましたが、他√をプレイすると回数も多く濃厚な描写になっていてやっぱりこの子は特別多いのかと思いました。
Hシーンでもやたらとキスの種類にこだわっててめちゃくちゃ可愛かったです。

好きなエピソードを一つ挙げると。
「良い子じゃないから今年はサンタさんからプレゼントがもらえない」と落ち込む黒姫さんに対して、そんなことないと伝えるために行動する主人公は特に男前でした。
主人公が寝ている黒姫さんの枕元にクリスマスプレゼントを置くシーンとその後のやり取りなんてロマンティックさと優しさと甘さが詰まって口から砂糖吐いて死ぬかと思いました。

彼女には基本的に「重さ」「寂しさ」「不安」の裏返しともいえる描写が含まれており、甘さとほんの少しの酸っぱさを常に内包していました。
(「私、重いよね」とか言ってましたけど客観的には非常に重いと思います、もちろんこの重さも楽しめましたが)

主人公と黒姫さんが迷子の子供を保護する展開が2回あったのですが、迷子の姿に自身を重ね合わせて心理的に成長していく姿は見事な描写でしたね。
自分のことを好きになることで初めて他人を好きになれることに気づき、過去の自分と向かい合うかのように迷子の女の子に優しく声をかける姿には、感極まって泣いてしまいました。
EDでは髪留めを取って登校する黒姫さんの姿を見て、いろいろ想像してしまいまた泣いてしまいました。

Hシーンも簡単には入らずに過程を重視し、心の繋がりを最優先するものでした。
自分の身体を差し出す代わりにもっと愛して貰いたいという考え方の黒姫さんを、主人公が一度は突き放し、自分が触りたいから自分がもっと愛したいからする、代わりになんて言葉を言わないでほしいと真剣に伝えるシーンは、心に響きました。
お互いのことを知り、悩みを解決する度、より関係が親密になって、よりお互いの身体を求めたくなる、その気持ちに至る過程が丁寧に濃密に激甘に描かれており大満足です。

恋愛の過程重視の純愛エロゲに必要な要素は全て入っていました。

・玲√
2番目にプレイ。
従妹から恋人になる、大切な存在になるというシナリオは良かったです。
合理的な考えの子がどんどん不合理な感情に流されていく様子は可愛かったです。
なんだか悩みも終始幸せそうな子でした。

マフラーを貰って大事に使いながら匂いをかいでたり、匂いフェチっぽい描写が多いのが印象的でしたね。
EDで生まれ変わってもまた従兄弟に生まれたら、すぐに出会えるとかロマンチックなこと言ってるのも主人公と交際したからこそ出る言葉でしょう。

二人の関係に水を差す訳ではないですが、従妹と交際して両家から簡単に祝福されるとかあるんでしょうか?
法律的には結婚可能なのは知ってますけど、もう少し二人の葛藤とか不安とかを見せても良かったんじゃないですかね。
終始甘い生活を見せる本作のコンセプト通りではありますが、従妹との恋愛という感じは薄かったかもしれません。
それと、たまに出てくる黒姫さんの影がチラついて集中できなかったせいかシナリオに見落としがあったのか、彼女がここまで合理性にこだわる理由はイマイチわかりませんでした。

・ちとせ√
3番目にプレイ。
怖がりな側面があったり、ラブレターの誤配で主人公への恋心に気づく展開は可愛かったです。
手紙を利用した独特の雰囲気で展開されるシナリオはプレイヤーを飽きさせないようにするという工夫を感じました。
二人で見た映画の内容を踏まえて、これからを考えながら手紙を渡すってEDも良かったです。

キャラ的には自分の趣味ではないですけど、案外面白かったです。

ただ、ちとせ√で姉との関係の変化に悩む主人公が黒姫さんに相談するシーンは見ていて辛い気持ちになりました。
黒姫さんが、自分だったら怖くて変われないとか言い出した時は、胸が張り裂けそうになりました。
申し訳ないのですが、あまりシナリオの内容が頭に入ってきませんでした。

●気になった点
・黒姫√以外の黒姫さんが救われない
ほぼ非の打ちどころのない作品なんですけど、私がゲームに感情移入しすぎるせいか攻略順のせいか、黒姫√以外で敬語の黒姫さんを見る度に胸が締め付けられました。
あの笑顔でよそよそしく敬語で話す黒姫さんの姿が痛々しくて、見ているだけで非常に心苦しいです。

主人公が黒姫さんと付き合わない場合、こういう展開になることは容易に想像がつきましたので、他√をプレイすることを躊躇いました。
他√プレイ時も黒姫さんの悩みが自然解決しているようだと主人公の存在意義にケチが付きますし、黒姫√の否定になると思うのでこのような形になるのは仕方ないと思います。
せめて、完全にフェードアウトしてくれれば気にならなかったかもしれませんが、他√でもちょくちょく登場するので罪悪感に苛まれながらプレイしました。
本作は恋愛重視でキャラクターへの愛着が湧きやすいストーリーですし、もう少しマイルドな調整にならなかったのでしょうか?
黒姫さんは主人公が後押ししてあげなければ、素を出すことができず悩みを解決できていない様を見せつけられているようで、正直他√は話に集中できなかったです。

私の本作への減点理由は全てここに集約されてます。

メンタル回復のために全√終わった後、黒姫√をもう一度プレイして口直ししました。

●総評
キャラクター・グラフィック・シナリオ・テキスト・BGM・演出などあらゆる面に隙が無い、極めて完成度の高い作品でした。
シリアスな展開が殆どなくストーリーの起伏に乏しいこと(黒姫√以外)や、過程重視の濃い恋愛描写と激甘なテキストは人によっては退屈に映るかもしれません。
しかし、欠点と言えるような部分は黒姫√以外の黒姫さんが不憫であること以外、存在しませんでした。
純愛エロゲの名作という評判に恥じない、純愛エロゲの最高峰です。
私としてもキャラゲーと言われるエロゲへの認識が変わった神ゲーでした。

この後、早速アマカノ2+もプレイします。