異端児復活。エロゲの常識が通用しない頑固なこだわりは健在、存在感を示す。
シナリオ5点(×2):おバカなようで妙に生々しいやりとりは中々クセになる。開き直ったような潔さは好き。
音楽7点(×2):小気味良いダンスナンバーが揃う。相変わらず変な選曲ながら、いつのまにか場面に染まってしまう妙味。
画力7点:新旧混合、LIBIDO塗りは健在。ただ新規絵は構図こそ冴えているものの、表情が単調でいやらしさが減退。
キャラ6点:どちらかというと男キャラの方が味があって面白い。今回加わった視点による描写は、やや一本調子かも。
エロ8点:突飛的展開とアホっぽい会話が特色、やはりスカトロ多め。端正な絵が独特のエロさを醸し出す。
操作性7点:常識の通用しない偏屈なシステム。不便極まりなく評価は難しいが、美学を反映した透徹ぶりは支持したい。
量感5点:約30人中の大半のキャラ視点でプレイ可な上、分岐も多くてコンプは骨が折れる。ただ絶対量はやはり物足りない。
世界観8点:末端まで浸透しているゲームデザインの完成度は高く評価。真似できないセンス。
総計65点
(雑感):問題作を次々と送り出した異端児メーカーLIBIDOが復活。『LIBIDO』改め『LIBI』という、人を喰ったような看板換えからして「らしさ」が出ています。ただ『LIBIDO』末期の低迷がまだ響いているのか、今回の第1作は残念ながら完全オリジナルではなく、旧作『monologue』に新たに手を加えたもの。実質的には『monologue』のファンディスク的な内容に近く、懸念通り『monologue』の素材の流用が目につきます。
しかし注意深く接すると、手抜きどころか、こだわりを貫いた中々の力作であることが察せられます。『monologue』が裏ビデオ風のテーマだったのに対し、今回はエロサイト+オンラインゲーム風という非常に独創的で意欲的な挑戦。約30人の登場キャラのほぼ全員の視点でプレイできるという型破りな仕組みが、まず圧巻。エピソードを多角的・立体的に俯瞰する切り口は『monologue』と同じですが今回はさらに視点を増やすことで性の群像劇としての面白さを倍加させており、とりわけ女生徒4人の性への思惑の交錯が見事な藤島沙織編は、最も成功している例でしょう。一方で力の入れどころが奇怪なのも相変わらず。妙に興奮を誘うエントリーシステム(結構待たされる…)、約30人の全登場キャラに複数パターンのSDグラフィックを用意(これは相当手間がかかっていると思われます…)などなど、思わずニヤリとしてしまいます。そしてやはり、システムは依然として独創的にして孤高。スキップなしは既にLIBIDOの「常識」ですが、今回は台詞の1つ1つをわざわざ直接テキストをクリックしなければならないという凄まじい面倒臭さ。しかもレスポンスが非常に悪いです。しかしこれらの仕様による不便な操作環境は決して「不備」なのではなく、ゲームデザインの完成度を追求する上での「表現」なのでしょう。LIBIDO以来のキャッチフレーズである「おかずウェア」という美学に沿った一貫したゲームデザインの完成度、その頑固ぶりは本作でも十全に発揮されており、流行・常識に全く捉われない異質な彼等のこだわりは痛快でさえあります。エロゲ本流に対する「アンチテーゼ」という見方はさすがに飛躍しすぎしょうが、本作の独特の存在感とその意義は少しは評価されてもよいでしょう。
1つの作品としては非常に個性的であるために残念ながら万人受けするものでは到底ありません。一般的なエロゲの常識とあまりにも乖離しているが故に新参ユーザーはもちろん大方のユーザーにとって間違いなく地雷級だと思われます。しかし全てを受け入れて正面から付き合うことが出来れば、これほど刺激的なエロゲはそうないでしょう。吟味に耐えうるクォリティとセンスは充分。個人的にはエロゲ史上屈指の重要作と思っている『monologue』の強化版として、手のとどくところに置いておきたい作品ですね。ふとした時に思い出して1エピソードだけプレイするような付き合い方で長く楽しめたら…と思います。