かつてないまでにキスへの執着を発露。なりふり構わぬ過激な猛進ぶりは、むしろ壮快。
シナリオ6点(×2):ストーリーは単純。ベクトルは明確、或る意味ではピュア。トゥルーEDは平井ワールドの真骨頂。
音楽4点(×2):桃野コメット氏の不在は大きい。何のエモーションもない貧しいサウンドにがっかり。
画力5点:デザインはともかく、塗りはかなり非力で見劣りが著しい。エロも構図が雑で残念。
キャラ7点:WINTERSでしか見られない独特のキャラ立て。変態主人公に対する各ヒロインの多様な反応が楽しい。
エロ8点:強力な口淫系、型破りなシチュの数々。WINTERSとして新味は薄いが、充分に「らしさ」を楽しめる。
操作性5点:機能は必要最小限。それぞれの使い勝手はよくない。やたら難易度の高いフラグ構成も疑問。
量感6点:量的に満足できるのはエロのみ。作品としての作り込みは厳しい水準、清々しいまでにチープ。
世界観7点:お馴染みの平井ワールド。土俗的な要素がテキストの狂気に絡めば更に良かった。
総計58点
(雑感):本作を以って早くも5作目となるWINTERSのKISSシリーズ。このような異様なシリーズが5本も続いたこと自体が驚きですが、もっとも、「キス原理主義」的な絶対的コンセプトを同一とするのみで、各作品を繋ぐ関連性は希薄。言うなれば、ただ同じことを繰り返し続けてきただけと見ることも出来るでしょう。しかし今回、設定段階で驚いたのは「キスが禁じられた島」。「×200」の「キスを知らない村」とニュアンス的に重なりますが、今回はキスすれば逮捕されるというのですから、コンセプトを揺るがしかねない一大事。まるでシリーズ完結作にするのでは思える程の並々ならぬ意欲が感じられます。
これまでの4作と明らかに違い、ストーリーに明確な推進力が伴っている点が特徴。「苦難→闘争→勝利」という、何かの革命のようなこの図式。キスをめぐる対照的な2つの島と本土の三角関係という世界観設定も併せて考えると、何やら勘違いで深読みさえ出来そうな気もしてくるのですから、侮れません。また、今回は主人公が過激なまでに行動的なのも異色。過去4作の巻き込まれ型とは異なり、凄まじい猪突猛進ぶりで驚かせてくれます。ただ、結局やっていることは「いつも通り」。時と場所を選ばない原始的なまでの即興エロ。理解の余地のない、登場人物たちの思考回路。奇怪な擬音や喘ぎ声、驚愕符・疑問符の大量連打。そんなハイテンションなテキストに惑わされることなく、マイペースを貫き通すクールな声優陣。やはり、どこを切っても同じ「平井ワールド」が展開されるのみです。お腹いっぱいの安心感と、一抹の物足りなさ。そろそろ違ったアプローチも見てみたいとは思うものの、あまりにも貴重な個性なので、ずっとこのままでいいと思ってしまうのが本音かもしれません。個人的にお気に入りなのは嵐のシーン。洋上で嵐に遭い、死の恐怖に直面した主人公がキスへの思いを絶叫しまくる馬鹿々々しいシーンなのですが、これぞ本作の真髄。あまりにもくだらなすぎて、ピュアで、感動してしまいました。
はっきりしたコンセプトと明瞭なライン。かつてないまでに過激にキスへの執着を露にした本作は、シリーズ中かなりの異色作であると同時に「代表格」的な内容も備えていると思われます。作りの粗さが実に残念ですが、狂気と紙一重のピュアなベクトル、真剣な迫力には、二、三歩ひいて感心してしまいました。一方、発売前に告知されていた「×200」との関連性については、やや拍子抜け。しかしトゥルーエンドは魅せてくれました。とんでもないものが降臨します。この破格の結末を見る限り、シリーズ完結作とするならば、これ以上ないものと思ったのですが、早々と次回作「×600」の製作がコールされてしまいました。しかもサブタイの「管理人さんのポニーテール」には大いに脱力。WINTERSの考えていることは本当にわかりません。