取っ付きやすく易しい伝奇モノ。まだまだ踏み込んだダークな部分や涼の葛藤を見たかった気持ちも、あまりに千年来の物語が儚い終わり方をしてしまってもどかしい気持ちもあるものの、キャラクターの魅力や雰囲気に押されて好きにならざるを得なかった作品。点数はシナリオ点として気持ち低めに。
グロシーンが前ほぼ全編白昼夢であることや千年来の呪いからヒロインたちを救うための前座があまりにも突拍子も無いことに最初こそ首を傾げたものの、待っていたのは切なくも正しい終わり。
十重と涼が中心に据えられておりその二人のみが確かに結ばれることは事実だが、ほか3人のルートが悪目立ちしなかったのはあくまでも血を分けた兄弟の微笑ましい(血生臭い場面もあった!)取り合いのようなもので、そもそも煤に惹かれて涼を好きになっているのだからという前提を考慮するとこのような一本道ゲーでも報われなさは少ないように感じたせいか。
煤原涼という圧倒的な希望と光が、1000年前には救えなかった彼女を、人の一生をも通り越してただ真っ直ぐに拳だけで救う。彼の王子様然とした姿が気に食わなかった気持ちはいつの間にか消え、ギャルゲーの中でもお気に入りの主人公になりました。爽やかな善性の放つそのオーラはまさにどんな呪いでも打ち砕くような力があり、ヒロインの各ルートで定石と化した展開にいちいち感動できたのはプレイヤーとしてもそんな彼に心を持っていかれたからに違いありません。
100点ではなくても90点にはなり得る、そんな力のある作品でした。