途中でギブアップしつつ、素晴らしき日々が好きだったので、すかぢ氏を信じて最後までプレイしたが…。 一言で表すと「寒い下ネタが悪目立ちして、期待していた哲学の部分が中途半端な未完の作品」
「素晴らしき日々と比べて電波ホラー要素がないから、そういうのが好きだった人には物足りないだろう」
そんな感想を沢山目にした。
自分はすばひび前半の電波要素も楽しんでいたが、後半の皆守パートだって十分好きだった。
すばひびは人生観に影響を与えたくらいに魂の作品だったし、心に刺さったのはどちらかというと皆守パートの台詞だった。
だから本作も楽しめるだろうと期待していたので残念でならない。
まず一番の欠点は日常パートのつまらなさ。
ヒロインが下ネタを言って、主人公が突っ込みを入れるワンパターン。
その下ネタだって濡れるだのパンツが見えるだの見えないだの、レベルの低いものばかり。
寒い下ネタギャグパートが何日も何日も続く。
そんな中で2章の、美術部員で壁画を完成させる場面はまだ見応えがあった。
ようやく盛り上がってきたかと期待して3章の個別ルートに突入すると
また下ネタ下ネタ下ネタ下ネタ下ネタ。
以下個別ルートの感想
【Olympia】
稟は直哉への恋心も匂わせているが、例の下ネタのせいで恋というより発情ばかりが目立っていた印象。
稟は共通パートの時点で謙遜が嫌味ったらしくて元々好きになれなかった。
そんなんだから直哉の右腕を壊した原因が稟にあると明らかになった瞬間、好きになれる要素がなくなった。
直哉が稟に尽くそうとするのも共感できなくてイライラした。
稟は直哉への好感度MAXの状態で始まるけど、直哉が稟を好きになる要素ってあった?
おっぱいだけだろ。
直哉も稟もお互いに発情しているだけで恋愛感情がまったく読み取れずついていけなかった。
稟は他のルートでも「なおくんを幸せにしてあげてね。なおくんのこと好きな女の子いっぱいいるから頑張って」
なんて謎のマウント芸まで仕掛けてくる最低女。
右腕を壊されただけでも胸糞なんだから、
せめて他の女と結ばれた時くらいお前を忘れさせてくれよ。
【PicaPica】
正直あまり記憶に残らなかった。
本作のヒロインの中では珍しく直哉への好感度が徐々に積み重なっている感覚があった。
恋愛感情の描写が唯一まともだった気がする。
鳥谷と親密になると稟がマウント芸してきてうざかった。
【ZYPRESSEN】
川内野優美視点の回想がピーク。本作全体を通して回想シーンは一番良かった。
セーブデータとって何回も読み返せるようにしているくらい気に入っている。
学校での里奈に苦手意識を持ちながら、夜の公園で里奈に会うたびに惹かれていく心情、
突然現れた直哉によって、優美の好きだった里奈が奪われていく描写は見応えがあった。
本編は前世がどうの伯奇がどうのファンタジー要素が強くて頭に入って来ない。
優美のことは好きだから頑張って読んだが、
結局前世も伯奇も本作のエンディングには影響ないから適当に読み飛ばしていてもよかった。
里奈と親密になると稟がマウント芸してきてうざかった。
里奈は優美の気持ちを振り切って直哉といることを選んだ女なんだよ。
お前の発情と里奈の恋愛が並ぶと思うな。
…とは言うものの里奈の恋愛が丁寧に描かれていたとは思えない。
優美→里奈への気持ちが一番丁寧に描かれていた気がする。
それは恋愛描写だったかというと違う気がするけど、実際優美から里奈への気持ちは恋愛だけじゃないはずなので
あの描かれ方で正解なんだと思う。
【A Nice Derangement of Epitaphs】
下ネタしか言えず意思疎通ができない雫に限界を迎え、一旦ギブアップする。
1、2年放置しているうちにサクラノ刻が発売された。
後半は面白いはずだとすかぢ氏を信じて再開。
久しぶりだったので共通パートからスキップせずにやり直してみる。
下ネタ共通パートを抜けてよくやくたどり着いた雫ルート2週目。
再び下ネタしか言えず意思疎通ができない雫にイライラするが
なんとかクリアする。
櫻七相図のくだりをおさらいできたので、再プレイの価値はあったと思う。
櫻七相図を完成させるのはこの作品では重要なシーンのはずなのにそれぞれの絵がないから印象が薄い。
雫と親密なると稟がマウント芸してきてうざかった。
稟が雫に感情を与えたから雫も稟と同じように直哉への恋愛感情を持ったんだね、と言いたいのかもしれないが
お前の手柄ではない。
しかしあの下ネタしかない会話の中で、どこで雫と直哉の間に恋愛感情が芽生えるのかは謎。
【What is mind? No matter. What is matter? Never mind.】
草薙健一郎の回想。
下ネタがなくなりようやくまともになってきた。
水菜も本作のヒロインにしては珍しく不快感がない。
【The Happy Prince and Other Tales】
圭の死がサビになる章だけど…圭って今までもホモネタばかりで
直哉にとってそこまで思い入れのあるキャラだろうか。
圭のために再び筆を取り、圭の死で無気力になる直哉。
え?直哉そんなに圭のこと好きだったの?
圭は直哉を慕って、直哉が再び絵を描くことをひたすら望んでいたような気がするけど
直哉は圭をホモネタで遊んでただけだったような。
圭のために再び筆を取る感情もいまいちついていけなかったが
圭の死がメインイベントになるほど彼の存在感なかった。
正史だと藍とは結ばれないので藍ルートはおまけなんだろうけどアレ完全にお情けセックスだよね。
なんで圭が死んだ直後に、今まで恋仲でもなかった二人がセックスする流れになるんだよと疑問だが
お情けセックスならお情けセックスでもっと情緒あるセックスが見たかった。
エピローグの稟と直哉の引用引用引用引用引用だらけの知識比べ大会は地獄だった。
どっちが強い引用の引き出しを持ってるかな?知識バトル開幕!!
すば日々では引用を使って思考させる構成好きだったんだけどな。
この違和感については後述
【櫻の森の下を歩む】
ここにきて新キャラかよ!?しかもまた地獄の日常パートやるの!?と絶望的な気持ちになった。
直哉が童貞だの下ネタは適当に飛ばした。
「櫻達の足跡」事件をめぐって、直哉が2章の明石の心境を理解するシーンは良かった。
その後の打ち上げで酔っぱらった桜子に迫られてオナニーのくだりは最低。
藍との「幸福なんて苦痛は~」のやり取りはよかった。
ただそこに至るまでの過程が説得力に欠けるというか。
【総評】
寒い下ネタがこの作品の半分以上の欠点になっている。
前半の下ネタギャグパートに比べたら後半はかなりマシだが、
欠点が気にならなくなるほど後半が良かったわけではない。
その点で後半のシナリオだけで手放しに名作だったとは思えなかった。
作品に入り込めなかった原因として
・下ネタが寒い
・登場人物に魅力がない(特に稟)
・哲学が悪い意味で浮いている
・テーマがとっ散らかっている
が大きかった。
「哲学が悪い意味で浮いている」については
いつも低レベルな下ネタしか言わないキャラが突然哲学書や古典の引用を始めるもんだからついていけない。
しかも哲学好きなんて設定がないキャラが突然哲学を語り出すから違和感しかない。
キャラに哲学を語らせる手法はすば日々でもあったが、
すば日々は特定のキャラしか哲学を語らないし、
それも不可解な彩名と読書家の由岐がメインだったから納得ができた。
それ以外のキャラも自分なりの哲学を語ることはあっても、
稟と直哉みたいに引用バトルはしないから置いてけぼりにならなかった。
しまいには6章で登場したぽっと出の居酒屋でバイトしてる子(名前忘れた)ですら突然引用で哲学を語る。
すば日々の難解な会話は味として好きだったけど、サクラノ詩では合わなかったな。
「テーマがとっ散らかっている」については
「天才と凡人」「才能と技術(努力)」「美の神」「幸福とは」
といった作者の思想を感じさせるテーマがポツポツとあったが
独立していて、結局作品を通して何が言いたかったのかが汲み取れなかった。
理解を深めれば独立していないのかもしれないが、プレイしながらそのレベルに至れるほど親切な構成ではない
かつ、背景が薄い。
ただ自分も創作活動をしてきた人間なので、作中には刺さるセリフ・共感できるセリフがあり
その点においてはプレイした価値はあったかと思えた。
☆追記☆
プレイ直後は期待を裏切られた感情が強くて
この感想を書いたときも批判的な言葉が多かった。
しかし一週間ほど経ち、落ち着いたところで、改めて本作を振り返ってみると
思い出すのは、5章で語られた稟と直哉の「美の神」についてだったり
「幸福なんて苦痛は~」のやり取りである。
寒いギャグパートのことを忘れて、作品をプレイしながら考えさせられたことだけ追っていくと
じんわりと「いい作品だったかもしれない」なんて気持ちになってきた。
もっと哲学を全面に押し出してほしかったな。
素晴らしき日々がまぐれだったとは決して思わないが、世界観とストーリと哲学がマッチして奇跡的にあの形として
私の心に刺さる作品になったのだと思う。
「テーマがとっ散らかっていて何が一番伝えたいかわからなかった」と書いたが
考察や引用元の書籍を読めばリンクして、より理解を深めることもできるだろう。
そのうえで2週目をプレイするとまた違った感じ方もあるのだろう。
しかし、2週目どころか続編にあたるサクラノ刻も今のところプレイする気持ちになれない。
サクラノ詩に関しては
「寒い下ネタが悪目立ちして、肝心の思想が中途半端な未完の作品」
という感想に落ち着いてしまう。
人の考察を読んでいると、「なんだこれ…」と思いながら読み進めていたストーリーの意図を知ることができて、多少好意的な気持ちになる。
しかし、すば日々の時は考察を読まなくても
プレイしながら自分なりに理解して、クリア後は人生観に影響を受けるほどの感動があった。
理解が足りない箇所は関連書籍を読み、時には考察の力も借りて、何度も繰り返しプレイした。
そうやってすば日々の世界に浸っているのが楽しかった。
サクラノ詩にも同じことを期待していただけに残念だった。
残念だった気持ちも落ち着いた今となっては「やはりすば日々は特別な作品だったんだ」と一種の安心感すらある。