(GiveUp) 「馬鹿馬鹿しいノリ」を勘違いしてる人が作った寒い内容。あと独占好きの人は要注意。
まず色々置いておいて、第一に言いたいのが「ふざけたノリなら何をしても許される訳じゃない」ということ。
ふざけた出来事をふざけたノリで展開するのは良いが、理不尽な出来事をふざけたノリで流すことはしてはいけないということです。
一例を言いますと、このゲームには充爆者というカップルを妬みそれを邪魔する目的の集団が登場し、そのリーダー格が、見知らぬ男と正体を隠したヒロインの一人です。
その充爆者はまずクリスマスパーティの中止を要求し、それが通らなければ嫌がらせをすると宣言します。そして主人公が充爆者に対抗する集まりを作ったことにより嫌がらせが始まるのですが、その内容は「食堂の醤油をめんつゆにすり替える」「ゴミの分別をしない」「カップルの男の元恋人のフリをして破局に追い込む」「学校公認カップルに贈られる指輪を盗む」「爆破予告」などです。
成程一見馬鹿馬鹿しいノリの悪戯の様ですが、見方を変えれば酷い事をしています。
特に指輪の盗難なんか普通に犯罪ですし、恋人を破局に追い込むことも普通は洒落ですまされないことだと思うのですが、作中では馬鹿馬鹿しいノリに乗せて軽いことの様に語られ、主人公側のキャラ達はそれを元にギャグを言い笑いあったりする扱いです。
ゴミの未分別も、主人公達の集まりが引き受けて分別をしたりと多大な迷惑を与えているはずなのですが、作中では軽い出来事扱いなので、充爆者のリーダー格であるヒロインは悪びれる様子も無く正体を隠したまま主人公達と和気藹々としています。
つまり出来事だけを見ると、このヒロインは盗難やカップルを騙して破局させることに罪悪感は無いし友達に迷惑かけることにも抵抗がない、主人公達は盗難やカップルが騙されて破局することを軽いことと感じている、と受け取ることができ、株が落ち全く魅力を感じることができなくなりました。
これらは全て「何をしても馬鹿馬鹿しいノリにすれば許される」という価値観を製作者が持っていることが原因です。
これを「馬鹿馬鹿しいノリでしてるんだから何をしてもいい」と取るか「馬鹿馬鹿しいノリをしたいなら重い出来事は避けろ」と思うかは人それぞれなのでしょうが、後者の考え方をする人にこのゲームは受け付けないと思います。
例えるなら「暴力ヒロイン」を受け入れられるかどうかに似ていますね。
「ギャグでやってるんだから理不尽な暴力をしてもいいじゃん」と考えるか「ギャグとはいえ理不尽な暴力をする性格には変わりない」と考えるかという感じです。
まあ暴力ヒロインの様に怒った時の行動という一面の話ではなく、根本的な性格の話なのでもっと性質が悪いものだと思いますが。
常にギャグ調の雰囲気のゲームですから、暴力ヒロインで例えると常に暴力を振るう性格のキャラになってしまってる訳です。
今までやってきたバカゲーと言われるジャンルでは、こういった部分に気を使って作られていた物がほとんどだったのですが、このゲームにはそういう部分はほとんど感じられませんでした。
特にこの充爆者リーダー格のヒロインは酷いもので、充爆者達はクリスマスパーティを中止させる為に、主人公達が何時間もかけて調理した七面鳥を盗めるだけ盗み、残りの物はメンバーで齧って使い物にならなくするという行動に出ます。(ご丁寧に歯型が大量に付いた七面鳥のカットインが挟まれます)
当然の様にリーダー格のヒロインも参加しており、罪悪感に苛まれる…なんてことは全く無くギャグ調であー食いすぎたみたいな事を言っています。
一応ヒロインの株を落とさない様にフォローはあるのですが、「盗んだ物は全部食べるわ。食べ物に罪は無いもの」と言って、なぜか食べ物を粗末にしないという部分のみをフォローしています。しかもまるでパーティーの為に七面鳥を作った主人公達に罪があるという言い分です。
このゲームの製作者は、窃盗はOKで食べ物を粗末にするのはNGという価値観を持っている様です。
その他のフォローは、ゴミの未分別の他に粗大ゴミが捨てられていたというシーンでそのヒロインが「粗大ゴミ!?そんなの知らないわ!」と言い、粗大ゴミを捨てたことに関してはこのヒロインは関わっていないというフォローがありました。
製作者は窃盗、カップルを破局に追い込む、爆破予告などはOKで、粗大ゴミの不法投棄はNGという価値観を持っている様です。
僕から見たらとても特殊な価値観で、これに合うユーザーは少ないのではないかと感じました。
そしてクリスマスパーティ当日そのヒロインはパーティを中止にしようと奮闘するも主人公達に阻まれるのですが、その後自分が充爆者リーダーであると知られぬまま主人公に告白されます。
今まで何組ものカップルを別れさせてきて、思い出の品を盗んできたヒロインが自分が告白されることに一体どんな葛藤があるのかと思いきや、一瞬の迷いもなくあっさりOKして付き合いだします。
しかもその後も充爆者としての活動を続け、キスをしようとしているカップルに口出しし喧嘩させることに成功しますが、その夜自分はあっさり主人公とキスをします。
そしてすぐ後に主人公と一緒にお風呂に入り、勃起に気付き私のせいでこうなってるなら責任を取るねとお決まりの台詞を言いつつフェラチオを始めたところで我慢できずゲームを終了しました。
普段の生活においても、人には注意することを自分はやっているという人と出会うことがあると思いますが、そういう人に好印象を抱くことはまず無いでしょう。僕は自分の母親の事を思い出してしまいました。
今まで他人にしてきた事に対して何の葛藤もないのか?現実のおばさんの様な思考回路のヒロインをどうして好きになることができるでしょう。
高い覚悟と志を持って悪の道に入るというヒロインは今までもいくらか見てきて好感を持てる部類なのですが、このヒロインは「学校は学業に励むところ、カップルは目の毒」という主張だけで上記のクズ的行動を取り、尚且つ自分は特別だと言わんばかりに何の躊躇いもなく彼氏と不純異性交遊を始めます。さすがに馬鹿馬鹿しいノリなんだからいいだろとはとても思えませんでした。
まあ僕は途中で止めているので、もしかしたらこの後主人公に正体がバレて罵倒された後振られて友達もなくして自殺するみたいな展開があるのかもしれません。そうだったらとても良いゲームになると思うのですが…
個人的に一番駄目だと感じたのがこのヒロインですが、勿論問題はこれだけではなくこういう基本的な価値観のズレが至る所に散りばめられていました。
それと他の方のコメントにもありましたが、独占好きの人には辛いゲームかもしれませんね。
上に書いた充爆者リーダー格のヒロインはほとんど男の集団の中で活動してますし、もう一人のリーダー格の男と主人公と接する以上に楽しくやってますし(あだ名をつけてあげたり夜な夜な密会したり)、常に一緒に行動してます。
他ヒロインルートでは、主人公とヒロインが出場するカップルで参加し愛を確かめ合うようなイベントに、その充爆者リーダー格の男と一緒に参加して主人公達を差し置いて優勝しますし、その優勝商品であるペア旅行も「飛行機が怖い」という理由で行かないだけでした。飛行機が怖くなければ二人で行ってたのでしょう。
後は普通にギャグが寒いとか掛け合いが面白くないとか不満点は多くありますが、唯一褒めるところと言ったら、学生主人公の学園物萌ゲーのヒロインにアラサーの女を持ってきた所でしょうか。
ルート自体は面白くないし短いしテンプレだしキャラ的にも魅力はあまり感じられませんでしたが、挑戦心だけは評価したいところです。個人的に学園物で出てくる攻略不可の女教師とか好きな事が多いので。
まとめると、バカゲーは割りと好きな分野なので期待していましたが、残念な結果でした。