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dakkunnさんの月光のカルネヴァーレの長文感想

ユーザー
dakkunn
ゲーム
月光のカルネヴァーレ
ブランド
NitroPlus
得点
95
参照数
2138

一言コメント

その物語は月夜の舞台

長文感想

その物語は月夜の舞台。
一つ一つの選択は真っ白なジグソーパズルのピース。
エピローグまで完成させるとそこには一枚の絵、キャラクター達の描いた軌跡という大輪の花。
そこに描かれるは物悲しいお話
出てくるキャラクター達が毎回素晴らしい舞を披露し、エピソード毎にその踊りは違う

「様々な人物と組織が織り成す群像劇を描いた愛憎と哀愁のゴシックノワール作品」

・・・救いのない暴力や犯罪を描写し「最後に正義が勝つ」ことはなく、読後のすっきり感がない事をノワール

死と闇、耽美と残酷を彩るモノ、
独特の終末観、退廃を愛する心、そして「異形」を思い、「人形」を思う心、
現実生活への嫌悪感、進歩主義を批判し、負の表現を好み、死や破滅が好きで廃墟に好意を抱く。
これがゴシップと言うモノらしいです。

この作品も他のノワール作品同様、ハードボイルド風の作品なのですが
私はノワール物、ハードボイルド物を手に取った事がほとんどありませんでした。
ですからこの作品に会えたのは私にとって幸せな新たな出会いでした。
数年前のアニメ、カウボーイビバップもSFハードボイルドだっけ・・・
あれも良かったけど今回の作品はハマってしまいましたね

マフィア、裏社会、貧乏に人狼、人形のファンタジー要素も加わり
架空の都市ベルモントを舞台とした夢物語、物語の中の必須アイテムで指輪もある・・・
ひょっとしてシェイクスピアを連想させて作られたのかもしれませんね。

月下で踊る様々な人間ドラマは悲劇の舞踏会
登場人物の人生は舞台で踊る、終焉へと向かう華麗なダンス
こういう悲しい話もいいなぁ・・・
私は今までハリウッド物のハッピーエンド好きだったのですが
手の平から零れ落ちる幸せ、
もう戻らない時、
突きつけられ選べない選択、
押しつぶされそうな過去を背負いながらも選び残った人と
悲しい思い出で溢れる世界を生きていく・・・
そんなエンディングに感動しました。

選択によって廻る世界
登場人物は同じだけど少しづつ立場が変わり、巡り巡って違う終局へ
エンディングには毎回感動させられ、どのルートでキャラクター同士のどんな争い、思いが描かれたか判らなくなるくらい違う
ストーリー展開に意外性のある発展は無い。
物語をちゃんと読んでいけば納得いくようなストーリー筋
このキャラが好きだ!と思ってハッピーエンドを見ると次のエンディングでは無残に・・・
なんて感じでガラリと変わる。
心理描写が薄いのはこの作品が劇のように、キャラクターを「舞台の登場人物」と描き、
この作品を一つの夢物語のように創る演出だと思います。
他のゲームのような完全なる終止符になるエンディングは無いですね
これもノワール演出でしょう、いつまでもこの作品を引きずらされるよな心残りを感じさせてくれます。
主人公の視点、読者(私)を舞台に上げてくれないです。
あくまで観客の視点で舞台は流れていきます。

キャラクター達
声優さんは豪勢、声優さん達の魅力を最大限引き出そうとする演出、惹き付けられます。
気持ち良過ぎる。
セリフを飛ばせないエロゲーは私の中では初めて。
私には特定の好きな声優さんは居ません
声が好きと言うよりこの物語の中でのキャストとして素晴らしかったという感じです。
表の方とか裏の方とかどうでもいいじゃないですか
個人的にはダヴィデ、主人公、カリメロが大好き。

舞台を彩る音楽、シーンCG、背景CGはとても満足です
最初のオープニングのムービーに「自分がギャルゲーをやってる」事を吹っ飛ばされて
ついていけない感はありましたが
終わった後はオープニングムービー数回見ました。

戦闘シーンが長いと感じられる方が居られるようですが私はいいと思いますよ
主人公の心理描写が少ない部分を補ってるようなところもありますし
脇役同士の戦いもその脇役の立場を振り返り、想わせてくれるので
勝負がついて欲しくないと思ってしまう私にはその長さを長いと思いませんでした。