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cyokin10wさんのもののあはれは彩の頃。の長文感想

ユーザー
cyokin10w
ゲーム
もののあはれは彩の頃。
ブランド
QUINCE SOFT
得点
88
参照数
1102

一言コメント

あ、、、、、、終わっちゃった。1クリックごとに湧き上がってくる『早く次が読みたい、続きを知りたい』という衝動。1振りごとに1マスごとにその地の宿命や個々人の戒や思惑その面のルール等々が複雑に交錯して、次から次へと新しい展開が繰り広げられ新しい面白さを創造していく。止めどころを見つけるのも困難な息もつかせぬ双六バトルに一喜一憂するままに、ものすごい勢いでページを繰り続け、あっという間にエンディングまで辿り着いてしまいました。シンプルな面白さを提供してくれる作品としては出色の出来ではないでしょうか。長文感想は―タイトルについて―と―内容について―と―鬼無水みさきについて―とを分けて書いてみました。ご興味のある所だけでもご高覧いただければ幸いです。

**ネタバレ注意**
ゲームをクリアした人むけのレビューです。

長文感想


―――――――――タイトルについて―――――――――



もののあはれは彩の頃

要は『秋の京都には趣がある』という意味だろうし
実際舞台も背景もバッチリそれを意識してる訳だけど

現実問題としてその趣を味わってる余裕が無えっ!

想像以上のデスゲームが展開されてこちとら唖然ですよ

そしておそらく『彩の頃』っつーのは『サイ(の)コロ』のアナグラムで
『(きまぐれな出目の)サイコロには趣がある』となって

さらに転じて サイコロ→双六
そして この世界の双六=デスゲーム

という風に考えていくと

『《デスゲーム》には趣がある』

などというふざけた意味をタイトルに隠してたりするのかも


、、、、、、悪趣味ですねぇ(笑顔)









―――――――――内容について―――――――――



この作品、実は人物をほとんど描いてませんよね。

この子はこういうキャラクターだよ、という設定があって
実際その通りに行動するけれど

では『何故』その子がそういうキャラクターをしているのか
『何故』そういう考え方を行動の基盤に据えているのか、という部分はほとんど掘り下げていません。

つまり器は作ったけど中身は入れていないのですね。

あれほどまでに毅(つよ)く厳しく、そして優しいみさきの人格はどう培われたのか
あれほどまでに大誠が自殺を忌避し、糾弾するのは何故なのか

縁と琥珀(猫)の交流はもっと描いて良さそうなものだし
その縁のいじめ描写も1枚CGがある以外は本人の語りのみ
篠月学園での描写も暁の幻日でちらっと登場するだけ

本人があれほど切望していたカラスの記憶はどうなったのか
そもそもカラスとはどういう人物だったのか

そして双六世界で担当回すら貰えなかった野々なんとかさんの恋愛感情(ぇ)



……………………分からないことだらけです。



幻日(走馬灯)などという
その人物の過去やバックボーンを描写するにはうってつけの現象まであるというのに
ひたすら表面をなぞっていくだけで、人物の深い内面には入っていこうとしない。

意図的にそうしたのか
あるいはそういう描写が苦手で回避したのか
それとも単純に描く気が無かったのか

実際のところは分かりませんが
この辺りの描写不足が、作品の面白さに比して点数が伸び切らなかった要因となっているのは想像できます。


しかし自分は

そういった部分の描写を最小限に控えたからこそ
この作品はここまで面白くなったと主張したいのです。

「一振りごとに一マスごとに
 その地の宿命や個々人の戒や思惑その面のルール等々が複雑に交錯して
 次から次へと新しい展開が繰り広げられ新しい面白さを創造していく。
 止めどころを見つけるのも困難な息もつかせぬ双六バトルに一喜一憂するままに
 ものすごい勢いでページを繰り続けてしまいました。」

一言感想に書いた、この作品の面白さの肝。それはやはり

一マスごとに移り変わる怒濤の展開を勢い切らさず描写したこと、にあると思うのです。

次々と生まれては解明され、またさらに生まれてくる謎
最低限の情報のみで構成される思わせぶりな幻日
登場人物同士のやり取りは時にほのぼの、時に緊迫命がけ
そしてどんなに戦術戦略を練ろうとも、全ては賽の出目次第

枝葉末節を切り落とし、寄り道を極力無くして
さりとてキャラの魅力を表現するには充分な情報をプレイヤーに与えつつ
(本来なら脇役の男キャラまで魅力的に描けたのは、この辺りのバランス感覚の素晴らしさ故か)

とんでも双六のエンターテイメント性をこそ前面に押し出して創られたのがこの作品。


登場人物たちの縁を繋いだ《デスゲーム》には確かに もののあはれ があったのでした。









―――――――――鬼無水みさきについて―――――――――



その穏やかで優しい性格から
一見甘い理想を紡ぐロマンチスト(夢想主義者)のようにも見える彼女ですが

その実は

現実をきちんと見据えた上で理想(目標)を設定し
その理想に向けて努力研鑽を怠らず、理想を現実として掴み取る

現実○ 理想○ の強力なアイデアリスト(理想主義者)です。

誰とも争いたくない、みんなで仲良くが一番であると語り
全てが終わった後主人公の胸の中で、怖かったと、今もまだ怖いと泣き出してしまうような
ごく普通の感性を持った彼女が双六デスゲームと向き合った時

全員であがる、という自らが起ち上げた理想の実現のために
いかなる困難に直面しようとも 逸れず・倦まず・妥協せず

時に自らの命をも供物に捧げ
時に主人公とも袂を分かち

それでも尚思い描く理想へと邁進し立ち止まることが無い。
そんな苛烈・勁烈な姿を前面に押し出してきます。

真剣に理想を実現しようとすれば
それが現実に安易な迎合をはかるより遥かに覚悟と労力が必要なことは自明のことなのですが
彼女の生き様はそれをとても極端な形で表現していて、観ているこちらが苦しくなってくるほど。

そんな彼女を作中で修羅・狂人と表現しているのも無理からぬこと。
かの有名な衛○士○くんと精神的同病者ですから。

しかも彼女はここからがまた凄い。

それは彼女の戒。

なんとこの厳しいあり方を同じマスに居る他人にまで強要し
どうしても受け入れられない相手はマスどころか双六そのものから排除する


天下万民、わたし色に染まるべし
(染まれないなら粛清しちゃうぞ♪)


これはまごうこと無き独裁者の質で
健康体の彼女がこの戒を現実世界へ持ち帰っていたらと思うとゾッとします。

この戒を『鬼縁』とはよく言ったもの

美しすぎる理想と
決して(自分も他人も)あきらめない(あきらめてくれない)勁(つよ)い心が組み合わさると
これほどまでに危険な人物が出来上がる。


過ぎたるは及ばざるが如し


双六の盤面上で、最後まで強く優しく美しくありつづけた彼女は

その危うさを以ってプレイヤーに多くの教訓を残していく
複雑な魅力を持った、もう一人の主人公とも言える存在だったのでした。





























123456 蛇足 654321



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